一本にまとめた作品を書こう…と思ったけど、終盤でもっと書きたいと思ったので分けました。
単純に『甘い』で済ませるよりも少し初々しさがあったほうが二人らしいと思うのは私だけでしょうか?
今回はwikiを少し参考にしました。
時間軸はif設定(秋ごろ)
単純に『甘い』で済ませるよりも少し初々しさがあったほうが二人らしいと思うのは私だけでしょうか?
今回はwikiを少し参考にしました。
時間軸はif設定(秋ごろ)
今日は土曜日。本来なら休みであったが補習常連者の上条当麻は今日も担任の子萌のコールに泣く泣く答え、学校に登校していた。レベル0の無能力者の上条にとってはこの補習はあまり意味をなさないと知りながらも…。
幻想殺し(イマジンブレイカー)は能力測定は不能であるため、レベルはいくつなのかは不明(アンノウン)だ。もしかしたら、レベル4~5に匹敵する能力かもしれないが上条にとって幻想殺しのレベルは重要なものではない。問題なのは幻想殺しがどんな能力も打ち消してしまう点にあるのだった。
だが、幻想殺しはいまだに解明不明。能力の無効化であろうこの力の前には学園都市の計測は今現在もほぼ不可能であろう。たとえ、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)を用いたとしても、この能力の前には無意味であろう。
「上条ちゃん。聞いてますかー?」
子萌の声に上条は片腕を上げて答えた。しかし、片腕を高らかに上げても「聞いていましたね、はい」などと納得する教師はいない。
「上条ちゃん。授業はちゃんとした姿勢で聞いてくださーい」
「先生、質問です」
上条はもう一度手を上げて、悩んでいたことを子萌にぶつけた。
「なんで俺はいまだにレベル0のままなんですか?」
「それは上条ちゃんの才能がないのか、勉強が足らないのかのどっちかだと思いまーす」
迷いのない即答。結局は自分はレベル1すらも遠い。または到達不可能ということか。
なら、今やっている補習もあくまで知識のみでこれを使うかどうかは微妙な線である。
(なら結局は無駄知識(トリビア)じゃねえか。はぁ~)
心のそこでとても深いため息をつき、少し考えて最終的に上条は今の状況を一言で結論付けた。
「………不幸だ」
それは上条自身へと向けた最高の皮肉であった。
今日の不幸は五つ。
1、朝起きたらケータイの電源を消したままにしていたため、寝坊したことに気づかずにケータイ越しから子萌に説教をしていただくことになり気持ちが嫌な方向に向いてしまったこと。
2、朝ごはんを食べようと冷蔵庫を覗くと中は綺麗に空になっており、仕方ないので近くのコンビニで簡単なものを買おうとしたら今日から改装工事でコンビニによることが出来ず、普段行かない少し遠くのコンビニでパンを購入したものの実はそれは賞味期限を二日間切っていたということ。
3、不良のグループ五人に絡まれ、朝から元気に逃げださなくてはいけなかったこと。当然、逃走中の不幸も数多くあったが省略。
4、学校に着く直前、近くで起きた事故の影響かで遠回りしていかなくなり遠回りしてみると、今度は道路の整備にあたり、さらに遠回りすると今度はヤンキーだと思えるグループが道を塞いでおり通れなくなっており、またさらに遠回りすると能力者たちが事件を起こしており自然とその事件に首を突っ込んでしまったこと。
ちなみに事件に関しては上条と風紀委員(ジャッジメント)の活躍により解決した。その時、上条は無意識にフラグを立てたのは言うまでもない。
5、授業の遅刻により、本来夕方前に終わる授業が夕日が沈む直前に終わったことだ。
「はぁ…朝からずっと不幸だ」
学校の下駄箱で今日一番のため息をつきながら靴を履き替えて昇降口に出た。一応、最終下校時刻はすぎていなかったがこれから夕飯の買い物に行かなければ行けない上条には無縁のことであった。
そして、上条が鬱である理由はもう一つあった。
「また迷惑かけちまった……もしかしてまだ待っていたり――」
「するわよ」
学校の門を出ようとした瞬間、上条の言葉を受け継ぐ声が耳に届いた。
やっぱり、と後ろ髪を掻いて言葉を受け継いだその人物の元へと歩いていく。
「やっぱり待ってたんだな」
「当然よ。こんなこと、もう何度も経験済みよ」
常盤台の制服を着た少女は何事もなかったかのように答える。少女の言葉には嘘はなく、怒りもなければ呆れるような態度もない。慣れているという言葉は本当だと見せ付けるように、少女は上条の前に立った。
「だけど、スーパーの特売日だったのは痛かったかもね。でもまぁしょうがないか」
「うぅ、面目ない」
返す言葉が見つかりませんと上条は少女に頭を下げた。少女は慣れっこだしとため息をついて、上条の右手を掴んだ。
「なら罰として、私のカバンを持つこと。それと――」
上条の右手を掴んだまま、少女は右腕に抱きついた。
「い、いいと言うまで……腕を組む、こと」
恥ずかしそうに視線を下に向けながら、少女は上条の右腕を抱きしめた。それに上条も伝染するように視線を少女とは逆方向にそらした。
「あ、ああ…わかった」
「いいって言うまで、離さないでよね」
「わ、わかってますよ。美琴さん」
緊張のあまり上条は敬語を使った。
少女、御坂美琴は「わかればいいのよ」と視線を逸らしたまま答えた。
世間の目から見ると上条と美琴は仲の良い恋人として見られている。腕を組んで歩く姿は、道行く人に自分たちの様を見せつけているようにも見えてしまい、二人に嫉妬してしまう通行人も少なからず存在している。
しかし、当の本人たちからしてみると今の自分たちの姿は恥ずかしいことをしているとの自覚が前面に出ており、穴があったら隠れたいほどに羞恥心を煽る行動であった。ならばやめればいいのにと心の底では自覚している…のだが離れたくないと思う感情のほうが強かった。
恥ずかしいけど、離れたくない。とても単純な感情であるが、初々しい二人からしてみるととても強烈なものであった。
「「……………」」
空の夕暮れに照らされた道中を歩きながら、二人は落ち着かず視線をあちらこちらに彷徨わせた。顔は赤いのは十二分に理解できており恥ずかしさで頭がおかしくなりそうであった。
不意に美琴の身体がより上条に密着した。ドキッと心臓が高鳴った上条は美琴のほうへと視線を向けた。
「あ、あの……美琴」
「な、なによ。……嫌だった?」
「嫌じゃないけど…その、見られて恥ずかしいというか…密着されて幸せと言うか」
「………なら構わないわよね」
お互いに赤くなりながら歩いていると、上条はふとあることを思い出した。
「そう言えば、今日は家にインデックスがいないんだった」
え?と美琴は驚いて見上げるように上条の顔を見た。
「どうする、今日も泊まっていくか?」
美琴は少しだけ考えるがすぐにこくりと小さな微笑を浮かべながら頷く。
返事がいつものパターンだと思いながらも、毎回のようにうれしそうに微笑む美琴に上条は見惚れた。本人は気づいているかどうか知らないが、上条からしてみると自然に生まれるものであるように思えて、逆に自然であることがとても美しいと思えた。
(こいつ…本当に俺よりも年下の中学生かよ)
時折見せる美琴の大人らしい姿はお嬢様なのか、年上なのか、それとも惚れた弱みなのか、上条にはわからなかった。だが結局は自分にしか見せていないであろう美琴の様々な姿に、上条は喜びを隠せずにはいられなかった。
(気づいてみるとわかったが……気づく前はさっぱりだったな。でも、それほどまでに俺はコイツのことを…)
上条はこほんと一呼吸おいた。少し気持ちが落ち着いたのを見計らって話を続けた。
「ならスーパーによって行かないとな。冷蔵庫の中は空だったし、腹も減った」
「それじゃあ、私が何か作ってあげる。何がいい?」
「そうだな………それじゃあ」
今日のリクエストはふと思いついた親子丼だった。
先日、ファミレスでお茶をした際、スペシャルメニューの中に親子丼があったことを思い出した。何度も夕食を作ってもらっている腕だし、美琴なら作れるのではないかと思いつきで頼んでみたらあっさり頷いて見せた。
「ただ作ったことは一回だけで、その時は少し失敗しちゃったから期待しないでね」
あまり自信がなさそうであったが、作ってくれる事実だけで上条はお腹が一杯なった。と言っても、現実の空腹の方が勝っていたのですぐに腹をすかすことになる。
そして、買い物を終えて上条の部屋に着いた。もちろん、美琴も一緒だった。
もう来る頃に慣れてしまったし、泊まる日も何度かあったので下校途中、このままこちらに来ても大丈夫なようにいくつか生活用具を持ち込んでいた。当然、居候のみのインデックスはそれに反発するが家主には勝てずおめおめだが置いていることを認めていた。
「「ただいま……」」
部屋の中にはだれもいないが、美琴と一緒に帰るときは「ただいま」と言ってあがるのが日課のようになっていた。二人は誰もいないことを確認して買ってきた材料を冷蔵庫に入れ、カバンを置いて座った。
「ふぅ…今日も長かった」
「なに親父臭いこと言ってるのよ。まだ夕飯も食べてないじゃない」
上条も美琴もさっきよりも表情が緩く別の意味で明るかった。
帰ってきたということで、二人は肩の力が抜けとてもリラックスできていた。通行人など、他人が多い外とは違って今は二人っきり。上条と美琴の二人は、このときが一番リラックスできて素直になれるときだった。
「上条さんは補習と不幸のせいで毎日が大変なんです。それに、誰かさんに追われていた時もあったしな」
「そ、それは昔の話でしょ!昔の!あの時は私も悪かったけど、当麻にも非はあったわよ!」
「はいはいそうですね。でも、出会い頭に電撃を浴びせるのは勘弁してほしかったぜ。今のそうだけど」
「しょ、しょうがないじゃない!恥ずかしいと…自然に」
「自然に攻撃されてそれを防ぐ上条さんは、何度思い返しても恐ろしい。よく今までいきてられたな」
「当然よ。だって当麻だもん」
迷いのない笑顔で美琴は答える。上条は褒められている気はしなかったが、美琴の笑顔に負けてしまい後ろ髪を掻いた。
「あれ?もしかして照れてる?」
ばっ!?と上条は反論するが、美琴は言わずともわかりますと不敵な笑みを浮かべた。
「て、照れてなんか、ねえよ」
「ホント~?顔が赤いよ~?」
「うっ……暑いんだよ。だから赤いんだ」
「だったら、前向いてよ。顔を逸らされたままじゃ、説得性がないわよ?」
ペースは完全に美琴の方向へと傾いていた。ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべながら上条を追い詰めていく姿は探偵のようだった。
「当麻さん。美琴さんを納得させてください♪」
「う、うるせえ………むかねえよ」
え?と美琴は驚きの表情を浮かべた瞬間、流れが変わった。
上条は右手で美琴の肩を抱き寄せ、口元をあえて耳元に寄せて囁いた。
(やられっぱなしってのもムカつくからな。ここらで少し復讐だ)
こんなことをされたのは初めてのことで何も反応できずにいた。一方の上条は、さきほどよりも赤くなりながらドキドキ心臓を高鳴らせていた。
(これって、予想以上に恥ずかしいな)
(な、なによ…何されてるの?密着して…居心地いい)
「美琴、なんでそんなに真っ赤なんだ?嬉しそうなんだ?なんだなんだ?上条さんに惚れ直したりでもしたのか?」
「なぁぁぁ??!!あああああぁぁぁぁんたはいきなりなにを――」
「アンタじゃないだろう。当麻、って呼んでたろ?」
美琴は混乱して意識が遠のいていた。
(これはなに?恥ずかしいのに、すごく嬉しい。というよりも息が、くすぐったくて……)
「これでも恥ずかしいんだぜ。でも、美琴が喜んでくれるなら俺はそれでいいかな」
「なっなななななっ!!なに嬉しいことを言って……ってああぁぁ!!!」
「嬉しい、か。ならそういえばいいだろう。ほれ」
美琴は動揺のあまり何が何をどうすればいいのかわからず状態だった。
そして、パニック状態の美琴に追い討ちをかけるように上条は美琴とより身体を近づかせた。さらに居心地よさと感情が高まりが上昇して、限界が近いことを悟った。
(当麻の身体、暖かくて逞しくて……カッコいい。ヤバイ、ここを動きたくないほど幸せ)
「…………美琴?」
「…………ふ、ふにゃー」
美琴の意識はそこで途絶えた。最後は自分で自分を追い詰めて自爆した。
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