卒業式をテーマにして急いで書きました。
ぶっちゃけると、昨日の式中に考えて書いたものですwww
卒業式…卒業証書は代表者が取るだけだったから、座ったり立ったりしただけ。しかも合唱曲が、全国大会のコンクールで使われたものというのはどういうことよorz
卒業式も合唱曲も、時代は変化していますね。
ぶっちゃけると、昨日の式中に考えて書いたものですwww
卒業式…卒業証書は代表者が取るだけだったから、座ったり立ったりしただけ。しかも合唱曲が、全国大会のコンクールで使われたものというのはどういうことよorz
卒業式も合唱曲も、時代は変化していますね。
3月6日、この日は常盤台中学卒業式。
世界有数のお嬢様学校と言うことで、その卒業式の規模も普通のものとは全然レベルが違う。
まず一つ目に、常盤台の卒業式は必ずテレビ放送される。これは、世界的なお嬢様学校であることと、学園都市を代表とする学校であるからである。もっとも、これを楽しんでいるのはメディア・世間の目であるため、常盤台中学の生徒にはいい迷惑である。
二つ目は、参列者のレベルが政府レベルであること。教育委員会のトップや有名政治家のみならず、現・旧の総理大臣、時には天皇家からも出席者が出てくることがある。下手をすれば、皇室以上の参列者が終結すると言う、考えられないレベルにまで発展する。保護者としてはいい迷惑である。
そして最後は、式の長さだ。普通、式は時間の都合を考えて省略されたりするが、この常盤台には省略なんてありはしない。簡単に言えば、常盤台中学卒業式ではなく、常盤台中学3年○組、○○さん卒業式と、一人が全て式を行うのだ。言うなれば、国歌斉唱から始まり、卒業証書授与、卒業生○○さん言葉までを全て自分ひとりで行う。そして、全ての生徒が終了した後に、初めて一般的な卒業式を迎えるのだ。
「なんというか……卒業式って名前、勘違いしてないか?」
上条当麻はプログラムを見ながら、そう思った。一般的な卒業式を考えると、これはとてもおかしなもの。一人一人が卒業証書をもらうのまではわかるが、なぜ国家を一人で歌い、もらったコメントを一人一人言うのだろうか。記憶がないとは言え、上条も卒業式の知識は備えているがこれはある意味、何か間違えているような気がしてならなかった。
そう思いながら上条は、今日のプログラムに目を落とした。
学校長式辞、
教育委員会の挨拶、
来賓祝辞、
紹介、
在校生送辞、
卒業生答辞、
卒業生合唱、
校歌斉唱、
閉式の辞
と続く常盤台中学の卒業式。上条はこれが普通だろうと思い、長々と続いている学校長を無視し、隣にいた年上の女性を見た。
「それよりも、なんでわたくしめが御坂の卒業式に出席しなければならないのせうか?」
「いいじゃない。どうせ暇だったんでしょ?」
まあそうですけど、と上条は御坂美鈴に曖昧に笑い、周りを見た。
どう考えても自分は見当違いの場所にいるのは、嫌でもわかる。参列者や保護者の服装もそうだが、外見からもお嬢様特有の雰囲気がびんびんに出ている。その一方で、上条はただの高校生で来月には3年生になる。この周りとは大きく違った存在に上条は、不幸だと思いながら、長々続く校長の話にため息をつき、美鈴を見た。
美鈴も上条の周りの保護者に一員だ。服装も雰囲気もこの場に合っている。だというのに、何故自分を連れてきたのか、呼び出された当初からずっとそれが疑問であったのだが、美鈴はいっこうに教えてくれない。それどころか、
「美鈴さん、なんで場違いの式に俺を連れてきたんですか?」
「ふっふっふ、今にわかるわよ」
外見が大学生の美琴の母親はウィンクして言った。
(なんだかそればっかりだな…式中に何かあるのか?)
考えても仕方がない上条は、もう一度ため息をついた。一体いつになったらそれが明かされるのか、気が遠くなりそうだなと思いながら、目を閉じた。
上条当麻が御坂美鈴から連絡をもらったのは当日二日前の夜の話だった。
『上条くん、あさって暇よね?』
いきなりかかってきた相手は、御坂美鈴であったことに戸惑ったが、いざとってみるとストレートな質問だったので、はいと答えた。すると、ふっふっふと楽しそうに笑う美鈴の声が、何かありそうですなと不幸センサーなるものが不幸を察知したような気がした。
『それじゃあさ~、ちょっと美琴ちゃんの卒業式に付き合ってくれないかしら?』
「美琴の卒業式って……ああ、常盤台の卒業式! って、なんで俺なんですか、美鈴さん」
『それはね、上条くんだからよ♪ それに私一人じゃ、せっかくの卒業なのに美琴ちゃんがかわいそうじゃない? だったら、上条くんが行ってあげれば、美琴ちゃんも気持ちよく卒業できると言うものよ♪』
「ああ、なるほど。確かに母親との卒業式というのは寂しいものですからね。だったら、別にいいですけど………俺でいいんですか?」
『うんうん。上条くんが来たら、きっと美琴ちゃんは喜ぶわよ♪』
喜ぶと言われても上条には、いまいち実感がない。だから上条は、知り合いとしていてくれたらいいのだろうと結論付けると、そうですねと微妙な返答をした。
「でも常盤台の卒業式って普通の人、特に俺みたいな学園都市の学生ってダメじゃないですか? しかも無能力者で男となれば」
『その辺りは問題なしよ。美琴ちゃんの保護者である美鈴さんにかかれば、上条くんも保護者に一員として参加可能よ』
何故か、任せるのを一瞬躊躇ったが、不幸になる上条からすればそう問題にはならないだろうと思ったので、ここは美鈴に任せることにした。もっとも、常盤台の卒業式に参加しようとするなんて、上条一人では不可能であったし美鈴に誘われるまでは行く気はなかったのだが。
『それじゃあ、詳しいことはあとでメールするわね♪ 最後に質問はある?』
「当日の服…ですかね。私服でいいのか制服の方がいいのか。保護者席にいるとはいっても、公の場ですから。それに学園都市の生徒である俺が制服でいいのかも気になりますから」
『うーん。制服でいいと思うわよ。少なくとも、美琴ちゃんの知り合いにも、学園都市の知り合いが来るって言うし、この日のために上条くんが無理に服を買わなくてもいいと思うわ。あ、でも、美琴ちゃんのお父さんの服なら』
「はい制服ですねわかりましたありがとうございます」
きっとろくな服ではないと思った上条は、当日楽な制服で行くことにした。
『あ、私からも。上条くん、絶対に欠席しちゃダメよ。学校の補習があっても、他の人から用事を頼まれても、絶対にこっち優先ね♪』
「なんでそんなことまで知っているかすごく気になりましたけど、わかりました。でも、本当に俺でいいんですか?」
『いいのよいいの♪ 細かいことは当日になればわかるわ。それじゃあねえ~』
現代の若者のノリで、美鈴から一方的に電話を切った。上条は、最後の最後まで美鈴の真意を理解できぬまま、あさっての卒業式に疑問を抱いたまま、夜をすごした。
在校生の送辞が終わり、次が卒業生の答辞になったとき、上条は美鈴に肩を叩かれた。
「そういえば、上条くん。次の答辞で美琴ちゃんが読むのって知ってた?」
「まぁ、知ってはいました。何を書けばいいか相談されましたが…それがどうかしたんですか?」
一週間前あたり、帰り道に美琴と会った時に答辞を読むことになったと聞かされた。常盤台のお嬢様にしてエースである美琴が選ばれてもおかしくなかった上条は、その時はあまり驚かずにほとんどスルーしたのだが、美琴は何を書けばいいのかと上条に相談してきたため、意外と鮮明に覚えていた。
「なるほどなるほど。だったら、ちゃんと聞いてあげないとね。もちろん、上条くんもね」
と美鈴は笑って、名前を呼ばれた美琴が壇上に上がっていく姿を見た。上条もそれに釣られるように、美琴の姿を追っていく。
(あの時、なんだか思い悩んでたけど……大丈夫か、あいつ)
相談された時のことを思い出すと、やはり不安であった。
真剣に何かを考えつつも本当に決まらず、苦しんでいたあの姿は、とても印象的だった。美琴と人一倍会っていた上条ですら、あの時の真剣な面持ちを見たことは滅多にない。だから上条は、美琴らしく思える単純な一言アドバイスをして、その場を去った。そのあと、美琴と会うことはなかったが、何も言ってこなかったのだから大丈夫だろうと結論付けた。
だが、いざ本番近くになると心配する父親のような面持ちで美琴を見ていた。なんだかんだいって、実はとても心配していたことに気づくと、上条は小さく笑った。
「ったく、まどろっこしいのは俺じゃねぇか」
上条は美鈴にも聞こえないほど小さな声で呟くと。壇上に登りきりマイクの前でお辞儀をする美琴を見た。
真剣だが少しだけ緊張も伺える。でも上条は大丈夫そうだなと思い、力を抜く。あとはもう、美琴の言葉を聞くだけだった。
卒業生の答辞を聞くのは、上条の記憶の中では初めての経験だった。
上条の高校でも卒業式は執り行われるが、一年の頃は自由参加であり、二年の今は来週だったため、卒業式というイベントに参加するのはこの常盤台の卒業式が初めてであった。
長いプログラムや何を行うかは知識として知っていたが、いざ経験すると主役ではない自分には面倒な長い話ばかりが続くと思っていた。だが今、壇上で卒業生の答辞を読んでいる美琴は、それらさえ忘れさせるほど、綺麗に滑らかに、だが美琴らしく心の篭った言葉は上条のみならず、この場にいる全ての人間を驚愕させた。
書いてある内容には目立ったこともない。長い三年間で何があり、自分は何を思ったのかを、読んでいるだけ。だと言うのに言葉には力があり何かに引き込まれていくような錯覚、まるで暖かな海に投げ出され、心地のいい海水に漬かるような暖まる感覚をこの場にいる一同に与えた。
参列者の大臣や皇室の人間、テレビメディアのみならず、ずっと育ててきた母親である美鈴でさえも、自分の娘の言葉に引き込まれていた。だが上条だけは唯一違った。
(アイツらしいな……まさに御坂美琴、か)
言葉に引き込まれつつも、美琴の言葉に美琴らしさと感謝の意を強く感じていた。
そう、内容は美琴には重要ではなかった。美琴がとても悩ませていたのは、
(って言っても、俺はあいつに自分の思ったことだけを相手に伝わるようにすればいいって言っただけだけどな)
何かに真剣に考えるのはいいけど、真剣に考えて空回りするのはもったいない。だから上条は自分の好きにすればいいと重い期待を一心に背負う美琴に簡潔な言葉を差し伸べただけだ。
そして、言葉の通り美琴は自分の思い描いた通りに、伝えたかった感謝の気持ちを言葉と心に乗せて言った。だから上条は何もしていない。これも全て美琴の力だといつものように考えながら、美琴の言葉に引き込まれていった。
後編
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