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2025/05/14 22:36 |
本当に大切なこと 6
これにて終了です。前半は長かったですが、勢いが出来た終盤はあっという間でした。
EPに当たるので、とても短いです。でもこれ以上長くしたら、おかしくなりそうなので…すいません。
『5に組み込めばいいのに』と思う気もしましたが、こっちでまとめた方が綺麗な気がしたので、後悔はしてません。

魔術師は最後まであやふや。何故かは名前で察してくださいwwww



『after the after』

「まさかアンタがお見舞いに来る日が来るなんて、夢にも思わなかったわ」
 上条が目覚めて二日、そして魔術師を"殺して"二日。上条は入院中の御坂美琴の病室を訪れていた。
「上条さんも御坂をお見舞いにする日が来るなんて、思いもしませんでした」
「はぁー。まさか入院しちゃうなんて、ちょっと自分が情けないわ」
 実はこれが美琴が初めての入院であった。上条ほどではないが、数々の危機や局面を潜り抜けてきたので、怪我をすることはあっても入院までは行かなかった。だが今回、非入院記録が今ここで打ち砕かれた。
 もっとも美琴自身は入院するほどの怪我をしないという心へは持っていなかった。がいざしてみると、悔しいものだった。しかも、一番入院するはずの上条が元気であると、余計にそれが大きくなった。
「インデックスなんて、食事が嫌だって嘆いてたしな」
「あの子と私とじゃ意味合いが違うわよ。まぁ、食事が美味しくないのには同感だけど」
 まあなと同意し、上条は見舞い客用のパイプ椅子に座った。
「………ごめん」
 上条は美琴に頭を下げて、謝罪した。もちろん、上条が何を謝罪しているかわかっていた。
「なんでアンタが謝るのよ。むしろ今回は、わたしが謝るべきよ」
「そんなわけあるかよ!今回は全面的に俺が悪いんだ、俺が……弱かったから」
「………馬鹿、言わないでよ。私だって…弱かったから。アンタを傷つけて、こんなことまでさせて……見せる顔もないわ」
「……ごめん」
 二人は互いに悪いと思っていた。
 上条は自分の弱さが原因で、インデックスと美琴を傷つけてしまったこと。
 美琴は自分の弱さが原因で。インデックスと上条を傷つけてしまったこと。
 互いに自分の弱さを責め。今回のような結果を生んでしまったのは二人からしてみれば、罪に近い。そして、今回の出来事は決して忘れられない屈辱として残ることが、悔しかった。
「結局…俺たちは負けたんだな。あいつ、最後の最後で勝ち逃げするなんて…クソッ」
 上条は未だに魔術師のことが許せなかった。"殺した"というのに、今も憎しみは続いている。そしてこれからも、魔術師への憎しみが消えることはないのだろう。
 初めての殺意と憎しみは、上条の中に永遠に残る。もしかしたらと上条は思ったが、首を振ってそれを否定した。
 なにせ相手は『正体不明』。だったら、最後の最後までその正体を明かさないままでいたほうがいい。きっとそれが、魔術師への最後の抵抗なのだろう。
「これだから、魔術師はろくなやつがいない。だから俺は魔術は嫌なんだ」
「同感ね。私も魔術ってものが嫌になったわ」
 美琴も今回の件で、魔術を身に染みて実感した。あれは能力者よりもたちが悪いと、もう関わりたくないと思うのだが、きっとそれは無理だろうとすぐに諦めてしまった。
 上条当麻と一緒にいると言うのはそういうことなんだろうと、もうわかっていたからだ。そして、それが原因で自分から入り込んでいくことも美琴にはわかっていた。
 だから美琴は、落ち込んでいる上条にこういった。
「それでも、今回の件で魔術に関係する人間になってしまった。だから、もうアンタの近くにいるしかないわね」
「………ごめん」
「はぁー。もう謝るのはやめやめ。それよりも、この責任はどうやって取ってくれるのかしら?」
 以前にも責任という言葉を言われたが、今回はすでに手を出してしまったあと。上条はただならぬ雰囲気を感じ、どうすればいいかわからず、目を回した。
「わからない?だったらヒント」
 美琴は小さく微笑むと、上条の両頬に手を沿えて、自分の顔と向かい合わせた。そして、少しだけ顔を近づけると目を閉じた。
「え……?ええぇぇーー???!!!」
 慌てる上条の声が病室に響く中、美琴は恥ずかしさと笑いを堪えるのが精一杯だった

 一週間後。
 上条と美琴は魔術師と最初に戦った場所を訪れていた。そこは大通りの人が少ない地点で、大規模な戦闘を行うならもってこいな場所だった。
「本当は、来たくなかったんだけどな」
 現場には魔術師との戦闘後は一切なくなっており、人があまり通らないだけの大通りになっていた。だが、今日はその場所は活気で溢れていた。
 上条はその理由にため息をつきたくなった。小さい子供に、どこかで見たことがあるマスコットキャラ。子供向けの音楽。どう考えても上条が来るべき場所ではない。しかし、隣のお姫様は違った。
「いいじゃない。アンタにもゲコ太のすばらしさがわかるいい機会なのよ?」
「上条さんからしてみれば、そんな機会はいらないんですが……」
 この先にあるビルでは、美琴が好きなゲコ太のミニイベントが行われているらしい。そして、何故か上条はその同伴として連行されることとなったのだ。一応、反論はしたが即刻却下され、半ば強制的にここにつれて来られたというわけだ。
 上条は自分と周りとの差に、今すぐここから逃げ出したくなるが、隣にいる相手を置いて逃げ出したら、どんなこと悲劇が待っているか想像したくない。というよりも、周りにも被害が出そうだから逃げ出す素振りすら見せられずにいた。
「はぁー、不幸だー」
 やはりこういうしかなかった。
「いいじゃない、いいじゃない。不幸でも何でも私が楽しめれば」
「どう考えても、上条さんに得は一個もないと思うのですが?」
「だったら、帰る?」
 挑発じみた口調、こういわれると悔しい。帰ってやりたいのはやまやまなんだが……結局、気持ちの方が素直だった。
「……うるせえ。ビリビリ中学生」
 だけど少しだけ抵抗したくなって、上条は美琴の手を握った。でも、抵抗と言いながらもそれもやっぱり素直な行動だった。
 上条は赤くなった顔を隠しながら、美琴を引っ張って前を歩く。
「………『責任』」
 え? と美琴は周りに夢中になっていた視線を上条に向けた。そして、上条はそれを知らず、背中を見せながら言った。
「お前も…『責任』取れよな」
 そういって、握っている手に力を込めた。美琴は小さく微笑むと、その手を握り返した。
 二人の『責任』の取り方は…まだ始まったばかり。

<了>
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2010/02/28 15:03 | 禁書

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