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2024/05/05 07:16 |
memories 第5話-2
いちゃいちゃの回と黒子を混ぜての回。
ここで出てくる『上条殺し』(カミジョウブレイカー)はお気に入りですwww



 結論から言うと、上条当麻は今、人生最大の危機に初めて直面している。
「……………………」
「……………………ねえ」
「……………………なんでせうか?」
「……………………何か言ってよ」
「……………………何故、メイド?」
 上条当麻はホテルでメイド服の彼女と共にベットに腰をかけている。
(危うい! 幸せなのだが一歩間違えれ、試合終了以前に試合前に出場停止を喰らいそうな勢いで、危うい!)
 彼女である御坂美琴は、平均的に考えれば平均値の倍以上のスタイルを持つ少女だ。上条が知る内面を覗けば、外見での隙はほとんどない。というよりは隙を探すほうが辛いのかもしれない。
 まさに絵に描いたとはこのことを言うのだろう。もっとも、上条はそんなことを冷静に考えられるほどの理性はほとんど残っていないが。
「………………………いや、なの?」
 ただでさえ似合っているのに、彼女である事実が上条をより意識させるとは美琴は気づけるわけもないだろう。そこに、美琴だけが持つ『上条殺し』(カミジョウブレイカー)という謎の能力が備わり、上条の理性は生き残っていることが不思議なほどしか残っていない。
 しかし、皮肉なことに異性である美琴にはそんなことはまったく理解できず、逆に上条を追い詰めていくとは思いもしなかっただろうし、まったく気づけなかった。
「その………し、仕方ないのよ。土御門のやつ、洗濯するって言って制服持ってちゃうし……それに、く、黒子もいるんだし」
(やめてください! やめてください!! 小動物のように可愛く話さないでください!!!)
「だから、その……か、彼氏に頼むしか…って思って………その、えっと……ダメ?」
 泣きそうなんだけど泣いていない瞳と赤く染まった頬、そして見上げてくる視線。
 これが……上条当麻崩壊の決定打だった。
「………御坂。いや! 美琴ッ!」
 いきなり立ち上がると、上条は美琴の両肩に手を置き、美琴の顔を見つめた。その視線に美琴は目を少しだけ逸らしながら、何? と聞いた。すると上条は、真顔になって真面目に言った。
「今から俺のことを"ご主人様"と呼んでくれ」
「………………………………………………………………え?」
「だから"ご主人様"だ、"ご主人様"。メイドさんがやる典型的な呼び方の"ご主人様"だ」
 上条当麻、鉄壁と言われた理性は『上条殺し』(カミジョウブレイカー)により崩壊。ついに暴走を始めた。
「ちょっ、ちょっと! アンタそんなキャラじゃ―――」
「ご主人様!! だ。美琴」
 真顔で、しかも至近距離で言われてしまったため、美琴は引けずに上条に押された。
「ご、ご主人さまはそんなキャラじゃないでしょ!!?? って、こんなセリフ、恥ずかしすぎるわよ!!!」
 穴があったら潜りたいと思うほど、恥ずかしいセリフを言ったことを後悔した。そして、それに頷いてしまった自分に自己嫌悪した。
(ばかばかばか、私のばか!! これは、舞夏が言う役でしょう!! なんで私なんかがこいつなんかのために…)
 一方、理性が崩壊しキャラクターが暴走し始めた上条は、彼女にご主人様と言われ、感動のあまり泣きそうであった。
「ちょ、ちょっと?! なに、泣きそうになっているのよ!!」
「上条さん、こんな素晴らしい彼女を持てるなんて感激ですとつい感動のあまり涙が」
「なななななななにいっちゃてるのよ!!??」
 もはやアンタ誰!? 状態であった上条に美琴は昨日は聞けなかった嬉しい言葉に顔が緩みそうであった。そして、心のうちでは色々なものが混ざり合い、暴走寸前だった。
「美琴たん、萌えーとかそんなものではなくてですね。上条さんは美琴たんの全てをものにしたいと思うほどですね。はい、わたくし上条当麻はあなたを求めてます」
「もともともともとめてるって!!?? そそそそそそそそそんな、はやいはやい!!! まだこんな時間から…じゃなくて、いろいろと早くて心の準備が……じゃなくて!!!」
「美琴たんには拒否権はございません。美琴たんには、鉄壁だった上条さんの理性を崩壊させ、よくわからないキャラにした責任を取ってもらわなければなりません」
「せ、せき………あ、うぅ……その、痛いことは……その、いや、だな」
 御坂美琴、暴走のあまり自分で理性を崩壊させ、上条の仲間入り。
「安心なさい! 上条さんが優しくしますよ」
 というと上条は美琴を優しくベットに押し倒した。美琴は押し倒されたことを快く受け入れ、当麻と囁いた。
 もはや雰囲気は、男女の営みの雰囲気に変わっていっている。時間帯も朝であるし不謹慎かつ破廉恥だと知っていても、二人はもう雰囲気を作り出し自分で飲み込まれている。
「美琴……」
「当麻……」
 お互いに呼び合い、目を閉じて唇を合わせる。そして、二人は愛の誓いを……、

「くっく…くっくっく。ふっふっふっふっふ………天誅!!!!!」

 妨害するのは白井の役目だった。
 唇を合わせる直前、上条はいきなり出現した白井からわき腹にドロップキックを喰らい、壁に吹き飛んだ。当然のことながら、吹き飛ぶほどなので手加減は一切なしの全力である。
「さて上条さん。これはどういうことは説明していただけるかしら?」
 笑いながら近づいてくる白井であったがまったく笑っていない。むしろ、あの美琴でさえも震えているほど怖い雰囲気を出していた。
「くくくくくくくくくくくろこ!!!???」
「お姉様に関しましてはあとでじーーーーーーっくりとお話しましょう。もちろん、全力で」
 笑っている。でも顔だけで体中から怒りやら恨みやら色々なものが見えていた。まさに、最終形態:黒子マックス状態であった。
「いってて。あれ? 俺は何をしてたんだっけ? ん? お、起きた……の、か?」
「ええ。貴方とお姉様が大人の階段を進み、お姉様が傷物になる前に起きましたわ。まあそんなことはさておき。上条さん、初対面の相手ですので、ご紹介させていただきますわ」
「えっと………あの……これは…いったい」
「わたくし、白井黒子と申します。そして、上条さん。お姉様を傷物にしようとした罪、どれだけの大罪かわかっておりますの?」
 何度も言うが笑っている。ここに出てきて、今の今まで顔は笑っているが、それ以外は笑っていない。そして上条には怒りと恨みと殺意を向けているのが、本人だけではなく美琴すらも理解できた。
(助けたいんだけど、あんな恐ろしい黒子、見たことないわ!!!)
「あのー白井さん。わたくし、上条当麻は美琴と一緒にベットで腰をかけた辺りまでしか覚えてませんのですが」
「ベットに…腰を……くっくっく。しかも、お名前で呼んでおりますの……くっくっく……ふふふ……ふっふっふっふっふ」
 A級のホラー映画を見るよりも怖い笑い声が部屋中に響いた。これをお化け屋敷で流したら、大ヒット間違いなしなほどの恐怖感を上条と美琴は感じていた。もちろん、望んで聞きたい笑い声ではなかったが。
 そして、白井の笑いはふと止んだ。
「上条さん。わたくし、勘違いしておりましたの」
「か、かんちがい……ですか」
「上条さんにならお姉様を任せてもいいかなと、少しばかり思っていたのですけど………どうやら、お門違いだったようですわね」
 言い終わると、白井は金属の矢を指に挟み、悪党のように黒いオーラを出しながらニヤリと笑って上条の元に近づいてくる。
「さて、上条さん。最後に言い残すことはありますか? わたくしとて人間ですから、最後くらい聞いてあげますわよ」
「ええっと………………これは……不幸……ですか?」
 そして、上条の目の前に着いた白井は、上条の質問に満面の笑みで答えた。
「ええ。人生最高の不幸ですの」
 この後、上条当麻は誓った。
 鉄壁の理性ではなく、『幻想殺し』並みの理性を作ろう、と。そして、二度と理性を崩壊させまいと強く誓ったのだった。


 時間と舞台を変えて、昼の一時、某ファミレスにて。
 昼のこの時間はまだ店は空いているとは言えない。ピーク時は大体三十分前の十二時半をずらしてくる客も多いため、満席または空席1か2の状態であった。
 上条と美琴、白井の三人はホテルをチェックアウトしたあとファミレスを入った。目的は当然、昼食を取ることなのだが、白井の目的はそうではないらしい。
「それではお姉様。上条さんとお姉様のご関係について、詳しくお話してもらおうと思います」
 注文後、白井はそのように切り出し、向かい側に座っている上条と美琴に話の先を促した。
「この際だしいいけど…どのあたりからがいいんだろう」
 美琴は記憶を失う前からいいのか、記憶を失った直後から話したほうがいいのか、上条の横顔を覗き込みながらどちらにするか考えた。
 ちなみに、今の美琴は綺麗になった常盤台の制服姿であったため、上条が崩壊することはもうない。だが対上条専用スキルの『上条殺し』(カミジョウブレイカー)は未だに健在のため、絶対とは言い切れないあたりは危うかったのだが、今はその可能性はないはずだ。 というよりも、次にあれが発動したら理性を飛び越えて大人の階段へレッツゴー! の悲劇になりそうなので、もう勘弁して欲しいのが上条の本音である。もっとも、美琴自身には自覚がないため、願おうとも叶わないのが今の現状である。
「うーん。記憶の失う前の関係からか、失った直後の関係からか。黒子はどっちを詳しく聞きたいの?」
「失う前のことは少々ご存知ですしわたくしは失った直後でいいのですけど、せっかく上条さんがおりますので、失う前からお話してはどうですか?」
「失う前か……だったら、八月三十一日からでいっか」
 そういって、美琴は自分の思っていた限りの関係を上条と白井に話し始めた。
 八月三十一日の嘘デートから始まり、大覇星祭、罰ゲームに一端覧祭。冬にはクリスマスと何故か合同で行った年越しパーティー。美琴は上条との思い出を話しながら、あの時はどのような関係であったかを詳細に話した。
「―――なるほど。では記憶を失う前は噂どおり、相変わらずだったようですわね」
「本当よ。ああー思い出しただけで腹が立つわ!」
「そ、それよりも起きた後のことを」
 その怒りの矛先が今の自分ではないことを祈りながら、上条は美琴に先を促した。その時、恐ろしい形相でにらまれたが決して自分に対してではないと思い込むことにした。
「それじゃあ次はこいつが起きた時の話か……あんまりいい話じゃないんだけどね」
 そういうと美琴は机の下から上条の手を握ってきた。いきなりのことで驚いたが、どこか辛そうな横顔を見て、上条はその手を優しく握り返すと、少しだけ安心したのか美琴の手の力が和らいだ。
 そして、三月二十九日の起きた日の出来事から今までを美琴は語った。途中、いくつか省略があったが、この話のことは白井は初めて聞かされていたので気に留めることはなかった。
「―――これでおしまい。それで今日、この場で、というわけ」
「なるほど、よくわかりました。ええ、ええ! よーくわかりましたの!!」
 話し終わると白井は席を立ち、上条さんと言って神妙な面持ちで上条を見た。先ほどまでとは違う真剣な表情に、上条も少しばかり顔を引き締めなおすと、白井は視線を逸らさずにある質問をした。
「貴方は以前、誰だかわからないですが、あるお方とある約束をしました。もう忘れてしまって思い出せないようですけど、わたくしとしては今の貴方にはそれを守るほどの決意があるかを聞かせて欲しいのですの」
「ある…約束?」
 白井は頷くと、上条の隣にいた美琴を一瞬だけ横目で見た。美琴も何を言っているのかわかっていない面持ちだったので、白井は美琴にこのことで邪魔をされないことを確信し、話し始めた。
「九月十四日、今も鮮明に思い出せますわ。あの時、貴方は自分の命も顧みず、わたくしを助けてくれましたの。一歩間違えれば死んでもおかしくない状況でありながらも、貴方はその右手でわたくしを助けるためだけに命を張ってくれましたの」
 九月十四日のことは美琴も嫌な記憶だが今も覚えていた。くそったれな実験のせいで後輩を傷つけた日。結漂淡希の件での一日だった。
 白井は美琴のかすかな変化に気づいたが、上条はそれに気づいていなかったようだったので、何も言わず話を続けた。
「その時、わたくしとあなたは他人同士。だというのに、貴方は自分が死ぬかもしれないという状況を怖いといいながらも、わたくしを助けてくれましたの。上条さん、今の貴方にこの質問をするのは間違っているかもしれません。ですが、お答えください。貴方は誰かのために命をかける覚悟はおありですか?」

「ある」

 時間にして一秒あったかなかったかの即答であった。そのあまりの早さに、隣にいた美琴も質問したはずの白井すらも度肝を抜いた。それから少しして白井はその理由を聞いた。
「……なんでですの?」
「なんでって言われてもな。誰かの命が危ないって言うなら、助けるのが普通だろう。まあ逃げるにこしたことはないけど」
「貴方は…貴方はそんな理由でいいのですの? そのせいで死ぬかもしれないのに」
「大丈夫じゃねえのか。それに死なないと思うし」
 上条は特に疑問を抱かなく答えた。人を助ける理由も死なない確信も、上条は大丈夫だろうとありきたりな確信で言い切った。
「………………上条さんは、上条さんのままなのですね」
「もうそのセリフは聞き飽きたんだが……まさか白井も美琴と同じイメージを持ってるのか」
「いいえ。ですが、貴方の覚悟は変わらないようですわね。それを聞いて安心しましたの」
 白井は安心したように表情を崩し席に着いた。そして、氷の入ったお冷やを一口飲んだ。
「上条さん。貴方はあの時、わたくしを助けてくださいました。ですが他人であるわたくしは、上条さんの約束に助けられたようなものですの」
「俺の約束…? それって最初に言ったある約束ってやつか?」
「ええ。そしてその約束は今もまだ続いているのか、お訊きします」
 白井はそこで言葉を区切ると美琴を見つめた。先ほどから会話に入れず、自分だけ聞く役になっていた美琴であったが、いきなり白井からの視線を受け、一瞬だけ驚いた。それからしばらくして、美琴から視線を逸らしもう一度上条に戻すと、白井は約束を言った。
「上条さん、貴方はあるお方と"お姉様とお姉様の周りの世界を守る"と約束したそうですが、記憶がなくなった今も、その約束は続いておいでですか?」
 白井のまっすぐな視線が上条に答えを促している。だが、それは聞くまでもない答えだった。
「ああ、"美琴と美琴の周りの世界を守る"って約束をしてたんなら、まだそれは続いてるはずさ」
 そういって、嬉し恥ずかしそうに顔を赤く染める美琴を見た。
 いつだかわからないが、誰かにその約束をしていると白井は言った。ならばその約束を守る、守らなければならないと思った。そのあるお方が誰なのかわからないが、約束したのであればきっちりと約束を果たさなければならない。それは自分でも美琴でもなく、そのあるお方との約束であるから。
 上条は『上条当麻』が残した一片に触れ、少しだけ胸の奥が熱くなった。記憶がなくても、とても強い繋がりが残っていた。しかもとても大事な約束が残っていたことがどうしようもなく嬉しかった。


 料理が運ばれてきたのを気に緊張感があった雰囲気は自然と解け、雰囲気は食事を取ることにした。
「アンタはハンバーグで、黒子はグラタンか」
「そういう美琴はミートソースか。しかもさりげなくお子様ランチを頼んでるし……意外とお子様なのか?」
「お姉様の趣味は、大概お子様ですわ。上条さんも、お子様ランチについてきたカエルをご覧になったでしょう。一体、いつになったらカエルを卒業するのでしょう。黒子は毎日毎日、一生卒業できない気がして不安ですの」
「余計なお世話よ! それとカエルじゃなくて、ゲコ太!!」
「…………………」
 上条はお子様ランチの付録としてついてきたゲコ太なるものを見て、白井の呆れた意味を理解した。確かにこれはお子様だと思ったが、意外と怒っていたので口に出すのはやめて、ナイフとフォークを取って熱々のハンバーグにナイフを入れる。
「それだけじゃありませんの。下着の趣味も小学生ですし、可愛いの感性も低学年ですし、パジャマなんて幼稚園児が着ていそうなものを着ておりますし。お姉様は一体いつになったら大人になるのでしょうか?」
「やかましいわ!!! それとこいつがいる場で下着のことは言うな!!!」
「……………………」
 適当な大きさに切った一切れのハンバーグを、上条は無言で食べた。熱々ながらも、肉汁とデミグラスソースと綺麗にマッチしており美味しい。少しだけソースの味が濃いような気が、ここはファミレスだ。そんな細かいことに力を入れている高級店とは違うので文句はない。
 だが騒いでいる二人は、お嬢様方。もしかしたら、味に不服を訴えるかもしれないのが少々不安な上条である。
「わたくしの苦労も知らず、お姉様はどんどん置いてきぼり。黒子は、小学生の趣味を卒業できないお姉様の将来がとてもとても不安ですの!」
「そこで泣くな!! しかも、将来を心配されたくないわ!!! それに、私の将来はもう決まってるのよ!」
「……………………」
「って、アンタはいつまで無視してんのよ!!!」
「うぉっ…!?」
 美琴はさきほどからスルーを敢行している上条に、小さな電撃を放った。食べていた上条はいつものように反射的にそれを打ち消すが、持っていたフォークは少し焦げてしまった。
 上条は焦げてしまったフォークを、机に置くといつものように美琴に抗議し始めた。
「こら御坂! いきなり電撃を浴びせるなって何度言えばわかるんだよ!」
「うるさい! 無視するアンタが悪いんでしょうが!」
「なんだその理由! 俺はそのためだけに、食事を邪魔され、しかもフォークまで使い物にならなくさせられたのかよ!」
「だったら無視しないで話に参加すればいいじゃない! それに私なんてまだ料理に手をつけてないのよ!」
「だからなんだよそれ。さっきから言っていること無茶苦茶だぞ。なあ、白井。御坂はいつもこうなのか?」
「大体そうですわ。いつもいつも、貴方は追いかけてばかり。寮でもずっと貴方のことばかり言って、こちらとしてはストレス種ですの」
 白井は上条と美琴の会話を聞きながら、自分の頼んだグラタンをお上品に食べながら答えた。だが、かすかであるが身体が震えていたが二人は気づかなかった。
 上条はそうかとため息混じりに言うと、店員を呼んで焦げてしまったフォークを弁償すると言って、代わりのフォークを頼んだ。一方の美琴は、上条も白井も会話に参加しないと気づいたため、ため息をついて自分の頼んだミートソースを白井と同様、お上品に食べ始めた。それを見た上条は、二人のテーブルマナーなどに自分との差を感じながら、店員が持ってきたフォークを取ると食事を再開した。
「そういえば黒子。今日はあまりこいつに攻撃しないのね」
「そういえばそうですわね。先ほどのホテルの件以来、ずっと攻撃しておりませんの」
 白井も思い出したように答えるた。今は食事の場であったので、さすがに攻撃はしない。だが美琴に指摘されるほど自分は上条に攻撃していない件については、なんとなくだが見当はついていた。
「多分……上条さんとお姉様の関係を、少しずつですが認めておりますのかもしれませんわ」
 昨日の夜の件を思い返しても、美琴が上条に対する愛情を白井は認めていた。自分には決して注がれない、自己犠牲してまでも異性を愛する愛情は、白井にはどんなことをしても届かないと思い知らされている。美琴を崇拝する白井だからこそ知れた、上条への限りない愛情を、白井は切り裂くことなど出来はしない。
 それに上条には結漂淡希の件と上条が記憶を失うきっかけになった二月の事件の件で、大きな借りを持っていた。白井も美琴ほどではないが、その時のことに負目を感じている。
 だから普段通りのスキンシップが出来ず、一線引いてしまっていた。美琴はその部分に気づいたので、おかしいと感じたのだろう。
「でも……そうですわね。わたくしのお姉様に手を出す若造には、あとできっちりと死んでもらいませんと」
「白井さん、冗談でもそういうことはやめてください。上条さんのライフは0なんですよ?」
「よく言うわよ。私の電撃を喰らって無傷のくせに」
「あんなの浴びたら死ぬだろうが! お前、絶対にそれわかってないだろう?!」
「いいじゃないのよ。どうせ防げるんだから」
「そういう問題じゃねえよ!」
 そして二人はいつものように騒ぎ始めた。白井は、そんな二人のことを放置して、食事を再開した。
 だが上条と美琴は知らなかった。こうしている間に、あの二人がここに到着していたを。

<第5話-3へ>
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2010/09/21 21:38 | memories

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