3月に本を出して以降なので実に一ヶ月ぶりなり~
誤字脱字チェックするまでやる気がもたなかったでござるよ。てへぺろ(・ω<)
誤字脱字チェックするまでやる気がもたなかったでござるよ。てへぺろ(・ω<)
数十センチの距離を離して座る俺たち。特にすることもなかったので、黙ってただ座っているだけだ。
しかし一方で、何か行動を起こすかどうか迷っている自分がいる。ただ黙って座っているだけでは駄目だ、と。
手を伸ばせば触れられる距離。何か呟けばほぼ確実に聞こえる距離。
でも決して短くない。むしろ、一歩を踏み出すことも出来ない俺にはこの距離は遠いと感じている。
なら、彼女にはこの距離は遠いだろうか?
不意に俺は彼女がどう思っているか気になり、そのことを予想してみた。
彼女は典型的なツンデレだ。素直に言動で示すことが出来ず、いつも遠まわし、または真逆なことを言う。
典型的だからこそ何か行動をしてくれればわかりやすく部分があるので想像することは容易な場合がある。
しかし、何も言わないこの状況では彼女の考えは読むことが出来ない。しかも、座る姿勢や表情、些細な動作もほぼ一切しないので読むことの出来る要素は皆無に等しかった。
だから俺は自分の知っている彼女のことを思い出しながら、あくまで勘で彼女の心を想像してみた。
「…………」
だが手がかりなしでは彼女がどう思っているか、思いつくはずがない。それ以前に彼女のことを知っているのはあくまで彼女自身のことであり、それは今ここではあまり役に立たない。言うなれば、想像するだけ困難なだけであった。
「……はぁ~」
大体、彼女の心情を察することができるなら、今この状況では何もできていないはずがない。出来ないから今こんなに苦労をしている。
そのことをため息をつきながら思い出した俺は、またすぐに今度はさらに大きなため息をつく。
…………どうすればいいんだ。
遠い距離と思うこの距離。対して、彼女はどう思っているかわからないこの距離。
この微妙な距離を詰めるかとるか。
どれが正しいのか、俺にはまだまったくわからなかった。
今、私はとても緊張している。
その理由は、狂気のマッドサイエンティストを自称する白衣の男が隣に座っているのが原因だ。
男は先ほどから微妙な距離を保ったまま、何も言うこともなく静かに座ったまま。いつも騒がしい時とは真逆の姿だった。
だからだろう。いつもとは違う彼に、私は緊張をして動くことも言葉を言うこともできなくなっているのは。
「…………」
横目で伺おうと思うが、もし彼に気づかれたらと思うと出来ない。だからと言って、なにもしないままでいいかと聞かれたらノーと答えるしかない。
そこまで考えてはいるのだが……何かするかを考えたりすることが出来るだけで、実行する力は今の私にはなかった。
「……はぁ~」
不意に彼は大きなため息をついた。瞬間、私はビクッと驚いて彼の方を見てしまった。
その視線の先にあったのは、私の知らない彼の初めての顔。いつもなら絶対に見ることのできない彼の仮面の中の表情のようであった。
それを見てしまった私は、静かに視線を逸らした。見てはいけないものを見てしまったような気にさせられたからだ。
だが反面、見れて良かったと思う自分がいた。
いつも厨二病の仮面をつけて、馬鹿なことばかり言っている彼。でも本音はいつも隠してばかりで私には一切見せることはない。
もしかしたら、幼馴染のまゆりや付き合いの長い橋田には本音を吐き出しているのかもしれない。が、私のようにまだラボメンになって短いメンバーにはきっとそんなことを吐き出したりしないのだろう。
だからいま見た顔はつい出てしまった彼の顔なのだろう。心を許した人、信頼出来る人にしか見せない特別な顔だったのだろう。
…………なんだろう、この不快感は。
彼が見せた顔はまだ私が見ていい顔ではない。信頼に足りていない私には見るのがまだ早い顔だ。
それがわかっているのに、どうして私はこんなにも悔しいと思っているのだろう。
「…………」
手を伸ばせば触れられる距離。聞けば聞こえる距離。
でも私にはこの距離がとても遠い距離のように感じられてならない。
そして彼には、この距離は遠いのだろうか。それとも近いのだろうか。
それを知ることも、今の私にはたとえ行動に移せても出来ない。そんな気がしてならず、私はただ座り続けるだけしかなった。
<fin>
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