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2025/05/14 19:10 |
12月のとある夜にて
思いついた小ネタsss
本編が夏・秋なので、こういったssは大体この月以降が多いですね。



 季節は過ぎ十二月。
 寒さばかりを感じるこの季節だが、生憎雪はちらつくこともない。暖冬と予測された今年は雪を期待できないが『樹形図の設計者』(ツリーダイアグラム)がない今、絶対ではない。
 それを知っている上条当麻は雪でも降るのかなと空を眺めながら、帰宅した。
「んで、玄関先になんでお前がいるんだ」
「いいじゃない。どうせ来る予定だったし、問題ないでしょ」
 そういうい意味じゃねぇよとため息をつきながら、上条と美琴は部屋の中に入っていく。
「ねぇ、今日とか雪降りそうじゃない?」
「降ったら降ったらで、外を歩くのが面倒そうだな」
 ロマンがないわねと、今度は美琴がため息をついて呆れた視線で上条を見た。それをスルースキルで受け流した上条は、カバンを置いて持っていたスーパーの袋から食材を冷蔵庫に入れていった。
「それで? 暴食シスターがいないってことだから、今日はここで夕飯を食べて帰るというお考えですか?」
「正解♪ あ、でもただでというわけじゃないわよ? どうせ宿題があるんでしょ? 見てあげるわ」
「へいへい。まだ時間もあるようですし、見てもらいますかね」
 上条はカバンから今日出された宿題と特別課題を机の上に出した。机と一体になったコタツに入り、上条はこれだと美琴に渡した。
 夕食を食べさせてもらう代わりに、宿題を見てもらう。上条と美琴が良く行う交渉だ。といってもこれは稀なほうだ。大体いつもは、夕食を全て美琴に任せ、その後に宿題を見てもらうパターンの方が多い。上条からしてみれば、食費も労力も減るそちらの提案の方が魅力的である。
「これぐらいなら、一時間以内に終わると思うわ。難題はあるけど、そう難しいものじゃないと思うわ」
 一通り問題を読み終えた美琴は上条にそう説明した。一目見ただけで大体の問題がわかるあたり、流石であると上条は思ったが、もう何十回も思ったことなので考えないことにした。それに、自分との差に涙が出そうでもあった。
「一時間か…なら、その後に飯を作っていいか?」
「問題ないわ。それに、私は食べさせてもらう身なんだから、口出しする権利はないと思うのだけど」
 念のためだと上条は言うと、小さめのペンケースからシャープペンシルを取り出した。


「――――――――――――うん。これでいいわ」
 最後の最後で難題に引っかかったが、美琴がいたこともあり、予定通り一時間以内に終わった。そして、宿題と課題の時間から開放された上条は、疲れたと床に転がった。
「やっぱ上条さんは、頭を使うことはなれませんな。いくら学力が上がってもこればかりはどうしようもない気がします」
「ま、いいんじゃない。用は学力が向上したって結果が重要なのよ。それに私だって勉強するのは好きじゃないわ」
「そりゃそうだ。勉強が大好きなんて人がいるほうが稀だ。一般的な学生は、大体嫌いなんだよ」
 それもそうねと、美琴も上条を真似て床に転がった。
 視界には部屋の天井だけが見えている。だが、聴覚は隣にいるその人だけを捕らえている。それがとても心地の良い感覚だった。
ふと、美琴の手が上条の手に伸びた。上条はそれに気づき、その手を握ると美琴はふふふと小さく笑った。
「何笑ってるんだよ」
「別に。ただこういう時間もいいわねって思っただけよ」
 うれしそうに美琴は答えると、その手を握り返してきた。上条はそれに何も言わず、もう一度握り返してきた。
「幸せそうだな」
「当然よ。だって好きな人と一緒にいるんだから」
 そう言われて、上条は照れくさくなり赤くなった顔を隠すように美琴とは逆方向を向いた。美琴はそんな上条のことも知らずに、握り締めた手の幸せを確かめるように何度も何度も握り返した。
「ったく、俺はお前に敵わねえよ、美琴」
「それは私もよ、当麻」
 そういって二人は顔を赤くしながら笑った。


 それから上条が作った夕食を食べ、流れに任せるように美琴との時間をすごしていると時間の流れはあっという間だった。
 常盤台の門限はすでに切っているが、消灯時間までに戻れば問題ない。美琴は何度も上条の部屋を訪ねていたので、その時間というのは把握済みだ。
「悪いな。送りたいんだけど、今日は…な」
 上条は申し訳なさそうに言うが、美琴は特に気にした様子はない。
 実は上条は『必要悪の教会』(ネセサリウス)の手伝いで、クリスマスに行うミサの手伝いをしている。そのため、寝る前にその手伝いをしている。そして、美琴を送っていたらその時間に間に合わなくなるので、今月はクリスマスが終わるまで、送れる時間はなかった。
 当然、美琴もそのことは理解している。だから何も言わずに、頷くのが上条のためだと知っている。本当はもう少し一緒にいたいが、邪魔をするほうが嫌だったのでその思いを押し殺した。
「ううん。私も知ってたから、気にしないで。今度は、その日じゃない日にちゃんと来るから」
 上条はああと頷くと、手を広げた。美琴は上条の胸の中に顔をうめその体温を確かめた。
「…………………暖かい」
 お互いの体温はとても暖かく心地が良い。布団の中にもぐるのとは桁違いの心地よさに、このままでいたいと願いたくなるが、少しして美琴は上条から身体を離した。
「…ありがとう。それじゃあ…またね」
 満足そうに、でも本当は苦しそうに美琴は玄関を出た。その時に、美琴と声をかけられ振り向いた。
「言い忘れてたけど、クリスマスの日は空けとけよ。あと、イブもな」
 そういって上条は真っ赤な顔を隠すように部屋の奥に戻っていく。美琴は、馬鹿と言って玄関のドアを閉めた。
 その顔は、すでにニヤニヤと緩めきっていた。
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2010/03/02 17:36 | 禁書

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