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2024/05/05 19:53 |
ゼロプラスファイブ 3
今回はドシリアス。原作で言うならば、3巻の第三章"レールガン"に似た雰囲気を出しえており……ってまんまアレンジしたじゃないか、これ(汗)
今回は最後にちょっと話の解説と言うか、私の考えを載せました。ちょっと長いですし個人の考察(戯言)なので見たくない人は見ないほうがよろしいかと。



 一人病室に取り残されてしまった美琴は、何もない空を見ていた。
 時刻は5時を回りすでに夜になろうとしている。冬の夜は日が沈むのが早いため、今はもう夕方と言うよりも夜の暗さが外を支配し始めていた。
 美琴は病室で電気もつけずに外を見ていた。ちなみに電気をつけないのはついていることに気づいていなかったからであった。
「………上条……当麻」
 美琴は自分の思い人の名前を呟いてみた。呟いた感想は、悲しい思いだけであった。
『御坂美琴は上条当麻が好きです』
 過去に美琴は告白のリハーサルと称して、風呂に入って言ったことがある。あの時はお湯の中で言ったため、白井には気づかれず自分でもよく聞こえなかったことを思い出した。言った後は凄く恥ずかしくなって、その後に湯冷めしてしまったオチがあったが今の美琴には一切笑えない過去であった。
「…馬鹿…みたい」
 一言で好きですと言って何が変わるのだと美琴は考えていた。
 美琴が思うに上条のことが好きと言葉で表現しても、きっと上条は答えない。なぜなら上条は自分を選んでもそれは一時的なもの。彼は誰かが手を差し伸べたらすぐにそちらへと行ってしまう。だから美琴が好きだと告白しても、上条はこの生き方を変えない限りは永遠に美琴に答えない。
 でも美琴は上条のそんな部分が好きであることを理解している。そしてそれがなくなると自分の好きな上条はいなくなることも…。
 結局は八方塞なんだと気づくと美琴は自分の想いに笑ってしまった。どんなにアピールしようが、どんなに好きになってもらおうが、どんなに想いを伝えようが、上条は絶対に答えてくれない。
 美琴はそのことに気づき自分の想いはなんなのだろうと穴の開いてしまった心で考えてみる。
「…………」
 答えは一言だけ。自分も上条も……最低なだけだった。
 それでも美琴は上条が好きだった。いや恋愛を知らない一人の少女は一人の少年を好きだと思うことしか出来ないだけだ。
 考えてみれば自分の恋愛感情は上条にだけ向いているのだ。上条に会う前だってたくさんの男を見てきてはいるし、会ったあとも出会いとはいえないが近づいてくる男はいた。なのに美琴はそれらを全部無視して上条だけを見ていたのだ。
 思い返してみれば自分で自分の可能性を潰していた行動は、一人だけしか知らなくていい自分のくだらない独占欲ではないかと美琴は思い返してみた。
 誰かを好きになる機会は一生のうちに何百何千だってあるはずだ。だというのに一人に固執すると言うのは『自分はその人だけでいい』と思う独りよがりな欲望ではないか?
 しかし世間では皆、恋愛をして好きだと告白して結婚する相手は一人と言うが一般的だ。二股や再婚などは置いておいても、男性一人と女性一人が恋をするのが普通。美琴が考えた『独占欲』も良くも悪くもここに至っている。
 だから美琴は疑問に思えるだけで答えを導き出せない。
 自分は独りよがりな独占欲なだけで上条を好きになったのか?
 それとも、普通の恋愛をしているだけなのか?
「……………たすけて」
 自分はどんな恋愛をしていたのかわからないことがとても苦しい。
 押しつぶされそうな胸の圧迫は少しずつ押しつぶされて呼吸するのが少し難しい圧迫へと変わっていく。
 苦しみ悲しみ後悔困惑愛情。喜怒哀楽の全てがコントロールできずに胸で暴れまわっている不快感。何を思えばいいのかさえ今の美琴にはわからない。
 八月二十一日、かつて橋の上でボロボロになっていた過去の自分が今再び戻ってきたような感覚であった。
「……たすけてよ」
 小さな少女は自分の身体を強く抱きしめて呟いた。
 あの時は誰にも助けを求められず一人でいた。妹達を救うために一人で命を落とし、一人で全てを解決しようとした。小さな小さな、でも大きな決意。間違いだってわかっていてもこれしかないとわかっていた苦渋の選択。だというのにまだ会って一日の少年は間違いを殺して自分を救ってくれた。
 何度思い返してもあの時に見た少年も今の少年も強いと思う。どんなことにも右手一つで立ち向かい救ってくれる強靭な意志は、美琴には一生手に入れられないものだ。そして少年が唯一持つ最強の能力のではないか……。
 少年の決意は美琴にはまぶしすぎる。誰にも屈しないまっすぐな姿勢と意思はきっと誰にも届かないもの。どんな聖人がいようともきっと彼に敵うものはいないだろう。もしかしたら神様でさえも彼に敵わないのかもしれない。そう考えると信じたくなってしまう。
 でも今はあの時とは違う。
 心は自分で動かすものであり、時と場合によっては誰かに助けを求めてもどうにもならないときがある。今の美琴は述べたとおり、どうにもならなかった。そしてそれは少年が作り出した幻想が織りなしたものであった。
「ねえ、たすけて」
 少年は自分を救ってくる。どんな絶望にも必ず手を差し出して自分を引っ張りあげてくれる。
 しかし今のように少年が自分を苦しめている状況では少年は自分を救ってくれるだろうか?
 いつものように手を差し伸ばして引っ張りあげてくれるだろうか?
 その答えは、美琴には導き出せない。
 他の誰にも導き出せない。
 導き出せるのはただ一人、あの少年だけだ。そして今の美琴を救い出せるのもあの少年だけ。
「たすけてよ……おねがいだから」
 美琴は自分の身体をさらに強く抱きしめながら、涙を流した。美琴の心はすでにズタズタでいつ壊れてもおかしくなかった。



 空間移動者の白井黒子は決して強い人間ではない。
 信念は持っているがほかと比べれば脆弱で、意思を持ってもやはり脆弱。能力にしても自分だけを守るのが精一杯で誰かを守ることはほとんど出来ない。
 彼女は過去に一度死にかけ自分の弱さを知った人間である。同じ系列の能力者である結標淡希と出会った時、自分の身の程を知り、自分では届かぬ世界を知り、上条と美琴と自分の距離は届かないものだと知った。
 そして白井は上条と美琴の恋路を邪魔できないものだと知っていた。今の彼女に出来るのは二人を結びつけるのに尽力を発揮し、幸せな関係へと戻すことだけだった。それ以上は自分は入ることが出来ない未知の領域であり立ち入り禁止の場所であった。
 空間移動をしながら、持っていた携帯にイヤホンをつけて片方の耳にイヤホンをつけた。それが終わると携帯をポケットにしまうとつけている片方の耳を押さえて、耳から落ちないように支えて上条の部屋へと急ぐ。
 時折耳から聞こえるキーボードの打つ音は初春からのもの。しかし彼女からは連絡は一切ない今、特に変わった変化はないのだろうと判断しながら白井は移動に移動を重ねていき、一ヶ月前と同じように男子寮の玄関までたどり着いたところでポケットから携帯を取り出した。
「初春、状況は?」
「特に変化はありません。今、白井さんのいる一階を見ているんですけどそっちも変化はないみたいです」
 そうというと今回はエレベーターではなく空間移動で上条のいる七階のエレベーター付近に移動した。そして初春と携帯から呼びかけると大丈夫ですと返ってきた。それを聞いて白井は携帯を持ちながらゆっくりと上条の部屋の扉まで向かっていく。
「白井さん。上条さんには失礼かもしれないですけど携帯はつけっぱなしで入ってもらえませんか?」
「? 何かありますの?」
「あ、盗聴とかじゃありません。ただもしもの時にすぐに連絡できるようにと思いまして」
「なるほど。では上条さんに会った時に訊いてみますわ。もし大丈夫だったら片耳にイヤホンをつけますので何かあったらすぐに連絡を」
「わかりました。無理だったらそのまま切ってください。何かあったらこっちからかけます」
「了解ですの。ですけど出られない時のために監視カメラはしっかりとお願いしますわ。上条さんのお部屋には何があるかわかりませんから」
 白井は再度携帯をポケットにしまうと片耳にイヤホンをつけて上条の部屋の扉に立った。
 そしてインターホンのボタンの前で一呼吸おいて、白井はボタンを押す。すると玄関で待っていたのか、すぐに上条が顔を出して入れよと扉を開けてくれた。
 白井は頷くと遠慮せず堂々と入って、靴を脱いで居間へと歩いていった上条の後を追った。そして上条の居間の光景を見て、白井は絶句した。
「上条さん、これは……?」
「ああ、ちょっとあってな。部屋にあるものはあらかた片付けたんだ」
 一ヶ月前とは打って変わって居間の光景は殺風景であった。壁に貼ってあったカレンダーは全て剥がされおり、本来あった白い壁が居間の外側を全て覆っている。さらに置いてあったはずのデジタル時計やテレビがなくなり、本棚や居間の中央にあったはずの机までもがなくなっていた。
 唯一残っていたのは、部屋の端にあるベットと上条のものらしきカバンだけだ。それ以外は一切何もなかった。
「引越しでもなさるおつもりですの?」
「…………………」
 白井の質問に上条は無言の返答を返した。
 否定をしないと言うことは引越しをすると言うことだ。だがおかしい。男子寮の自分の部屋があるはずなのに何故今になって引越しをするのか、上条の部屋の変わり様に白井の中でとても大きな疑問となった。
 そして一番の謎はずっと見張っていたはずなのにいつの間にここまで綺麗になっていたのかだ。
「上条さん。つかぬことをお聞きしますが、ここに戻ったのは今日ですの?」
「ああ、今日の朝方に戻ってきたんだ。それでここの部屋を掃除してたら四時になっちまって。それからしばらくして白井のことを思い出したんだ」
「…そう、ですの」
「それよりも白井はイヤホンなんてつけてどうしたんだ? お前、音楽を聴いて仕事をしてたんじゃないよな?」
 上条に言われて白井はポケットから携帯を取り出して見せた。すると上条は頭をかしげ電話中かと言うと白井は首を横に振った。
「"好きな曲を携帯でとりましたの"。それでここに来る途中に聞いてたんですけど、お聞きしますか?」
 白井は耳に入っていない片方のイヤホンを上条に差し出す。上条はそうだなと頷くと白井から渡されたイヤホンを耳につけた。
「……………………白井、これって誰の曲だ?」
「今年の冬の名曲と名高い曲ですわ。最近CDが発売になりましたのですけど、知りません?」
「あ、ああ。それなら聞いたことがある。十二月の初めからずっと一位を守り続けた曲だよな? テレビでやってた」
「ええ、それですわ。わたくしの友人がこの曲を紹介してくださったのでわたくしも聞いてみたら想像以上にいい曲だったので最近のお気に入りですの。まだ途中だったのでつい聞きっぱなしにしておりましたわ」
 そういうと白井は上条からイヤホンを返してもらうと自分のイヤホンをとると携帯に巻きつけてポケットにしまった。しかし携帯の電源ボタンは押さずに携帯だけを閉じた。通話はまだ切っていない状態であることを上条は気づかなかったようだ。
「それで上条さん。相談事があったのでは?」
「あ、ああ。そうだったな………」
 すると上条は悲しそうな顔をして白井を一瞬だけ見ると視線を床に落とし俯いた。そんな悲しそうな表情を見せられた白井は見られた一瞬だけ背筋が凍る阿寒に見舞われた。
(ど、どうしたん…です、の?)
 上条の表情をまるでこの世の終わりを感じたかのような顔だと白井は表現してみた。
 あまりにも悲しそうであまりにも辛い表情に白井は無意識に胸の奥が締め付けられ心臓のあたりに手を置いた。
「なあ白井。御坂のこと、好きか?」
「え……? お、お姉様のことはお好きですわ。当然ではございませんの」
「そう…だよな。だったら質問を少し変える。白井、これからずっと御坂と一緒にいる覚悟はあるか?」
「どういう、意味ですの?」
 上条は答えないが、無言の視線だけを白井に送った。
 質問をされた白井は少しばかり考えて上条の質問の意味をそのまま解釈することにした。そしてええと頷くと上条はベットに腰を下ろした。
「白井も適当に座ってくれ。なんだったら俺の横にでも座っていいぜ?」
「お断りですの。その場所はわたくしの場所ではございませんので」
「……………………そっか」
 白井は何もない床に座ると上条を見上げた。ここからは俯いていた上条の顔の中身が丸見えであった。
 悲しそうな顔は今にも泣きだしそうな子供を思い出させた。なんでそんな顔をするのか、白井にはわからなかったがきっとこれからのことに関係があるのだろう。白井はそう思って表情のことは訊かないことにした。
「白井は御坂が大事なんだな……」
「というよりもわたくしよりも貴方の方がお姉様のことをより好きなはずでしょう?」
「ああ……そう、だな。そうだったな……」
 上条は悲しそうに笑う。しかし目は一切笑っておらず沈んでいた。
「なあ白井。もし御坂のことが好きならば、これからも御坂のことを頼む。あいつと一緒にいてやって、あいつを支えてくれ」
「言われなくともそのつもりですの。だからわたくしは貴方の手助けにきているのですから」
「……………そっか」
「………………なんで」
 そんなことをと言う前に白井は言葉を飲み込み視線を逸らした。
 上条の悲しそうな表情を見ていられなかった。今にも消えてしまいそうな悲しそうな表情はまるで美琴を見ているようで見ていることに耐え切れなかった。
「幻想殺し……イマジンブレイカー言うんだけど、俺の力はどんな異能も殺してしまう」
 ふいに上条は右手を上げた。握ったり開いたり指を動かしたり手首を回したり、自分の右手の動きを確認しながら自分の右手を観察し始めた。視線を戻した白井はよくわからず首をかしげた。
「??? 知っておりますわ。その右手に宿る能力でしょう?」
「ああ、この右手が持ってる能力。でも科学でも魔術でもない能力だ。俺はこの力でたくさんの人を救って、たくさんの幻想を殺してきた。でも…」
「………………」
「現実は殺せない。俺の力はそれまでなんだ」
 幻想殺し、それは名前のままで読むと『幻想を殺す』能力だ。しかしあくまで殺せるのは幻想だけ。幻想ではない『現実』を殺すことは出来はしないのだろう。
 しかし上条が指す現実とは一体何のだろうかと白井は疑問に思った。幻想は能力者たちの能力ならば、現実は……その能力者自身?
「上条さん、現実とは…?」
「社会…学園都市と魔術社会だよ、白井」
「学園都市…? どういう…こと…?」
 白井は何が言いたいのかを理解できない。上条はそうだよなと一人で納得すると白井の頭を撫でた。
 そして悲しそうな表情を引き締めなおし真っ直ぐな目で白井を見てきた。だがその奥はまだ沈んでいるように見えた。
「白井、御坂を頼む。これからも、ずっとな」
「えっ……?」
「俺、学園都市を出るんだ。だから……みんなとお別れだ」
 諦めきってしまった瞳はまた黒く沈み、上条の表情は見るに耐えない笑顔で飾られていた。それは白井黒子との別れの言葉であると理解した時、白井は上条の腕を掴んで床に投げ飛ばした。
「なんでですのッ!!! いきなり……どうして!? 何がありましたの!?」
「……………幻想は殺せるって言ったよな。でも現実は殺せなかったんだ。一ヶ月あがいたけど、結局は………」
 床にひれ伏しながら上条は淡々と答えるが白井には上条の言葉などいっさい耳に届いていなかった。
 今の白井の心を支配していたのは、怒りと悲しみ。そして………。
「貴方はお姉様が好きだったのではないのですの!! だったら!!!」
「人質……なんだよ。お前らは」
「ひと…じち……って、わたくしたちが?」
「ああ。学園都市は俺が素直に出て行かない場合はお前たちを狙うって言ってきてるんだ。その対象は俺に今まで関わった人間、全てだ。その中には美鈴さんも俺の家族も含まれている。そしてこれは学園都市の上層部と理事長が下した決定で、魔術側の了承した決定だ。つまり俺は……」
 そこまで言われて白井は様々なことを同時に理解してしまい、上条を掴んでいた腕を力なく降ろした。
 いきなりこんなことになるなんて神様は酷いと思った。やっと気づいて無事に戻ってきてくれたと思ったのに、今日が最後の別れなんて、と。
 同時に上条にあることを聞きたくなり、白井は上条の手を掴んで立たせてあげた。
「あ、悪いな」
「いえ、わたくしの責任ですから。それよりも上条さん、お姉様はどうするつもりですの?」
「何も言わないで去る。御坂には会わない」
「ッ!!! 貴方はッ!!!!」
 聞いた瞬間頭に一気に血が上り、上条の顔を殴り飛ばした。殴られた上条はバランスを崩し、尻餅をついて殴られた頬を押さえた。
 白井は上条を睨みつけて、金属矢を一本取り出すと上条の顔に向けた。だが上条は怯まずに白井を見ていた。
「ふざけないで下さい!! 貴方はお姉様が好きなはずです。なのに会わないで学園都市を去る? それが一ヶ月前にお姉様を好きといった男のセリフですの!? 貴方のとってお姉様はその程度でしかない存在じゃないはず。わたくしよりも先に会いたかったはず。だったら……」
「俺は他人を犠牲にしてまであいつに好きだなんていいたくない。他人の幸せを奪って俺だけ幸せになるなんて俺には出来ない」
「貴方はこの期に及んでまで」
「俺は俺のわがままで誰かが不幸になるのを耐え切れない。もしそうなったら俺は御坂を好きになりたくてもなれなくなる。それが一番嫌だ」
「だったらお姉様はどうする気ですの!! このまま何も知らないまま、何も伝えられずに別の人を好きになれと言うつもりですの!!! ふざけないでください!!! そんなのわたくしが許しませんわ!!!」
 白井は持っていた金属矢を上条に投げた。投げられた金属矢は上条に当たらず、後ろの床に刺さり、白井はまた新しい金属矢を持つと上条に一歩近づいた。
「次は当てます。ですからわたくしを怒らせないで下さい」
 どんな理由であれ白井は上条を傷つけたくなかった。だが怒りは上条を傷つけなければ耐えられないあたりまで来ていた。
 今放った一発も本当ならば当てたかったが傷つけたくないと思う小さな自制が威嚇でとどめた。しかし白井は次は耐えられないことをわかっていた。だからあえて自分を怒らせて欲しくないと上条にお願いした。
 しかし白井はどうせ無駄だとわかっていいる。なぜならこの少年の決意は自分よりも固く強いものだと知っていたから。
「俺に御坂は助けられない。たった一人の女の子のために、他の周りを犠牲にするなんて俺には出来ない」
「上条さん、わたくしも限界です。なので最後に訊きます。お姉様を………見捨てるつもりですか?」
「ああ、見捨てる。俺は御坂の想いには答えられない」
「………そうですの………では先に謝っておきます。ごめんなさい、上条さん」
 それを言い終えた瞬間、白井の自制は崩れ怒りの感情に任せ金属矢を上条の体に向けて放った。

<その4>



この話の上条当麻について。
上条さんは偽善使い(フォックスワード)と自称しておることは原作を読んでいる方にはお分かりでしょう。
ですけど作中だとただ誰かを救うだけの善人になってますね。
話が飛びますが、そのことを知った時に一番最初に思いついたのは、有名なゲーム『Fate』の主人公である衛宮士郎でした。
細かい解説は省きますが、上条さんと士郎は同じタイプの人間です。誰かを救うことだけを考えて自分の利益を考えない生き方をしているあたり、考えにほとんど誤差はありません。上条さんは『自分のため』と言ってますけど、それは『助けたい』と志す士郎にも言えることなんです。
ですけど少し違うのは、敵まで助けようとしていないあたりだけでしょうか。そこまで考えると上条さんはまんま士郎になってしまいますね(苦笑)

さてここからが本題。
何故上条は美琴を選ばなかったか…。
普通は作者はこんなことを解説しないんですけど、二次創作ですし気にしないで下さいな(土下座)
んで、話に戻ります。
私の考えでは上条さんは誰か一人を選んでも、その人だけを見ると言うことは絶対にできない人間だと思います。
その理由に関しては話に書いたとおり「不幸になることに耐えられない」からです。
上条さんは不幸になるかわりに誰かを幸せになることに誇りを持っているお方(この時点で考えが歪んでいる気がしますがそれは置いておく)その上条さんが自分で相手を不幸にしようなんてことを絶対に出来ないでしょう。それに自分の語った誇りとの矛盾が生じてしまいます。今の上条さんはどんな風になるかわかりませんが今の時点では、その誇りはまだ健在のはずです。
つまり上条さんは誰かを不幸にしてまで自分を幸せにすることにはきっと耐え切れないでしょう。ですから自分の好きな美琴を選ぶとは考えられず、自分よりも回りを優先してしまいます。そこにあるのは自分の意思よりも誰かを救いたい気持ち。善意です。
上条さんは作中では善人です。ですけど善人過ぎるゆえに、冷静に考えれば自分の欲望よりも他人の幸せを考えてしまうお方です。
ですから上条さんは美琴を選べない。他人を不幸にすることが、上条さんの最大の不幸であるはずだから。


……………今回の話の上条さんはこんなところですかね。あとこれは個人の考察で考え出された上条さんですからあまり真に受けないようにお願いしますね。
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2010/03/24 22:52 | ゼロプラスファイブ

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