忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/05 19:01 |
ゼロプラスファイブ 4
さて、すっごい中途半端で重要なこの回でなんとコメントをすればいいのやら。
そうですね……ぶっちゃけますと、実は失恋の小説とか映画とかまったく知りませんし記憶にございません。
小説にしても私が読むのって禁書など中二病の系列しか読まないですし、映画にしてもアクションなどの迫力ある作品しか見ません。なので、おかしかったりするのは間違った知識を得て書いた結果なのかも。
といってもそれは作品の0.1パーセント以下の言い訳にしかなりません。なので面白くなかったら私がダメなだけです。



 妹達(シスターズ)彼女たちは御坂美琴のクローンだ。
 しかし一人一人自我を持ち、一人の人間として機能している彼女たちはすでにクローンとして生きてはない。人間の一人として彼女たちは精一杯生きようと決めたのだ。それを教えてくれたのはたった一人の少年、上条当麻であった。
 彼女たちは世界各地、様々な場所で仕事をしている。もちろんその中には学園都市も含まれており、妹達の何人かもここに残っていた。
 その中の一人、ミサカ10032号こと御坂妹は一人で街を歩いていた。
 今は特に大きな指示もなく、身体の調子も悪くない。だが本来、クローンの存在を学園都市に知られてはならないので妹達の外出は自由ではなく、御坂妹も自由に外へ出ることは出来ない。なので今回彼女が外へ出るのにも理由があった。
『上条くんがこの場所に来て欲しいと。とても真剣な話をしたいんだってね』
 世話になっているカエル顔の医師から上条からの伝言を受け取った御坂妹はいつも通りの常盤台の冬服でその目的の場所へと歩いていた。
「……………」
 時折、自分を見てくる視線は興味深そうなものを見たと思う人々の視線であると御坂妹は気づいている。常盤台の制服はよく目立つし大き目のゴーグルをつけていれば目立ちたくなくとも目立ってしまう。だがすでに何ヶ月もそれらの視線を相手にしてきた御坂妹からすれば、街を歩いている時に必ず起こることであり例えるのなら少年が言う不幸なイベントが起こるのと同じ、毎日の習慣のようなものであった。
 なので御坂妹はそれらの視線を相手にせず、スルーすることがもはや習慣のようになっていた。皮肉なことにそれは入学し立ての常盤台のお嬢様達には最初から身についていたことであったのだが、常盤台の生徒とは交流がなかったため知るよしもなかった。
 そして興味深い視線の数々を無視して、御坂妹は一人で公園のベンチに座っている黒いコートを着た少年の姿を見た。
 真っ黒なコートは上条曰く冬の寒さから自分を守るものであるが不幸な自分はきっと一週間でダメにしてしまうと言っていたことを、見て思い出した。その話を聞いてすでに一ヶ以上経つがまだ残っているあたり、ダメにしてしまうイベントはまだ起きていないのだろう。もっとも、それを一週間分着用していないだけなのかもしれないが。
 コートに身を包んだ上条の横には大きめのカバンがあった。学校へ行く時に使うものではなく、旅行などで使いそうな大き目のカバンだ。御坂妹はそれを見てあることを確信すると、何も言わずに上条に近づいていく。
「もう行ってしまうのですか、とミサカは違うと言って欲しいと思いながらお聞きします」
「ああ。もう時間なんだ」
 御坂妹は来てすぐだと言うのに上条は横にあったカバンを持つと座っていたベンチを立って御坂妹の肩に手を置いた。
「悪いけど俺の最後の頼みだ。美琴を頼む。俺にはもう……守れないから」
「……………」
「それじゃあ、さようなら。今までありがとな」
 それだけ言うと上条は御坂妹から手を離して、御坂妹の横を通り過ぎていく。
 しかし御坂妹はそれを止めようと上条の前に立って手を広げた。やはりこのまま行かせてしまうのには未練があったのだ。
「ミサカはあなたが好きです。行かないで下さい、とミサカはあなたの前に立ちふさがります」
「………ごめん」
 行かせたくない一心で御坂妹は自分の心にあった上条への恋愛感情を上条に晒した。だが上条はそれに俯いて、小さな声で謝罪をするしかなかった。
 でも御坂妹には最初からわかっていた。自分の恋愛感情に答えてくれないことも、止められないことも。
 それでも悔いは残したくなかった。もう会えない相手に自分の恋愛感情を隠していたくなく、答えを導いて欲しかったから。
「いいえ、わかってました、とミサカはあなたを傷つけてしまったことを謝罪します」
「いや、謝罪するのは俺のほうだ。それに無理な頼みまで押し付けて、ごめん」
「謝らないで下さい、とミサカは首を横に振ります。それに…」
 というと御坂妹は自分の首にかけていたネックレスを上条に見せ付けるように弄る。かつて御坂妹のために買ってあげたネックレスは、今日もちゃんと御坂妹はつけている。
 上条はそれを見てまだ大切に持っていてくれたことが嬉しかった。買った時はそこまで意識していなかったが、こうやって見せられると意外と嬉しいものであった。
「あなたの最後の頼みはちゃんと守りたいです、とミサカはあなたの頼みを引き受けます」
「………ごめん」
「いいえ、とミサカは不機嫌になって答えます。それよりもお礼を言うべきでは、とミサカはあなたに訂正を求めます」
 御坂妹は不機嫌だとアピールするように上条を睨んだ。
 上条はまるで美琴みたいじゃないかと苦笑いした後に、そうだなとぎこちなく笑った。そして御坂妹の頭に手を置くと優しく撫でた。
「ありがとう、御坂妹。俺はこれで悔いなく行けるよ」
「いいえ、とミサカは首を横に振ります。でも戻れる時が来たら戻って来てください、とミサカは最後の頼みになるかもしれないことをあなたに頼みます」
 上条は御坂妹の頼みに首を縦に振ると、御坂妹から手を離した。それからもう一言だけ、ありがとうと言うと今度こそ御坂妹には振り返らず公園の出口へと歩いていってしまった。
 それを御坂妹は静かに見守っていると、不意に自分の頬に暖かいものが流れて来ていることに気づいた。
「涙………ミサカは、泣いているのですね、とミサカは自分が悲しんでることに気づきました。ですけどミサカはどうすればよかったのですか、とミサカは最後になってわからなくなりました」
 御坂妹は、涙を流しながら公園の出口を見た。御坂妹の疑問に答えてくれる少年はもう公園から離れて街の方向へと歩いていってしまった。
 その後を御坂妹は追わず、涙が止まる時まで御坂妹は静かに公園の出口を見続けた。


 白井を置いて部屋を出た上条はカバンを持って、御坂妹に頼みごとをした。それが終わった今、あとは学園都市のゲートへ向かうだけだった。、
 いつも歩いていた通学路も今日でお別れだ。学園都市にそびえたつビルも学校や研究所、大通りや商店街に並んだ様々な店にはもう入れなくなると思うと寂しかった。最後に入りたかった店もあったが、今はそんな場合ではない。
 しかし道中にある店の誘惑に負けないように歩きながらも、ついつい店先で止まったりしてしまうのはやはり上条がここに未練を残している結果であろう。なんとも歯がゆい未練だった。
「ははは、やっぱり不幸だよな」
 上条はこれを一言で不幸と済ませれば、自分の体質のせいだと言い訳が出来ると思った。
 だが言ってみても不幸とは思えず、未練と言う言葉が頭によぎった。思考がこれを不幸にすることを拒否したのだ。
 上条は心の底で舌打ちをすると、途中にあった自販機で適当にジュースを買った。ジュースを取ると上条は少しだけ考えてカバンの中に入れることにした。
「………何してるんだ、俺は」
 不意にジュースを買ってカバンに入れる意味に気づいた。
 このジュースはまだ学園都市の『外』では売ってはいない商品。なのに喉も渇いていない上条がそれを買って『外』へ持っていこうとする意味は、学園都市を忘れたくない、まだ覚えていたいと思うことそのものではないか。
 気づいてしまった上条はその場で立ち止まるとカバンに入れたジュースを取り出した。さらに上条は取り出したジュースの名前を見て、はははと乾いた笑みを浮かべた。
『ヤシの実サイダー』と書かれたラベルは。上条が好きなあの少女のお気に入りのジュースだ。適当に買ったはずなのにその名前の商品を買うということは……上条は学園都市のことを完全に自覚して『ヤシの実サイダー』を一気に飲んだ。
「………これってこんなに美味かったんだな」
 気づかなかったともっと飲んでおきたかったと思う二つの後悔が生まれるが上条はそれを胸の奥に押しとどめ、缶を邪魔にならない端っこに立てて置いた。
 それからゲートへ向かって歩こうとした時、ポケットに入れていた携帯電話の鳴った。上条は携帯を取って誰かを見てみると『土御門元春』と言う名前が表示されていたので、上条は気持ちを切り替えると電話を取った。
「土御門か? 白井はどうしたんだ?」
『ああ、あの子ならカミやんの部屋でそのまま眠ってもらってるにゃー。でも起きるのも時間の問題だぜい』
「そっか。あの時は悪かったな、土御門。おかげで助かった」
『気にするなよ、カミやん。協力者として当然のことをしたまでだにゃー」
 土御門は電話越しでも余裕の姿勢を崩さない。それは経験からなのか、危険がないからなのかよくわからないが、へらへらしている土御門の声に上条は少しだけ怒りを覚えた。
 でも土御門の事情は上条にはわかっていた。なので上条は口に出すことはせず、心の底で舌打ちするだけに留めた。
「それで、何の用だ? 何か問題でもあったのか?」
『いんや、こっちにはないぜい。ただステイルがまだ来ないって騒いでるから連絡しただけだにゃー』
「そっか……ちょっと用があったんでそれを済ませてたんだ。悪いけどここからゲートまではもう少しかかる」
『用ね……なあカミやん。用ってその用"だけ"なのか?』
 ドキッと上条の心臓が飛び跳ねた。まるでこちらの心情を見抜いたような言い方だ。
 しかし上条は態度や声に出さず、ないと答えると土御門はくっくっくと不気味に笑った。
『そんなカミやんに朗報だにゃー。カミやんの愛しのお嬢様が病院を出て、カミやんを追って来てるようだぜい。さ~て、どうするカミやん』
 愛しのお嬢様とは上条には誰のことかすぐに理解できた。
 そして何故土御門が自分にそのことを伝えてきたのかも…。
「土御門、あいつは俺からどれぐらい離れてるんだ?」
『ん~あんまり離れてないみたいぜよ。カミやんがそのまま歩き続けたら、ゲートに着く前に追いつくだろうにゃー』
「……………」
 上条はそこまで聞き終えると、携帯を切った。
 そして少しだけ考えて上条は携帯の電話帳からある人物を呼び出した。
「御坂………美琴」


 美琴が病室を出るきっかけは初春からの電話であった。
 その時はちょうど美琴の近くに携帯があったので美琴はすぐに電話に出ることが出来た。それから初春の手短な説明をされて美琴は息が詰まりそうになった。
 そして自体を飲み込めぬまま、初春から白井の携帯越しの会話を聞いた。
『危なかったにゃーカミやん。危うく怪我をするところだったぜよ』
『ああ、そうだな』
『なんや、カミやん。嬉しそうじゃないにゃー』
『………知り合いが目の前で気絶するのを見て、いい気持ちがするかよ』
『それもそうだにゃー。でもこの子の空間移動は厄介だから気絶させるに限るぜよ。それよりもカミやん、ステイルが待ちくたびれてるようだぜい。早く行かないと魔女狩りの王に焼かれるかもよ?』
『ありそうなこと言うなよ。それよりも、白井はどうするんだよ?』
『ああ、それは俺に任せろ。だからカミやんはすぐに行くにゃー。もう俺達のことはばれてる様だし』
 その言葉を最後に、白井の携帯電話は切られた。
 美琴は一部の会話しか聞いていないが大体の自体は飲み込めた。そのおかげで制服にもすぐに着替えられ、初春に上条の位置を追ってくれとも頼めた。
 病室を出てエレベーターに乗り込み病院の廊下を一気に駆けていく美琴の姿は、病院に入院している患者とは思えないほど元気であった。本人もなんでこんなに元気かと疑問にさえ思ったりもしたが、そんなことはあとで考えればいいと今は上条に集中していた。
「初春さん! アイツは今どこにいるの?」
『御坂さんから少し離れたところにいます。道はそのまま真っ直ぐ走って行って大丈夫です』
 初春から距離と道を教えてもらいながら、美琴は全速力で上条のあとを追っていた。大通りを通り抜け、路地裏を通って、人ごみを避けていく。
 美琴は学園都市の地理にも詳しい。複雑な道も最寄の場所へ行くための裏道も覚えており、人よりは少しだけ道を知っている。だが今日に限ってはもっと早い道を知れていなかった自分が憎たらしく、こんな道を作った人間に文句を言ってやりたかった。
 しかし道は道だ。文句を言ったところでいい道が出来るわけではないのは美琴にもわかっていた。
「黒子がいないのはやっぱり痛いわ」
 美琴は空間移動の能力が追跡に便利であると実感した。そして白井が気絶させられてしまったことが、どれほどの痛手かも実感した。
 だが美琴は気絶した白井を恨んでもいなければ文句も思わない。むしろ、感謝しきれないほどの感謝をしている。
 もし白井がいなければ、きっと美琴も白井も上条が学園都市から消えてしまったことに気づけずに帰ってこないことを知って後悔したのかもしれない。それを考えると、白井がしてくれた上条の捜索は美琴には神様の贈り物以上に大きな贈り物であったのかもしれない。
『御坂さん! 上条さんが走り出しました!』
 初春の報告に美琴は焦りを感じた。同時に追われていることに気づかれて逃げ始めたと追いつけないことへの危機感も感じた。
 美琴は体力のことを無視して自分が最高だと思うスピードに速めると、初春からのさらなる情報を求めた。すると初春は待ってくださいと叫んだので、美琴はその場で止まった。
『御坂さん。上条さんの向かう方向、おかしいですよ』
「おかしいって……どういうこと?」
『走り出して向かった方向が最寄のゲート離れた方向に向かってるんです』
「え? ゲートから…離れてる?」
 初春から報告を受けて美琴は上条が何をしたいのかわからなくなった。
『外』へと向かっていたはずなのに、今になって方向転換。目的の場所に何か問題があるのか、それとも何か別のルートで『外』へ出るつもりなのか。
 美琴は様々な可能性を考えながら、走り続けた。しかしそれ以降の初春からの報告からも上条が何をしたいのか、わからなかった。


「やっと……見つけた」
 はぁはぁと肩で息をして疲れているのは上条にもよくわかった。一体どれほど走ってきたのかは知らないが、必死だったのは間違いない。
 上条は待っていたように目を閉じていた。しかし美琴が近寄ろうとした時、上条は目をあけて美琴を睨んだ。それを向けられた美琴は、一瞬だけびくりと身体を振るわせたが表情には動揺を見せなかった。
「御坂か」
「そう、よ。御坂美琴よ」
 それどころか、上条を睨み返した。疲れているが気丈な態度をとることや睨みつけることなどは体力を使う必要など一切ない。
 しかしまた逃げ出されたりしたらきっと追いつけない。美琴は上条に近づこうとじりじりと距離と縮めようとした。が上条はそれを察して、近づくなと静止の指示を出した。
「それよりも何の用だ。俺は忙しいんだ」
「ッ!! 忙しいなんて、よくもそんなことを言えたわね!」
「……………」
 上条は何も答えず、ただ美琴を睨み続けるだけだ。そんな態度に美琴は苛立ちを隠せずに、舌打ちをした。すると上条はもういいと言って美琴のことなど興味ないと言い捨てると、上条は美琴に背を向けてその場を去ろうとした。
 自分ではわかりきったことを言っておきながらいちいちムカつく言葉に変換して言う。相変わらずとは思うのだが少しだけ違う上条の態度に怒りを覚えたが、それとプラスで興味がないと自分の都合で去ろうとする態度にさらなる怒りを覚えた。
「お前に何がわかる。それにお前には関係ないだろう」
「偉そうなこと言ってるんじゃないわよ。この馬鹿ぁぁぁぁ!!!」
 怒りに任せ、美琴はいつも以上の電力での雷撃の槍を上条に放った。
 しかしいつものように上条は雷撃の槍を右手で打ち消すと、振り返った。
「部外者は黙ってろ」
「ッ!!??」
 振り返った瞬間に飛んできた言葉は今まで上条からは聞いたことのない冷たい言葉だった。。
 怒りで頭に血が上っていた美琴だったがこれには動揺も隠せず、表情は驚きから少しずつ泣き出しそうな表情へと変化していく。だが上条はそれに知らん顔をして、再度美琴を睨みつけた。
「お前も白井みたいに止めに来たのか。それだったら、俺は容赦はしない」
 敵意を向けてくる視線は美琴に初めて向けられたものであった。
 今までは面倒そうな視線や厄介だなと思う不幸そうな視線、優しい暖かい視線など日常的で明るい視線ばかりを送って来てくれていた。だと言うのに今になって送ってきた視線は敵だと認めている鋭い視線。すでに上条は美琴を敵だと判断していた。
「……なんで」
 敵だと認められるわけがない。だというのに何故敵意など向けられるのか、美琴には上条がそんな態度を取れることが理解出来なかった。
 何故なら美琴は先ほどの会話で上条の本心を知ってしまっている。だから上条が好きな相手に本気の敵意など向けられるわけもない。それは好きな相手と自分の距離を離すことなのに。
 しかし上条は右の拳を握っていた。さらに美琴を混乱させるように。
「私はアンタが好き」

「俺はお前が嫌いだ」

 淡々と当たり前のように上条は言った。
 それは嘘だと美琴はわかっている。だというのに、胸が張り裂けそうになり心が折れそうだった。違う違うと何度も何度も頭に呼びかけるが、あまりにも大きなショックだったのでそれを理解してくれなかった。
「というか邪魔だ。俺はもうお前に優しくなんかしない」
 沈んだ声と突き放す言葉は言っているのは上条ではないと思いたいほどに残酷であった。だが目の前にいる少年は確実に上条自身だ。
 美琴はさらに上条の言動がわからなくなってきていた。
 どうして好きな相手にそんなことが出来るのか。好きならばもっと言うべきことがあるはずだろうに。なんで突き放そうとするのか。
「アンタは……なんで、こんな…時まで」
「俺が学園都市からいなくなれば救われる人がたくさんいる。それだけだ」
 上条の言ったことは事実であるのは美琴にも理解できた。でもそれでは上条にも自分にも一切の救いがない。逆に絶望しか残らないはずなのに。
「だからって、自分の本心を捨ててまで、誰かを救いたいの!? そんなのおかしいわよ!!」
「本心なんてない。俺は俺のしたいことをしたまでだ」
「嘘言わないでよ!! アンタは本当は私が好きなんでしょ!? 私のことが好きで好きでたまらないんでしょ!? だったら―――」
「勝手なこと言うなッ!!! 人の気持ちも知らないでよ!!!」
 ついに上条は怒りが限界に達したのか、美琴の肩を押して背中を壁にたたきつけた。
「俺がどんな気持ちで考えたかお前は知ってるのかよ!! みんなの未来と自分の願望を天秤に乗せられて、どれだけ苦しい思いをしたと思ってるんだよ!!! でもな、決めなくちゃいけなかったんだ!!!! そうしないと俺もみんなにも迷惑がかかるから決めなくちゃいけなかったんだよッ!!!!」
「………」
「その結果がこれだよ! 俺は誰かを助けるほうを選んだ! 自分の気持ちを押し殺すほうを選んだ!! だったらお前が俺に口を出すんじゃねえ!!! 俺が決めたことをお前にとやかく言われる筋合いなんかねえんだよ!!!!」
 上条は………泣いていた。
 涙を流しながら自分の苦痛を美琴に告白していた。怒鳴られている、怒っているのもわかるが、それ以上に伝わってきたのは悲しみ。こうしなければならないと思う無力さだった。
 上条は言いたいことを言い終えて、美琴を開放すると背を向けて美琴やゲートとは逆方向へと歩いていく。
 ゲートに行く前に何かをしたいと思う気まぐれなのかもしれないし、ゲートへの別の道があるのかもしれない。だが上条の背中はついて来いと言っているように思えた。
 美琴は上条に何も声をかけずにその後を追うことにした。上条が向かう場所に何があるのかこのときはまだわからなかった。


 上条が向かった先は夜の鉄橋だった。
 そこはかつて美琴が一方通行と戦いにいく前に立ち寄った場所であり、上条にそれを止められた場所。言うなれば美琴にはとても思い出深い場所であった。
 何故上条はここに連れてきたのか美琴には理解できない。しかしここまでつれてきたのには何か大きな理由があるのはわかった。
「ここは覚えてるよな。俺がお前を追っかけて、たどり着いた場所。そしてお前が一方的に俺に電撃を浴びせた場所だ」
「……………」
「その後に俺は一方通行を倒して、お前たちを救った。その結果に俺は大満足だった、という話がここであった」
 美琴の恋愛感情はもしかしたらここから始まったのかもしれないが、正確な始まりがいつだったのか知らない美琴にもそれを確かめることは出来ない。しかし上条が今言った事実は、美琴の心に大きな変化をもたらしたことであるのはわかっていた。
 この鉄橋は自販機と同じぐらいに思い出深い場所だ。つい自販機で上条を待っているときがあるのと同じで、夜の街を一人で歩いている時、ふとここにたどり着いてしまうこともあった。それほどまでにこの場所は美琴にはお気に入りだった。
「………何を、したいの?」
 話からも上条がここに連れてきた理由がわからない。だが妹達での件を今ここで話すのはなにか意味があったのはわかる。
 さっきからそればかりだと美琴は上条の目的が理解できないことに少しだけ焦りを積らせていた。何かあるのは明白なのに決定的な何かをつかめないのが不気味であったのだ。
「アンタはここで私に何をさせたいの? 何かをさせるために連れてきたんでしょ。違う?」
「………ああ。それであってるよ、御坂」
 というと上条は持っていたカバンを横に投げると、自分のポケットから携帯を取り出した。それから少しだけ考えて、苦しそうな顔をしながら上条は携帯を美琴に投げた。
 投げられた携帯は美琴の目の前に落ちた。雑に投げられた携帯を美琴を拾って中を開くと待ち受け画面が表示され誤作動もない。携帯には傷はついたが中身には問題ないようだった。
「これはアンタの携帯でしょ? なんで私なんかに渡すのよ」
「学園都市で使ってた携帯なんてもういらねえからな。それに『外』に出たら新しいのを買うつもりさ」
「意味わかんないわよ。そんな面倒なことしてもアンタが損するだけでしょ?」
「そんなの金の問題だけだろう。それに俺が言いたいのはそういうことじゃねえよ」
 後ろ髪をボリボリと掻きながら、上条はめんどくさそうにため息をついた。態度だけならば日常の上条が戻ってきたように思えたが、視線は相変わらず鋭い。そのせいで美琴は些細な上条の態度に安心することが出来なかった。
「だったら、なんのよ?」
「さっきから質問ばかりだな。少しは考えてるか?」
「ッ!!?? その態度はどんなときでも健在ね! それよりもどうなの!!」
 自分を煽る態度は相変わらず健在であった。だが敵だと思われているのに、その態度をされるのは美琴からすればいつも以上に苛立つ原因であった。
 美琴はビリビリといつもように青い光を上条に見せ付ける。が上条は動揺せずため息で返すと。
「単純な話だろう。その携帯に登録したやつらと連絡をつけないようにするためだよ」
 わかってなかったのかよと呆れた。でもそれを聞いた美琴は上条が自分に携帯を渡したことが矛盾していることに気づいた。
(だったら、壊せばいいのに。この橋の下に投げればいいのに、なんで…)
 連絡をつかなくする方法なら上条もいくつか知っているはずだ。だというのに上条の携帯は美琴へと渡り、それで連絡方法を断つ方法をとった。確かにそうすれば上条には連絡は届かない。だが何故こんなに面倒な方法をとったのか。
「アンタ、本当は何をしたいの?」
「…………………」
 上条は何も答えずゆっくりと一歩一歩、足音を立てながら美琴に静かに近づいていく。
 美琴は少しだけ警戒して一歩下がった。だがそれ以上は下がることをやめて上条と向き合った。
「…………」
 上条と美琴の距離が数十センチになったところで上条は少しだけ俯き、すぐさま決意した表情で美琴を見つめた。
 そして上条は一言だけ美琴だけに聞こえる小さな声で呟くと、上条は美琴を抱きしめようと近づき、
「ご、ふっ…!?」
 抱きしめる瞬間、上条は一切の手加減なしに美琴の腹を殴った。
「…………さようなら、美琴」
 腹を殴られた美琴は上条の一発で意識が飛ぶか飛ばないかの境界線に立たされてしまい能力のコントロールが出来なくなった。さらに丸まりながら腹を抱えて床に崩れていった。
 上条は美琴が床に崩れるのを見終わると、投げたカバンを背中に背負うと美琴を一人置いて鉄橋を去っていく。それを見ながら美琴は必死に声を出そうとするが、胃液を吐き出しそうになった。初めて喰らった上条の全力のパンチは、女の子の美琴には強すぎたのだ。
「な………ん、で………ょ」
 それが美琴が気絶する前に言った最後の言葉であった。
 そして上条が鉄橋を去った瞬間、二人の初恋は終わりを迎えたのだった。

<その5(EP)>



あとがきとか補足とか
さて、最初は隠れた補足として『上条』が学園都市を出て行くのに協力的な人物でもあげましょうか。
まず一人に土御門。これは単純に舞夏に危険が及ぶからですね。なので上条が出て行くことに協力的です。
二人目はステイル。これも土御門と同じでインデックスに危険が及ぶからです。
三人目は出てきておりませんが一方通行。実は彼も協力者です。というよりもグループとして彼も協力してるんですが、話がおかしな方向へ行ってしまうので出番なし。理由に関してはこいつも打ち止めのためと、お前ら三人一緒かよwww
でも守りたい相手に危険が及ぶからという共通点があるので、意外と重要な接点があります。ちなみにそれ以外のメンバー、ここで言うならば上条勢力のメンバーは主要人は反対派です。でも尺の事情でかけませんorz

さて本編の補足へいきたいですが、今回の話は複線がありすぎて困った。というよりも美琴視点=上条の変化の謎なので厄介。次の話でそれらを書くので、私からは何も言えません。なのでこれは各自で考えて最後を見ても下さい、としかいえませんorz
ただあえて言うのならば、不器用で優しいからこの方法しか思いつかなかった、としかいえません。あとは他の作品でよくある展開としか。
語りたいことは最後にとっておきます、今回はgdgdですんません、力不足すぎだorz
PR

2010/03/28 23:09 | ゼロプラスファイブ

<<ゼロプラスファイブ 5 | HOME | とある超電磁砲の入学式 後編>>
忍者ブログ[PR]