忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/05 08:22 |
memories 第4話-2
バトルを入れようと思ったけど文章力不足と展開が思いつかなかったのでカットしました。
でもカットして正解だったなと、修正してて思いましたwww



 PM09:51
 上条当麻は魔術師が逃げて回っていることも知らず一人、夜の町を歩いていた。
 新聞の記事を読んで一時間、書いてあった内容は単純な話。魔術師と名乗る集団が学園都市を襲い、一部の能力者たちが学園都市を守ったというだけだ。
 上条はこの記事を読んで感じたことは特にない。能力者のリストには自分の名前と美琴の名前、あとは白井黒子、一方通行など『上条当麻』を中心とした名前が載っていた。
 過去に偽海原ことアステカの魔術師、エツァリが『上条勢力』というものが存在すると言ったことがあるが、学園都市を守った能力者のほとんどはその『上条勢力』に名前を載せていたメンバーであった。もっとも一方通行は『グループ』として活動していたので、『上条勢力』に属していなかったが。
 そして今回の事件で一番の肝となったのは『上条勢力』が魔術勢力を倒し、学園都市を守ったということだ。これが意味するのは『上条勢力』がどれほどの力を持つかを、科学・魔術両サイドに示したということを意味する。
 それにより、魔術サイドは『上条勢力』を危険視し、魔術師の刺客を学園都市に派遣する勢力が急激に増えた。その結果、魔術の存在が知られることとなり、科学と魔術の境界はほとんど崩壊していた。
 しかしそんなことを知りたくとも知ることができない記憶を失った上条当麻は、変わってしまった学園都市の変化などにも気づけず、のん気に近くのコンビニへと向かっていた。
「学園都市の夜って、こんなに静かだったか?」
 が、ホテルとコンビニの境目の距離で町の変化に気づいた。
「………人の気配が、ないのか?」
 ホテルを出た時はそれなりに人とすれ違ったが、コンビニへ近づいていくほど人は少なくなり今は気配すら感じられない。といっても、上条は人の気配を察する技術を持っていない。その上条が人の気配を感じないということは…。
「戻った方が、いいのか?」
 冷静に考えれば、この先を進むのは危うい。人気がどんどん少なくなっていく中をさらに進むのは危険だと、直感的にわかるものだ。だが、上条は知っている。いや、"知っていた"。
(この先に…いるのか?)
 そう思ったとき、ドーン! と大きな爆発音が聞こえた。そして、その音がスタート合図だったのかその方向へと走った。爆発音に走った理由や戻る理由など、すでに上条の頭の中にはなかった。唯一の頭にあったのは…。
(まさか…?! 美琴??)
 何故かその名前が上条の頭によぎっていた。


 PM09:57
 御坂美琴と白井黒子は、まだ走り続けていた。
 地下の天井を壊して作られた空洞から魔術師を追い、地下街を走りぬけ、外に出た魔術師を初春たちのサポートで追いかけてきた。そして来たのは、白井が最初に来たビルの前であった。
「警備員が……いない?」
 白井が驚いたのはその点であった。ここで爆発があってすでに一時間が経つが、現場に残ったのは立ち入り禁止の黄色いテープだけと警備員の車。そこには人の気配がまったくしなかった。
「固法先輩……これは?」
『あ、あたしにも……わからないわ。警備員からの連絡はないし…初春さんの方は』
『いいえ。そんな情報はいっさいありません』
 情報にない事態。『超電磁砲』はポケットのあったコインの感触を確かめた。直感的に、魔術師はここにいると判断したのだ。
 美琴はいいわと言って、白井を置いてビルへと歩いていく。テープを潜り抜け、真っ暗な明かりのないビルの入り口へと進んでいくと、お姉様という白井の声に気づいた。
「お姉様。一人で先走っては」
「黒子。行くわよ」
 美琴は空いていた入り口をくぐり先へと進む。真っ暗で人気の感じられない大きなビルは、まるでホラーゲームの舞台さながらの雰囲気を持ち合わせていた。ところどころにある、破壊の後はさながらホラーの演出に見えなくもない。
 明かりがないがそれは持っていた懐中電灯を使えばなんとかなった。美琴は懐中電灯であたりを照らしながら先へと進んでいくと、大きなエントランスへと出てきた。
「黒子。アンタ、ここに来たわよね? 変化とかある?」
「うーん……今のところはありませんわね。来た時と変化はありませんの」
 と白井は思い出しながら美琴の後に続いていく。美琴は念のために、ポケットからすでにコインを取り出している。電撃で時間を稼ぎ、すぐに『超電磁砲』を打ち出せば問題はないが、今すぐ撃てるようにと準備に越したことはない。
『白井さん。ちょっといい?』
 ふいに白井の携帯から固法の声が届く。白井ははい、なんでしょう? と美琴にも聞こえるように答えると、気づいた美琴は歩くのを止め、白井の方を向いた。
『警備員に聞いたんだけど、その場所を撤退したなんて報告は受けてないそうよ。しかも、連絡も取れないらしいわ』
 美琴と白井はその言葉が意味することに気づいた。
 ここに魔術師は来た。そして、魔術師が警備員をこの場から消したのだ、と。
「わかりましたわ。また何かわかりましたら、教えてくださいませ」
 そういうと、白井は通話を切り電源も切った。電池切れが寸前ですの、と白井は言って美琴の横に並んだ。
 二人はすでに感づいている、ここに魔術師がいて、きっとここが最終地点であった、と。


 PM09:59
 美琴と白井が階段を登って上に上がってくる最中、上条も実はこのビルにいた。
 爆発音に気づき、走ってきた先はこのビルであったため、立ち入り禁止のテープをくぐってここまで登ってきた。エレベーターなら楽であったが、入り口の悲惨な跡と人気のなさにそれはダメだと直感し、一段一段、階段を確実に登っていく。
「ったく。一体何階建てなんだ、このビルは」
 長い階段を登り続け、上条は何階かの標識を見ると46階という文字が目に移った。少なくとも、階段はまだまだ続いていそうであり、気が遠くなりそうだった。
 だがそれを知りながらも上条は歩みを止めなかった。どんなに疲れようが登り続け、最上階へと向かうことが今の自分のゴールのように思えたのだ。
 上条は一階一階進むごとに、自分の疲労が溜まっていくのがわかった。鈍った身体のツケが、ここでやってきたのだ。それを知らない上条はそれでも登り続けた。座りたい、休みたいと思いながらも、一段、また一段登っていく。
 そして、そんな作業が続いていく中、53階にたどり着いた時、変化に気づいた。
「…………火?」
 階段の先にあったのは小さな火。今にも消えそうなほど小さかったが、その熱は未だに健在であった。触れたらやけどどころではすまなそうな火は、階段を進むごとに多くなっていく。
 階段の端や壁についている火は一歩間違えれば火事になりそうなのに、回りには燃え広がっていなかった。そこに上条はこの火の疑問を見つけた。
「この火、もしかして作られたものか?」
 考えてみれば単純なことだ。このビルで火が燃え広がったら、全体に及ぶはず。だというのに、階段を登るたびに大きいかつ多くなっていく火は燃え広がることもなく、その場にとどまり続けている、自然に生み出されたものならば、火事にもなるはずなのにならない。
 つまりこれは自然ではなく人工的に、能力者か魔術師が作った火に違いなかった。
 上条は自分の右手を開いたり握ったりして見た。『幻想殺し』、もし考えていることがそうであるならば、右手に触れた瞬間、火は消えるはずだ。だが例え本物の火であろうとも、大きな火でもなければ軽いやけどで済むだろう。
 やってみるかと決断すると、上条は恐る恐る火に右手を近づけてみる。熱さはいまだ健在であり、火とはいえ勢いも消えていない。だが試すに越したことはない。
 右手を伸ばし、火に触れる寸前、熱さに怯み一瞬だけ躊躇した。が、それも一瞬だった。


 PM10:05
 時刻はついに十時を突破した。美琴と白井は階段を登りながら、周囲への警戒を怠らなかった。
 上条と同じ理由でエレベータを使わず、走って階段を駆け上っていく二人はそれなりの速さで一階一階を登っていた。白井には『空間移動』があったため、体力はそれほど消費していないが、美琴は意外にも体力を消費していた。
「お姉様、大丈夫ですの?」
「はぁ…はぁ……これぐらい、どうってこと」
 息が上がりながらも、美琴は威勢を張って答えた。だがどう見ても、疲れ切っているのがわかる。それでも白井は何も言わず、そうですかと苦し紛れに答えた。
「はぁ…それよりも…はぁ…さきに行っても」
「お姉様。寝言は寝てから言え、という言葉を知っておりますか? 今のお姉様の状態を見て、放って置ける状態ではありませんの」
 白井に言われて、美琴はそんなことと言おうと思ったが、上がった息と流れる汗が筒抜けであったので何も言い返せない。さらに白井からの無言の視線に美琴は、ごめんと謝るしかなかった。
「本当なら休んで欲しいのですけど、今のお姉様にはそういっても無駄ですの。ですから、お止めはしませんわ」
「はぁ…はぁ…ごめん、黒子」
「いいえ、お気になさらずに。ですけど、ご無理はなさらずに。このあとには魔術師との戦闘が控えておりますので」
 美琴はそうねと答えながら、階段を登り続ける。全力で走り続けた身体はきっと戦闘ではあまり役には立たないかもしれないと、本来の『超電磁砲』の姿とはかけ離れているような弱さを、白井は感じられずにはいられなかったが、やはりそれも唇をかみ締め、飲み込んだ。
 今にも崩れそうな膝と流れ続ける汗は、上条のためのもの。美琴とずっといた白井はそれを最初から見ているが、慕う者としても大切な友人としても今の自分には何も出来ない。
 地下からずっと気づいていたが、きっと美琴を止められるのは上条だけだ。しかし逆に言うのであれば、止められなくなる可能性すら与えてしまう可能性すらあるのも上条だ。だが上条本人はこのことに気づいていない。そして、気づかれてはいけないと美琴はこのために、自分を犠牲にしている。
 八方塞、と白井は思いながら、自分の慕う美琴のあとを追う。今は40階、情報ではこのビルは60階建てらしく、長かった階段も次第に終わりを迎えそうだった。大体このペースで行けば、10分には60階にたどり着いているはずだ。そして、長かった逃亡もここで終わりを向かえ、あとは魔術師を二人で協力して倒すのみ。
(あと少し……あと少しで今日が終わる。いえ、終わらせないと…お姉様が)
 白井はこれで終わって欲しいと心で祈りながら美琴の後を追った。つらそうな美琴を見るのは、そろそろ限界であった。


 PM10:08
 最上階の60階。この上にはまだ屋上があるが、この階段からはいけない。しかも、初春たちがこのビルを衛星から見ていたので、屋上に人影がいたら目撃しているはず。
 白井は電池切れ寸前の携帯の電源をつけ、初春に連絡を取ってみた。今は情報が欲しい、美琴も白井も同じだった。
「初春、このビルや魔術師について変わったことは?」
『特にありません。それに何かあったら、御坂さんの携帯に連絡する気だったんですけど』
「それぐらいわかってますわ。それよりも、本当に何もないんですね?」
 白井が念を押すと、初春も隣にいるであろう固法もないと言った。そうなるとここが終着点。
「わかりましたわ。初春、今は最上階ですの。もしここにいなかったら……。念のために、他の情報も集めておいてくださいますと助かりますわ」
 白井の頼みに、任せましたと初春は答えたのと同時に、白井の携帯の電池は切れた。白井は電池切れになった携帯をポケットに入れ、美琴を見た。
「お姉様、ここにいなければ」
「うん、わかってるわ。それよりも、行くわよ」
 と美琴は白井に声をかけた…瞬間。
「――――なっ」
「ッ!!?? これは…?!」
 声をかけ終えたのと同時に、上から何かを乗せられているような重量感とともに体中を見えない鎖で縛られたように束縛され、二人は動けなくなってしまった。魔術、と思ったときにはすでに遅く、二人は早くどうにかしないとと思う焦りと、気を抜いてしまったと思う自分の不甲斐なさを感じていた。
 白井は自分の能力でなんとか切り抜けようと思い、美琴を置いて一つ下の階に『空間移動』した。のだが、『空間移動』が終わったのと同時に、また同じような重量感と束縛が白井を襲った。
(どういうことですの!?)
 白井は冷静にこれを分析に、場所と範囲が広がらなさそうな50階まで下がり、階段途中にある折り返しの床に『空間移動』した。
 だが『空間移動』が終了した際の結果はまた同じであった。
(なんで…ですの!?)
 白井は魔術をよく知らない。そのため、拘束されているのはどんな魔術なのかも、どのぐらいの範囲なのかもまったくわからない。しかも術式や起点となる存在も、何を用いられたかもわからない。
 だから、白井だけではなく美琴も気づけなかったのだ。
 "入り口から存在していた、このビルを覆うように配置されたルーンの刻印の存在"を。


 PM10:09
 白井が『空間移動』した同時刻、美琴は一人になった60階の通路で一人、見えない何かに当たるように電撃の槍を無差別に放っていた。
 暴れ広がりあたりを食い散らかしていく雷の槍は、腹をすかせたライオンのように獰猛で当たったら大怪我、場所によっては即死確実のものであった。当然、美琴も殺人的な威力で放っていることを理解していたが、ここには人気がまったくなかったのでそれはは気にする必要はなかった。
(どこ!? どこにあるの、"花"は!?)
 美琴はこの魔術の起点が、白井から話された『ガラスの花』だと思っていた。だが白井を殺そうとしたあの花は、爆発だけの代物である可能性もあった。でもこのような状況ではそんなことを言っていられない。それにもし『ガラスの花』がこの近くにあったら、美琴の死の可能性もありえたからだ。
 そのため、デリケートや御しとやかにとは無縁の荒々しい雷の獣を、美琴は容赦なくあたりに暴れさせ続けた。当然のことながら、全力で走り続けた体力では、長時間の使用はほぼ不可能であったし、もしものことを考えて温存したほうが良いため全ての力を使い果たせない。
 こうなると同僚の白井任せにしたいが、魔術に疎い白井にもきっとこれの解除は難しいはず。そうなると、自分で何とかするしかないのが、今までの経験上での最良の手段だった。
「はぁ……はぁ……久々に……きついわね」
 かつて上条当麻と戦った時も体力が切れ負けたことがあるが、今は魔術師という存在の相手と命の危険があったため、それよりもきつい。身体も精神も、極限状態だということが十分にわかる。
 それでも、美琴は能力を使い続けた。
 自分はまだ死にたくないし死ねない。せっかく会えた人がいるのに、今度は自分がそれに会わせてしまうのは耐えられないと、自分を奮い立たせ、能力を出し続けた。
「はぁ…ま、だ……はぁ…死ね、ないわよ」
 上条当麻…こんな極限状態でも美琴は忘れない。そう、自分を犠牲にしてもと思っているが、死ぬことは出来ない。死んだら…………美琴はそのことを十二分に理解していた。
 だからまだ死ねない。守るといっても死ぬためではなく、一緒に新しい思い出を、好きな人と一緒に楽しく過ごせる日々を彼女は…。

「なるほど。それが噂の『超能力者』(レベル5)ですか」

 という声とともに、美琴を拘束していた魔術は解除され、身体が自由になった。それがわかったのと同時に、美琴は声の方向を向き、地面を蹴って距離をとった。
 相手は闇の中からだったため、姿は見えない。いや、魔術と言うもので見えなくしているかもしれないと思い、美琴は警戒をして自分の周囲に電撃を纏わせ、電撃の結界を作った。
「アンタが…魔術師か」
 はい、と言う声は女性のものであった。だが魔術師と認めたということは、敵!
「それじゃあ、アンタを捕まえればおしまいね」
「いいえ。それは違います。いや、捕まえられないと言うべきでしょうか」
 その言葉には自信や過小評価はなく、真実を言っているだけだと思わせる何かを感じられた。美琴はポケットからコインを取り出し、右手の親指に乗せた。
「『超電磁砲』ですか。なるほど、そちらがその気ならどうぞ。それと、私はあなたを攻撃する気は"ありません"ので安心してください」
「ッ!! 舐めてくれるじゃない! だったら『超電磁砲』を見せてあげるわ!!」
 という声とともに、美琴の周りの紫電は火のように燃え上がり、親指のコインは『超電磁砲』として、闇の中の魔術師を貫くために放出された。

 そして、『超電磁砲』は闇の中の相手を貫いた。

 その衝撃で廊下は抉られ、床に真っ黒な跡が残された。行き止まりの壁は穴が開いたらしく、外の風の音が美琴の耳にも届いた。相手にはなった『超電磁砲』の威力だが、一応手加減はしたが直接当たったら即死だろう。だが相手は魔術師、何があるかわからない。
 美琴は『超電磁砲』をもう一発撃つために、コインを取り出すと同じように親指に乗せ、射抜いたはずの相手に再度向けた。そして、親指に乗せ構えた直後に、背後からお姉様と言う声が聞こえた。
「黒子…無事だったのね」
「ええ。それよりも、さきほどの衝撃…まさかお姉様」
 美琴は振り向かずに頷いた。だが、"やっていない"。
「お見事です…というべきでしょうか。『超電磁砲』の御坂美琴さん」
 射抜かれたはずの魔術師は、さも同然に歩いてくる。少なくとも、わかってはいたがこうも何もないと、美琴も動揺を隠せなかった。コツン、コツンとリズムを刻むように近づいてくる足音に、美琴は『超電磁砲』を、白井は金属の矢を指に挟み、やってくる魔術師をにらんだ。
「ご紹介が遅れました。神裂火織と申します」
 そういって出来てきた魔術師、神裂は魔術師とは言いがたい半そでのティーシャツに片方だけ太ももが見えるジーンズと言う格好であった。だが、彼女の手には刀。それも自分たちよりも大きな長い日本刀を持っていた。
 美琴と白井はそれを見て驚いたがそれも一瞬だけ。二人は出てきた相手を睨みつけ、攻撃の機会を狙っていた。
「魔術師ってもっと頭脳的なやつかと思ったけど、アンタは違うみたいね」
「ですけど、これでも立派な魔術師です。なのでお間違えのないように」
 神裂は目を閉じて、刀を構える素振りを見せた。美琴と白井は、来る! と直感し、二人も構えた。
「あと勘違いしているようですが、今回の事件の魔術師は私ではありません。私はその魔術師を追っていた一人です」
「それを…信じると思いですの?」
 白井の言葉に、いいえと神裂は答えた。
「………仕方ありません。出来れば、話し合いで解決したかったのですが、どうもそうにはいかないようですね。『超電磁砲』と……」
「そういえば紹介がまだでしたわね。風紀委員の白井黒子と申しますわ。そして、風紀委員の権限の元、魔術師のあなたを逮捕させていただきますわ、神裂火織さん」
「やはり、この場で会うべきではありませんでしたね。出来ることならもっと穏便な場所で会うことが出来れば、よかったのですが」
 というと、神裂は閉じていた目を開け、能力者の二人をにらみつけた。
「こちらにもこちらの事情がありますので、少しばかり相手をさせていただきます」
 そういって神裂は、"魔術師"として刀を抜いた。
 申し訳ありません、『上条当麻』と思いながら……。
 PM10:19、終了

 PM09:51
 上条当麻は魔術師が逃げて回っていることも知らず一人、夜の町を歩いていた。
 新聞の記事を読んで一時間、書いてあった内容は単純な話。魔術師と名乗る集団が学園都市を襲い、一部の能力者たちが学園都市を守ったというだけだ。
 上条はこの記事を読んで感じたことは特にない。能力者のリストには自分の名前と美琴の名前、あとは白井黒子、一方通行など『上条当麻』を中心とした名前が載っていた。
 過去に偽海原ことアステカの魔術師、エツァリが『上条勢力』というものが存在すると言ったことがあるが、学園都市を守った能力者のほとんどはその『上条勢力』に名前を載せていたメンバーであった。もっとも一方通行は『グループ』として活動していたので、『上条勢力』に属していなかったが。
 そして今回の事件で一番の肝となったのは『上条勢力』が魔術勢力を倒し、学園都市を守ったということだ。これが意味するのは『上条勢力』がどれほどの力を持つかを、科学・魔術両サイドに示したということを意味する。
 それにより、魔術サイドは『上条勢力』を危険視し、魔術師の刺客を学園都市に派遣する勢力が急激に増えた。その結果、魔術の存在が知られることとなり、科学と魔術の境界はほとんど崩壊していた。
 しかしそんなことを知りたくとも知ることができない記憶を失った上条当麻は、変わってしまった学園都市の変化などにも気づけず、のん気に近くのコンビニへと向かっていた。
「学園都市の夜って、こんなに静かだったか?」
 が、ホテルとコンビニの境目の距離で町の変化に気づいた。
「………人の気配が、ないのか?」
 ホテルを出た時はそれなりに人とすれ違ったが、コンビニへ近づいていくほど人は少なくなり今は気配すら感じられない。といっても、上条は人の気配を察する技術を持っていない。その上条が人の気配を感じないということは…。
「戻った方が、いいのか?」
 冷静に考えれば、この先を進むのは危うい。人気がどんどん少なくなっていく中をさらに進むのは危険だと、直感的にわかるものだ。だが、上条は知っている。いや、"知っていた"。
(この先に…いるのか?)
 そう思ったとき、ドーン! と大きな爆発音が聞こえた。そして、その音がスタート合図だったのかその方向へと走った。爆発音に走った理由や戻る理由など、すでに上条の頭の中にはなかった。唯一の頭にあったのは…。
(まさか…?! 美琴??)
 何故かその名前が上条の頭によぎっていた。


 PM09:57
 御坂美琴と白井黒子は、まだ走り続けていた。
 地下の天井を壊して作られた空洞から魔術師を追い、地下街を走りぬけ、外に出た魔術師を初春たちのサポートで追いかけてきた。そして来たのは、白井が最初に来たビルの前であった。
「警備員が……いない?」
 白井が驚いたのはその点であった。ここで爆発があってすでに一時間が経つが、現場に残ったのは立ち入り禁止の黄色いテープだけと警備員の車。そこには人の気配がまったくしなかった。
「固法先輩……これは?」
『あ、あたしにも……わからないわ。警備員からの連絡はないし…初春さんの方は』
『いいえ。そんな情報はいっさいありません』
 情報にない事態。『超電磁砲』はポケットのあったコインの感触を確かめた。直感的に、魔術師はここにいると判断したのだ。
 美琴はいいわと言って、白井を置いてビルへと歩いていく。テープを潜り抜け、真っ暗な明かりのないビルの入り口へと進んでいくと、お姉様という白井の声に気づいた。
「お姉様。一人で先走っては」
「黒子。行くわよ」
 美琴は空いていた入り口をくぐり先へと進む。真っ暗で人気の感じられない大きなビルは、まるでホラーゲームの舞台さながらの雰囲気を持ち合わせていた。ところどころにある、破壊の後はさながらホラーの演出に見えなくもない。
 明かりがないがそれは持っていた懐中電灯を使えばなんとかなった。美琴は懐中電灯であたりを照らしながら先へと進んでいくと、大きなエントランスへと出てきた。
「黒子。アンタ、ここに来たわよね? 変化とかある?」
「うーん……今のところはありませんわね。来た時と変化はありませんの」
 と白井は思い出しながら美琴の後に続いていく。美琴は念のために、ポケットからすでにコインを取り出している。電撃で時間を稼ぎ、すぐに『超電磁砲』を打ち出せば問題はないが、今すぐ撃てるようにと準備に越したことはない。
『白井さん。ちょっといい?』
 ふいに白井の携帯から固法の声が届く。白井ははい、なんでしょう? と美琴にも聞こえるように答えると、気づいた美琴は歩くのを止め、白井の方を向いた。
『警備員に聞いたんだけど、その場所を撤退したなんて報告は受けてないそうよ。しかも、連絡も取れないらしいわ』
 美琴と白井はその言葉が意味することに気づいた。
 ここに魔術師は来た。そして、魔術師が警備員をこの場から消したのだ、と。
「わかりましたわ。また何かわかりましたら、教えてくださいませ」
 そういうと、白井は通話を切り電源も切った。電池切れが寸前ですの、と白井は言って美琴の横に並んだ。
 二人はすでに感づいている、ここに魔術師がいて、きっとここが最終地点であった、と。


 PM09:59
 美琴と白井が階段を登って上に上がってくる最中、上条も実はこのビルにいた。
 爆発音に気づき、走ってきた先はこのビルであったため、立ち入り禁止のテープをくぐってここまで登ってきた。エレベーターなら楽であったが、入り口の悲惨な跡と人気のなさにそれはダメだと直感し、一段一段、階段を確実に登っていく。
「ったく。一体何階建てなんだ、このビルは」
 長い階段を登り続け、上条は何階かの標識を見ると46階という文字が目に移った。少なくとも、階段はまだまだ続いていそうであり、気が遠くなりそうだった。
 だがそれを知りながらも上条は歩みを止めなかった。どんなに疲れようが登り続け、最上階へと向かうことが今の自分のゴールのように思えたのだ。
 上条は一階一階進むごとに、自分の疲労が溜まっていくのがわかった。鈍った身体のツケが、ここでやってきたのだ。それを知らない上条はそれでも登り続けた。座りたい、休みたいと思いながらも、一段、また一段登っていく。
 そして、そんな作業が続いていく中、53階にたどり着いた時、変化に気づいた。
「…………火?」
 階段の先にあったのは小さな火。今にも消えそうなほど小さかったが、その熱は未だに健在であった。触れたらやけどどころではすまなそうな火は、階段を進むごとに多くなっていく。
 階段の端や壁についている火は一歩間違えれば火事になりそうなのに、回りには燃え広がっていなかった。そこに上条はこの火の疑問を見つけた。
「この火、もしかして作られたものか?」
 考えてみれば単純なことだ。このビルで火が燃え広がったら、全体に及ぶはず。だというのに、階段を登るたびに大きいかつ多くなっていく火は燃え広がることもなく、その場にとどまり続けている、自然に生み出されたものならば、火事にもなるはずなのにならない。
 つまりこれは自然ではなく人工的に、能力者か魔術師が作った火に違いなかった。
 上条は自分の右手を開いたり握ったりして見た。『幻想殺し』、もし考えていることがそうであるならば、右手に触れた瞬間、火は消えるはずだ。だが例え本物の火であろうとも、大きな火でもなければ軽いやけどで済むだろう。
 やってみるかと決断すると、上条は恐る恐る火に右手を近づけてみる。熱さはいまだ健在であり、火とはいえ勢いも消えていない。だが試すに越したことはない。
 右手を伸ばし、火に触れる寸前、熱さに怯み一瞬だけ躊躇した。が、それも一瞬だった。


 PM10:05
 時刻はついに十時を突破した。美琴と白井は階段を登りながら、周囲への警戒を怠らなかった。
 上条と同じ理由でエレベータを使わず、走って階段を駆け上っていく二人はそれなりの速さで一階一階を登っていた。白井には『空間移動』があったため、体力はそれほど消費していないが、美琴は意外にも体力を消費していた。
「お姉様、大丈夫ですの?」
「はぁ…はぁ……これぐらい、どうってこと」
 息が上がりながらも、美琴は威勢を張って答えた。だがどう見ても、疲れ切っているのがわかる。それでも白井は何も言わず、そうですかと苦し紛れに答えた。
「はぁ…それよりも…はぁ…さきに行っても」
「お姉様。寝言は寝てから言え、という言葉を知っておりますか? 今のお姉様の状態を見て、放って置ける状態ではありませんの」
 白井に言われて、美琴はそんなことと言おうと思ったが、上がった息と流れる汗が筒抜けであったので何も言い返せない。さらに白井からの無言の視線に美琴は、ごめんと謝るしかなかった。
「本当なら休んで欲しいのですけど、今のお姉様にはそういっても無駄ですの。ですから、お止めはしませんわ」
「はぁ…はぁ…ごめん、黒子」
「いいえ、お気になさらずに。ですけど、ご無理はなさらずに。このあとには魔術師との戦闘が控えておりますので」
 美琴はそうねと答えながら、階段を登り続ける。全力で走り続けた身体はきっと戦闘ではあまり役には立たないかもしれないと、本来の『超電磁砲』の姿とはかけ離れているような弱さを、白井は感じられずにはいられなかったが、やはりそれも唇をかみ締め、飲み込んだ。
 今にも崩れそうな膝と流れ続ける汗は、上条のためのもの。美琴とずっといた白井はそれを最初から見ているが、慕う者としても大切な友人としても今の自分には何も出来ない。
 地下からずっと気づいていたが、きっと美琴を止められるのは上条だけだ。しかし逆に言うのであれば、止められなくなる可能性すら与えてしまう可能性すらあるのも上条だ。だが上条本人はこのことに気づいていない。そして、気づかれてはいけないと美琴はこのために、自分を犠牲にしている。
 八方塞、と白井は思いながら、自分の慕う美琴のあとを追う。今は40階、情報ではこのビルは60階建てらしく、長かった階段も次第に終わりを迎えそうだった。大体このペースで行けば、10分には60階にたどり着いているはずだ。そして、長かった逃亡もここで終わりを向かえ、あとは魔術師を二人で協力して倒すのみ。
(あと少し……あと少しで今日が終わる。いえ、終わらせないと…お姉様が)
 白井はこれで終わって欲しいと心で祈りながら美琴の後を追った。つらそうな美琴を見るのは、そろそろ限界であった。


 PM10:08
 最上階の60階。この上にはまだ屋上があるが、この階段からはいけない。しかも、初春たちがこのビルを衛星から見ていたので、屋上に人影がいたら目撃しているはず。
 白井は電池切れ寸前の携帯の電源をつけ、初春に連絡を取ってみた。今は情報が欲しい、美琴も白井も同じだった。
「初春、このビルや魔術師について変わったことは?」
『特にありません。それに何かあったら、御坂さんの携帯に連絡する気だったんですけど』
「それぐらいわかってますわ。それよりも、本当に何もないんですね?」
 白井が念を押すと、初春も隣にいるであろう固法もないと言った。そうなるとここが終着点。
「わかりましたわ。初春、今は最上階ですの。もしここにいなかったら……。念のために、他の情報も集めておいてくださいますと助かりますわ」
 白井の頼みに、任せましたと初春は答えたのと同時に、白井の携帯の電池は切れた。白井は電池切れになった携帯をポケットに入れ、美琴を見た。
「お姉様、ここにいなければ」
「うん、わかってるわ。それよりも、行くわよ」
 と美琴は白井に声をかけた…瞬間。
「――――なっ」
「ッ!!?? これは…?!」
 声をかけ終えたのと同時に、上から何かを乗せられているような重量感とともに体中を見えない鎖で縛られたように束縛され、二人は動けなくなってしまった。魔術、と思ったときにはすでに遅く、二人は早くどうにかしないとと思う焦りと、気を抜いてしまったと思う自分の不甲斐なさを感じていた。
 白井は自分の能力でなんとか切り抜けようと思い、美琴を置いて一つ下の階に『空間移動』した。のだが、『空間移動』が終わったのと同時に、また同じような重量感と束縛が白井を襲った。
(どういうことですの!?)
 白井は冷静にこれを分析に、場所と範囲が広がらなさそうな50階まで下がり、階段途中にある折り返しの床に『空間移動』した。
 だが『空間移動』が終了した際の結果はまた同じであった。
(なんで…ですの!?)
 白井は魔術をよく知らない。そのため、拘束されているのはどんな魔術なのかも、どのぐらいの範囲なのかもまったくわからない。しかも術式や起点となる存在も、何を用いられたかもわからない。
 だから、白井だけではなく美琴も気づけなかったのだ。
 "入り口から存在していた、このビルを覆うように配置されたルーンの刻印の存在"を。


 PM10:09
 白井が『空間移動』した同時刻、美琴は一人になった60階の通路で一人、見えない何かに当たるように電撃の槍を無差別に放っていた。
 暴れ広がりあたりを食い散らかしていく雷の槍は、腹をすかせたライオンのように獰猛で当たったら大怪我、場所によっては即死確実のものであった。当然、美琴も殺人的な威力で放っていることを理解していたが、ここには人気がまったくなかったのでそれはは気にする必要はなかった。
(どこ!? どこにあるの、"花"は!?)
 美琴はこの魔術の起点が、白井から話された『ガラスの花』だと思っていた。だが白井を殺そうとしたあの花は、爆発だけの代物である可能性もあった。でもこのような状況ではそんなことを言っていられない。それにもし『ガラスの花』がこの近くにあったら、美琴の死の可能性もありえたからだ。
 そのため、デリケートや御しとやかにとは無縁の荒々しい雷の獣を、美琴は容赦なくあたりに暴れさせ続けた。当然のことながら、全力で走り続けた体力では、長時間の使用はほぼ不可能であったし、もしものことを考えて温存したほうが良いため全ての力を使い果たせない。
 こうなると同僚の白井任せにしたいが、魔術に疎い白井にもきっとこれの解除は難しいはず。そうなると、自分で何とかするしかないのが、今までの経験上での最良の手段だった。
「はぁ……はぁ……久々に……きついわね」
 かつて上条当麻と戦った時も体力が切れ負けたことがあるが、今は魔術師という存在の相手と命の危険があったため、それよりもきつい。身体も精神も、極限状態だということが十分にわかる。
 それでも、美琴は能力を使い続けた。
 自分はまだ死にたくないし死ねない。せっかく会えた人がいるのに、今度は自分がそれに会わせてしまうのは耐えられないと、自分を奮い立たせ、能力を出し続けた。
「はぁ…ま、だ……はぁ…死ね、ないわよ」
 上条当麻…こんな極限状態でも美琴は忘れない。そう、自分を犠牲にしてもと思っているが、死ぬことは出来ない。死んだら…………美琴はそのことを十二分に理解していた。
 だからまだ死ねない。守るといっても死ぬためではなく、一緒に新しい思い出を、好きな人と一緒に楽しく過ごせる日々を彼女は…。

「なるほど。それが噂の『超能力者』(レベル5)ですか」

 という声とともに、美琴を拘束していた魔術は解除され、身体が自由になった。それがわかったのと同時に、美琴は声の方向を向き、地面を蹴って距離をとった。
 相手は闇の中からだったため、姿は見えない。いや、魔術と言うもので見えなくしているかもしれないと思い、美琴は警戒をして自分の周囲に電撃を纏わせ、電撃の結界を作った。
「アンタが…魔術師か」
 はい、と言う声は女性のものであった。だが魔術師と認めたということは、敵!
「それじゃあ、アンタを捕まえればおしまいね」
「いいえ。それは違います。いや、捕まえられないと言うべきでしょうか」
 その言葉には自信や過小評価はなく、真実を言っているだけだと思わせる何かを感じられた。美琴はポケットからコインを取り出し、右手の親指に乗せた。
「『超電磁砲』ですか。なるほど、そちらがその気ならどうぞ。それと、私はあなたを攻撃する気は"ありません"ので安心してください」
「ッ!! 舐めてくれるじゃない! だったら『超電磁砲』を見せてあげるわ!!」
 という声とともに、美琴の周りの紫電は火のように燃え上がり、親指のコインは『超電磁砲』として、闇の中の魔術師を貫くために放出された。

 そして、『超電磁砲』は闇の中の相手を貫いた。

 その衝撃で廊下は抉られ、床に真っ黒な跡が残された。行き止まりの壁は穴が開いたらしく、外の風の音が美琴の耳にも届いた。相手にはなった『超電磁砲』の威力だが、一応手加減はしたが直接当たったら即死だろう。だが相手は魔術師、何があるかわからない。
 美琴は『超電磁砲』をもう一発撃つために、コインを取り出すと同じように親指に乗せ、射抜いたはずの相手に再度向けた。そして、親指に乗せ構えた直後に、背後からお姉様と言う声が聞こえた。
「黒子…無事だったのね」
「ええ。それよりも、さきほどの衝撃…まさかお姉様」
 美琴は振り向かずに頷いた。だが、"やっていない"。
「お見事です…というべきでしょうか。『超電磁砲』の御坂美琴さん」
 射抜かれたはずの魔術師は、さも同然に歩いてくる。少なくとも、わかってはいたがこうも何もないと、美琴も動揺を隠せなかった。コツン、コツンとリズムを刻むように近づいてくる足音に、美琴は『超電磁砲』を、白井は金属の矢を指に挟み、やってくる魔術師をにらんだ。
「ご紹介が遅れました。神裂火織と申します」
 そういって出来てきた魔術師、神裂は魔術師とは言いがたい半そでのティーシャツに片方だけ太ももが見えるジーンズと言う格好であった。だが、彼女の手には刀。それも自分たちよりも大きな長い日本刀を持っていた。
 美琴と白井はそれを見て驚いたがそれも一瞬だけ。二人は出てきた相手を睨みつけ、攻撃の機会を狙っていた。
「魔術師ってもっと頭脳的なやつかと思ったけど、アンタは違うみたいね」
「ですけど、これでも立派な魔術師です。なのでお間違えのないように」
 神裂は目を閉じて、刀を構える素振りを見せた。美琴と白井は、来る! と直感し、二人も構えた。
「あと勘違いしているようですが、今回の事件の魔術師は私ではありません。私はその魔術師を追っていた一人です」
「それを…信じると思いですの?」
 白井の言葉に、いいえと神裂は答えた。
「………仕方ありません。出来れば、話し合いで解決したかったのですが、どうもそうにはいかないようですね。『超電磁砲』と……」
「そういえば紹介がまだでしたわね。風紀委員の白井黒子と申しますわ。そして、風紀委員の権限の元、魔術師のあなたを逮捕させていただきますわ、神裂火織さん」
「やはり、この場で会うべきではありませんでしたね。出来ることならもっと穏便な場所で会うことが出来れば、よかったのですが」
 というと、神裂は閉じていた目を開け、能力者の二人をにらみつけた。
「こちらにもこちらの事情がありますので、少しばかり相手をさせていただきます」
 そういって神裂は、"魔術師"として刀を抜いた。
 申し訳ありません、『上条当麻』と思いながら……。
 PM10:19、終了

<第5話-1へ>
PR

2010/09/16 00:03 | memories

<<memories 第5話-1 | HOME | memories 第4話-1>>
忍者ブログ[PR]