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2024/05/20 20:47 |
4月1日と4月2日
エイプリルフールネタです。
鈍感な上条さんを書いてみましたら、シリアスになりました。
あえてオール上条さん視点にしてみたらスラスラかけてワロタwwwそしてこういったシリアス書いてるの楽しすぎワロタwww
最後の場面は可哀想過ぎる、とか言われそうだから入れました。個人的にはどっちでもよかったんですけどねwww



 4月1日はエイプリルフール。別名では四月馬鹿と呼ばれる日である。
 この日は祝日でもなければ、特別に何かが起こる日でもない。ただちょっとしたお祭りのようなものが開催されるような日であった。
 しかし上条からすれば、今日ほど馬鹿を見る日は滅多にないだろうと思えてしまうほどの不幸の連続であった。
 まず朝から土御門に。
「急遽補習が入ったぜよ。カミやん、急いでこないと遅刻かもにゃー」
 とのまったく嬉しくないモーニングコールを頂き、朝ごはん抜きで部屋を飛び出した上条であったが、今日はエイプリルフール。教室には誰もおらず、担任の月詠小萌は学校にすら来ていなかった。
 上条は電話してきた男、土御門に携帯で連絡を取ろうとしたが留守番であった。
「ふ、不幸だ…」
 騙されたと思いながら、上条は涙をかみ締めながら学校を後にした。
 すると今度はインデックスから電話がかかってきた。
『とぅま……いままで、あり…がとぅ』
「え…? インデックス…?」
『げんきに…いきて、ね』
「インデックス!? インデックス!!!」
 いきなりかかってきた遺言じみた内容の電話はそこで切れた。上条は弱々しいインデックスの声を聞いて、すぐさま彼女が今世話になっている小さな教会へと駆け込んだ。
 すると、そこには元気なインデックスの姿が祭壇の前に立っていた。インデックスは上条が来たことに気づくと、振り返って上条を見つめた。
「あれ…? インデックス?」
「ねえとうま。今日って何の日か知ってる?」
「今日って、4月1日だろ? 何かあったっけ?」
「とうま、今日はエイプリルフールなんだよ」
 そこまで言うとインデックスは笑いを堪えきれなくなり、ぷははと大きな笑い声を教会中に響かせた。
 一方の上条はインデックスから今日のことを聞かされた瞬間、朝の土御門の電話と先ほどのインデックスの電話が嘘であったことに気づかされた。さらに自分はそれに振り回されていたことにも。
「ははは、不幸だ…」
 たちの悪い冗談に付き合わされてしまった上条は、ショックのあまり膝をついてしばらくの間、はははと笑い続けたのだった。
 そして今日はどんな重要なことでも疑いを持たなければと、心に強く誓い教会を出た。
 とりあえず魔術師二人に騙された上条は、まだ朝食をとっていなかった。なのでこの教会にある最寄のコンビニでパンでも購入しようと思い、いつも財布を入れている後ろポケットに手を入れた。
 だが不幸なことに両方のポケットには財布が入っていない。もちろん、それ以外のポケットにも入っていなければ、補習のために持ってきたカバンの中にも財布は入っていなかった。
「ふ、不幸だ…」
 上条当麻、まだ目が覚めて二時間も経っていなかったと言うのに、すでに不幸指数はいつもの1.5倍を示していた。
 財布がないので朝食は家に帰るまでお預けだった。なので素直に帰宅しようと上条は片手でカバンを背負った。
 そして帰る途中に通る自販機の前。ここを通るのが教会から家に帰るルートの最短距離であるが、不幸指数が絶好調の上条にはここで何かしらの不幸に見舞われるのは、目に見えていた。
「ちょろっと。アンタ、こんな春休みでも補習なわけ?」
「不幸だ……」
「人の声を聞いた瞬間、不幸とか言うんじゃないわよ!」
 背後から聞こえた声が誰なのかは上条にはかけられた時からわかっていた。なので怒りの声とともに飛んでくる能力が一体どんなものなのかも、振り返らずとも上条にはわかっていた。
 上条はため息をつきながら、右手で背後から飛んできた雷撃の槍を打ち消す。いつものように右手のおかげで無傷ではあるが、気持ちのほうは無事ではなかった。
「はいはい、わるうございました」
「アンタ、相変わらずムカつくことしか言わないのね」
「毎回のように電撃浴びせてくるお嬢様が言えることかよ。ったく、そろそろ卒業して欲しいものですよ」
「うるさいわね! これも全部アンタが悪いんだから!」
 毎回毎回のことではあるが、命の危険がある出会いに変化がないのはそろそろやめて欲しいのが上条の本音であったが、このお嬢様はそれを聞いてくれないだろう。上条は出会いが一切成長をしていない美琴に呆れたため息をつく。
「それで、今日はなんの用だ? 用がないのなら、このまま帰りますが」
「えっ?! あ、用ね用。そう…用があったのよ用が…用ね」
「御坂、用があるのはわかったから早く言ってくれ。上条さん、そろそろお腹が限界です」
「わ、わかったわよ。じゃあ、言うわね、言うわよ、言ってやるんだから」
「気合を入れてるのはわかったが早くしてくれ」
 美琴はすーはーと深呼吸をして、よし言うわよと自分の両頬を叩く。そして上条と正面で向かい合い拳を握った。
「わ、わたし…は……ああああああん、た……が……す………き」
「………はい?」
 最初は向き合っていたが、途中から視線は下がって今では自分のちょうど真下の地面と向き合っている。それと平行して声も最後の方はほとんど聞こえなかったが、確かに美琴がすきだと言ったのは上条にもしっかりと聞き取れた。
(え? ええ?? これは告白ですよね? 御坂は上条さんに告白したんですよね?)
 告白された上条は、まだ告白をされたことを受け入れきれずにいた。まさか美琴が自分のことを好きだなんてと想像もしなかったことを美琴に言われたからだった。
 上条はこれにどのように返答をすればいいか、パニックになりながら真剣に考えた。
(ああ~朝からなんて忙しいのでせうか………ん? 朝?)
 とそこで上条は朝起きたたちの悪い二回の嘘を思い出した。
 そしてふと思った。これもエイプリルフールのネタではないか、と。
(そうだ! 御坂のやつ、王道な告白ネタで騙す気だな…………よし、ここは趣向を変えて)
「俺は好きでもないぞ。というか、好きじゃない」
「え……?」
「そんなわけで御坂。上条さんはこれから朝ごはんを食べなければならないので、さようなら~」
 そういって上条は走ってその場をあと、というよりも何か言われる前に逃げた。
 しかし上条はこの時、気づいていなかった。美琴がショックを受けて呆然としている様子を。
 そしてこの告白は真剣な告白であったことを、この時はまだ気づいていなかった。


 その日の夕方。
 結局上条は美琴と別れた後も様々な人間に騙された。友人の姫神に打ち止めと一方通行、土御門舞夏にも騙されたと思ったら御坂妹にも騙され、デルタフォースの青ピアスにも騙され、今日は騙さデーと自分が騙されすぎてしまったことにいつも通り不幸だと思うしなかった。
 さらに上条は毎回恒例となったスーパーの特売に敗北し、今の上条は鬱もいいところだ。すっかりと気持ちが沈んでしまった上条は、特売の敗北に不幸だと肩を落としたが、特売を逃したから買い物はしないわけにもいかず、今日を含めた二日分の食料を調達し帰路を歩いていたところであった。
「不幸だ。エイプリルフールなんて消えてしまえばいいのに」
 嘘をついていい日は上条からすれば自分の不幸がさらに高まる日だと、今日になって思い知った。もしかしたら記憶がなくなる以前も、こんなに不幸だったのかもと思うと来年のこの日がまた恐ろしくなる上条であった。
 だが今日はまだ終わっていない。まだあと何時間も残っている今日という日が終わるまで、上条は決して気を抜けなかった。
「戦争の時のように緊迫した状況じゃないのに、なんでこんなにも警戒を、あれ?」
 すると目の前に見知った人影が目に映った。もちろん、それが誰なのかは服装を見て一発で理解した。
「御坂か? あいつ、元気ないみたいだけどどうしたんだ?」
 このときの上条はまだ美琴が落ち込んでいる原因を知らなかった。なのでいつも通りに、おーい御坂と美琴を呼んで駆け寄った。
 しかし美琴は沈んだ表情で上条を見ると、無視してその場から去ろうとする。
「おい待てよ御坂。無視するなんて、お前らしくない」
「………」
「元気ないみたいだけどどうしたんだ? 何かあったのか?」
「………白々しい」
 美琴は先ほどとは態度が違うのは上条にもわかった。しかし上条は今のまま態度を変えずに、どういう意味だと頭をかしげた。
「白々しい? おいおい御坂さん、今更あなたは何をいうのでせうか?」
「………」
「俺たちは友達ではありませんか? 赤の他人ではない我々がそんな」
「……る……ぃ」
「え? なんだって?」
「うるさいって言ってるのよ! この馬鹿ッ!!」
 そういって美琴は上条の頬を思いっきり叩いて、走り去ってしまった。
 叩かれた上条は痛てえと呟きながら、叩かれた部分を擦って美琴を追おうか迷った。だが一瞬だけ、迷ったことが原因で上条が一歩踏み出した時、ちょうど床に転がっていた空き缶が上条の目の前に転がってきて、一歩踏み出した足がちょうどその上に乗っかってしまった。あとはもういつも通りに、不幸になる上条は、転がった空き缶に足を掬われ仰向けに転んでしまった。
「いてて、不幸だ。ってそれよりも御坂は?」
 今度は背中を擦りながら、上条は立ち上がって美琴が去ってしまった方向を見た。だがそこにはもう美琴の姿はどこにもなく、イベントか何かがあったのかたくさんの人の群れが集まっていた。さすがの上条も見失ってしまった人間を探すことが出来ないので、仕方なく自分の携帯を取り出そうとポケットに手を入れた。
 がこれも朝の財布と同じ展開を辿ることとなった。
「御坂のやつ、本当にどうしたんだ?」
 頬を叩いてくるなんてことは一度もしてこなかった美琴。いつもならば雷撃の槍を飛ばすはずだったのに、そうしなかった。
 しかし上条のはまだ答えを導き出すピースが欠けていた。当然欠けている上条には何故美琴があんなにも沈んでいて自分を叩いてきたのか、わかるわけもなく。
「…八つ当たり?」
 まったく違う結論に至って、不幸だと肩を落とすのであった。


 さらに時間が過ぎ、エイプリルフールという悪夢の日があと3時間足らずで終わる頃、上条は携帯の着信履歴を見てため息を落とした。
 部屋に帰った上条はスーパーで購入した食材を冷蔵庫に入れた後、すぐ美琴に電話をかけた。しかしすぐに留守番サービスの音声が流れたので、電話を切った。仕方なくメールで『困っているのなら相談しろよ。待ってるから』と簡潔な文章を送って、それ以来美琴との連絡は取っていない。
「どうしたんだ、あいつ。いつもならこれだけ経てば返してくるはずなのに」
 何かあったのかと着ていない履歴にもう一度ため息をついて、上条は携帯を閉じた。
「ったく、不幸だ」
 何故自分まで気持ちが沈まなければならないのか、と上条は髪をぼりぼり掻いた。しかしこのまま連絡を待っていても仕方ないので、上条はシャワーでも浴びようと立ち上がって机に携帯を置いた。
 その時、不意にインターフォンが鳴った。
「ん? こんな遅くに誰だ?」
 風呂場から玄関へと移動先を変えてドアを開けた。そこにいたのは。
「白井? なんだ、どうし」
 たんだ、と訊こうとした時、目の前にいきなり金属矢が現れた。上条はそれを反射的に避けて、自然と部屋の廊下へと下がった。
「危ねえじゃねえかよ、白井。危うく顔に穴が開くところだったじゃないか」
「………」
「白井? お前もどうしたんだ? 御坂といいお前といい、常盤台で何かあったのか?」
「………」
 白井は無言のまま部屋に上がりこんだ。そして上条の前まで来ると、上条の頬をぱんと叩いた。
「いつまでボケている気ですの?」
「??? ボケるって、どういう意味だよ」
「まさか……本当にわかって?」
「あ、ああ。もしかして、御坂に何かあったのか?」
「………自覚なし、ですか。悪意がないとはいえ、たちの悪いことなのは変わりないのですけど」
 白井が何を言っているのか、上条には理解できていなかった。しかしたった一つだけわかったことがあった。
「白井。お前が俺のところに来るってことは御坂の件でか?」
「当然ですわ。じゃなきゃ、こんな夜遅くに寮を抜けて尋ねてきませんの」
「だよな。それで、今回は何があったんだ?」
 美琴に何かあったと聞くと上条は緩かった表情を引き締めなおした。だが白井は上条を見ると、呆れましたのと大きなため息をついてもう一度上条の頬を叩いた。
「出会ってすぐの金属矢と先ほどと今の二回のビンタ。ここまでされても貴方にはまだご理解できませんの?」
 白井の目は上条だけを見ている。瞳に映っていたのは、部屋の風景ではなく自分の顔だけ。
 そしてやっと上条は白井の訪問の理由を理解した。
「俺……なのか?」
「とりあえず、今日あったことを全て話してください。全てはそれからです」
 目を逸らさずに白井は淡々と言った。


 日付はすでに4月2日になっていた。
 さきほど12時を回ったのを携帯で確認して、上条は冷えきったベンチの上で一人、缶コーヒーを飲んでいた。
「…………不味い」
 飲み慣れているコーヒーはいつもよりも不味く感じた。こんな味だったかと疑問を抱きながら、上条は口に広がる苦い味に顔をしかめた。だがせっかく買ったものなので捨てるのも勿体ない。仕方なく飲みコーヒーを全て飲みきって、上条は空き缶をベンチの下に置いた。
「御坂のやつ、そろそろかな」
 上条はまた携帯を開いて時間を確認した。00:24と書かれているのを数字と着信がきていないかを確認して、上条は携帯を閉じて手に握った。
 ここで上条は彼女を、御坂美琴を待っている。白井がここまで連れて来てくれると言ってそろそろ30分が経つ。空間移動を駆使すれば、すでに着いていてもおかしくないが、それでも彼女はやって来なかった。
 なので暇つぶしに上条は自販機でコーヒーを買って飲んでいたのだが、それも飲み終わってしまった今、また新しいものを買う気にもなれず、静かにベンチに座ることにしている。
「あいつが…好き…か」
 そういえばここで告白されたんだよな、と上条は昨日の朝の出来事を思い返す。思い返して感じたのは美琴に告白された嬉しさよりも勘違いで傷つけてしまった後悔の方が強い。
 白井との話で上条は美琴の言ったことは嘘紛れもない真実であることをすでに知っている。だがそれは遅すぎた真実であり、気づけなかった上条に全ての責任があった。だからここで責任を…と考えもしたが上条は責任を取るつもりはない。というよりも責任を取ったところで、美琴を傷つけたことには変わりなく美琴もそれを望むわけがないのは上条にはわかっていた。
 今上条がここにいるのは、責任を取ることではなく嘘偽りなく自分の本心を美琴に伝えるためにここにいるのだ。例えその結果が……。
「……………」
「よう、遅かったな。御坂」
 上条の視界には美琴の姿はなかった。しかし上条は目の前を向いたまま、美琴に話しかけた。
「どうして私が来たってわかったの?」
「足音…か。このあたりの夜って街から離れてるからすげえ静かだろ? だから小さな音でもわかるんだ」
「呆れた。もしそれが私以外の誰かだったら、どうする気だったの?」
「さあ、わかんねえ。でも間違えてたらきっと恥ずかしい目にあってたのはわかる」
「まったく。ホント、アンタって後先も考えないのね。だから毎回怪我をするんじゃない」
「まったくその通りなので、何も言い返せませんな」
 上条が皮肉で言い返すが、美琴はそれから何も言い返してこなかった。
 そうしてしばらくの間、上条は前を向きながら美琴が次に何を言ってくるかを待った。すると、少しだけ美琴が上条に近づいてきたのか足音が少しずつ大きくなってこちらに近づいてきた。だがその足音は少し離れた位置で止まった。
「振り向かないの? 私が後ろにいるのはわかってるんでしょ?」
「振り向いて欲しいのか? だったら振り向くけど」
「…………やっぱいいわ。出来れば、今は顔を見たくない」
「そうか……そうだよな」
「……………」
 上条が振り向かなかったのは、顔をあわせたくないことをなんとなくだが予測していたからだ。それにいちいち見えない背後から話しかけてくる相手に、振り向こうとも思えなかった。さらにもう一つだけ、振り向かない理由があった。
「俺も、今はお前の顔を見ないほうがいいと思う。きっと…言えなくなるから」
「……………」
 上条の本心は美琴の顔を見ながら言うことが出来ない。もし見てしまったら、言うのを躊躇ってしまうかもしれないからと上条は思ったからだ。
 だから上条は美琴の姿と顔を、美琴は上条の姿だけを見て話をしないといけなかった。
「なあ御坂。俺のことが好きって言うのは、本当か?」
「………………うん」
「………そっか。本当だったんだな」
「………………うん」
「今更言うのもなんだけど……すげえ嬉しい」
「………………うん」
「でも……俺はそれに答えられない」
「………………うん」
 上条はそこで一旦、会話をやめて携帯を開いた、時刻は00:31と表示され、やはり着信もない。
 この行動はあくまで時間つぶしだ。なので特に大きな意味がなくしばらく、間を置くための些細な行動だ。後ろにいる美琴もそれがわかっているのか、何も言ってこなければ何も動きもしなかった。
 そして、携帯を閉じてズボンのポケットにしまったのと同時に。
「俺は……お前を友人としか見ていなかった」
 美琴を傷つけるのを承知で自分の本心を語った。
「だから俺はお前の気持ちに答えたくとも答えられない。御坂の好きは異性として好きなのはわかってる。けど俺の好きは友人として好き、としか言えないんだ」
「うん。なんとなくだけど、予想はしてた。アンタが私を異性として見ていないんじゃないかって」
「………」
「告白しても答えてくるかわからないことは、私にもわかってた。だけど……だけどさ」
「………」
「嘘でも『好きじゃない』って言うのは、あんまりじゃない」
 上条は拳を強く握って唇をかみ締めた。
 あの時の言葉は当然嘘だ。告白は嘘だと思いこの次に上条は好きだと答えそれをからかわれると思った。だからあえて好きではないと別の反応を返してしまった結果が、この結果だ。
 しかしこの結果は上条の勘違いが生んだものではない。これは上条が美琴を異性だと意識せず、友人だと思い込み前例の二人と同じ面持ちであったと思い込んでいたためである。つまり上条が美琴を友人としてでしか見ていなかった結果が生み出された必然であった。
「せめてごめんや別の人がいるって理由なら、少しは耐えられた。でも好きな人に嫌われていたという現実は、私には地獄でしかないの。アンタにはそれがわかってたの?」
「……………」
「でも私はアンタに謝ってもらいたくない。だって裏を返せば私が友人以上だとアンタに意識させなかったことも悪い。だから私はお互いに悪いと思ってる。だから…だから……」
「………御坂」
 上条は後ろを向こうと思った。しかし寸前でそれを思いとどまり、拳をさらに強く握り締めた。
 向いたところで、上条が美琴には出来ることはほとんどない。それに向かないままでいるのはお互いに同意したことだ。それを破るわけにもいかなかった。
「ごめん、そろそろ耐えられなくなりそう……だから。最後に……一つ…だけ」
 涙声が背中から聞こえてくる。きっと背後では美琴は涙を流し始めているのだろうと思うと胸が押しつぶされそうになった。
 泣いているであろう美琴が必死になっていたのは、美琴がここに来た時からわかっていた。何故なら彼女は一度振られてしまった身だ。だというのに振った上条のもとに来て話をしようとするのは、どれだけ辛いことであろうか上条には理解できなかった。
 でも、それでもわかっていたのは美琴は自分の想いを押さえ込んでここまでやってきたのだ。だから上条はそんな彼女の努力を踏みにじることはしてはならない。
「私を……一人の女として……見て、くれ…なぃ?」
「わかった。御坂美琴を一人の異性として、俺を好きな一人の女の子として見ていく」
「あり…が、と」
 そして限界が来た美琴は、涙を流しながらその場を走り去っていった。上条はその背中を追うことも見ることもなく、正面を向いたまましばらく、両手で顔を覆った。
「ごめん………ごめん」
 誰もいない公園で上条はそう呟いた。しかしそれを聞くものは誰一人としていなかった。


 しばらくして上条はベンチから立ってポケットから携帯を取り出した。
「0時52分、か」
 時間を確認し終えた上条は携帯を閉じてポケットに入れようとした時、携帯のバイブレーターが振動した。ちょうど手に持っていた上条は携帯を開いて、誰からの連絡かを確認した時、心臓が一瞬飛び跳ねた。
「み、さか…?」
 来たのは美琴からのメールであった。上条はドキドキしながら美琴から来たメールを開いた。そこに書かれていたのは、とても簡潔な文章。
『今日の10時に自販機の前に集合』
 書かれていたのは今日の待ち合わせの連絡であった。だがそれ以外は何も書かれておらず、何をするのかが一切わからなかった。
 しかし書かれたメールの内容を見て、小さく微笑むと。
『了解』
 と一言だけの文章を返して携帯をポケットにしまった。
「ったく。面倒なお姫様に目をつけられたものだ」
 そういう上条の顔は笑顔であった。その理由は自分にもよくわからなかったが、なぜだか気分がとてもよかった。
「でも、まんざら不幸って訳でもないかもしれませんな~」
 上条にとってまだ御坂美琴は友人の域を出ていない。異性だと思うようにはしているが、まだ一人の女の子としては見れないような気がしていた。
 でもそれでもいいと、上条は思った。
 無理をする必要はない。自然に美琴を異性だと思って、これからをすごせばおのずと自分の答えが見えてくるような気がした。それの結末に待つのは、一人の女の子としての意識。そこで上条は美琴を恋愛対象としてみるかどうかを見定めればいい。急ぐ必要も無理する必要もないのだから。
 そして上条は歩き続ける。すでに日付は4月2日になって一時間過ぎている。今日はまだ始まったばかりだ。

<終わり>
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2010/04/01 23:27 | 禁書

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