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2024/05/03 14:18 |
とある超電磁砲の入学式 後編
後編です。
最後のあたり美琴が崩壊してますけど、気にしたら負けです。結構甘い…かも。
追記
甘さのレベルは3か4で書いたつもりとこっちでも言っときます。
ちなみに前編に甘さがなく視点を変えたりしていたので、と言う理由です。
書いた自分が言うのものなんですけど、デレデレ美琴の可愛さが異常でござる。



 入学式を終えた体育館にいた一同は、これから始まる特別公演の準備をしている舞台を見ながら胸を躍らされていた。
 当初の予定では、入学式中に上条当麻と御坂美琴の会見のような質問コーナーを設置する予定であったらしい。しかし何かの都合でそれは中止となり、盛夏祭の時と同じ美琴によるバイオリンの演奏へと変更になった。ちなみに変更になった理由は関係者の一部にしかわからない謎である。
 初春個人としては質問の方が面白みがあり楽しそうだったので、変更になったのは少しだけ残念であった。しかしまたあの時の演奏を聴けることには初春は別の意味で楽しみであった。
「佐天さん。私たちが初めて盛夏祭に行った時のこと、覚えてますか?」
「もっちろん。あの時の御坂さん、白いドレスを着ててさすっごい綺麗だったよね」
「それにバイオリンも上手であの時は御坂さんの演奏には引き込まれましたね。それがまたここで再現されるなんて」
「うんうん。やっぱり期待大だよね」
 二人は美琴のバイオリンの腕前と白いドレスを着ていた時の綺麗な姿をまだ覚えている。そしてあの時の感動もまだ二人の記憶の中に残っていた。
 初春と佐天は興奮しながら美琴の演奏の準備をしている舞台を見ながらその時を待っていた。それは彼女たちの周りに座っている保護者たちも同じであった。
 一方、それとは少し離れた席では。
「ふっふっふ。美琴ちゃんの演奏、お母さんも楽しみだなー」
 御坂美鈴は自分の愛娘の演奏を楽しみに待っていた。
 実は美鈴はまだ美琴のバイオリンの演奏を聴いたことがなかった。それは美琴が演奏をしてくれなかったからではなく、美鈴が美琴に演奏して欲しいと頼んでいなかったからである。
 美鈴の中では、自分の娘の演奏には少しばかり興味があった。だがそれよりも娘の気になる相手である上条との話題を優先させたので、自分個人の頼みはそれが終わったとでもゆっくりと出来たので頼まなかったのだ。
 しかし今回、意外なことに今まで聴けなかった娘のバイオリンの演奏を聴けると聞いたので美鈴も初春や佐天たちのように純粋に美琴の演奏を楽しみにしていたのだ。
「それにしても上条くんもいなくなっちゃてるみたいね。相変わらず美琴ちゃんは大胆ね♪」
 もっとも、娘をからかうのも楽しみの一つだがそれはまた後でのお楽しみ。
 さらに一方、美鈴から少し前の席には、
「お姉様、ハァハァハァ」
 息を荒くしている口元からよだれを零している白井黒子の姿があった。
 手には買ったばかりのデジカメがしっかりと握られ、その中身は全て今日の美琴の制服姿で埋め尽くされていた。白井はその中から厳選したものを選ぶことはせず、全て保存してデータとして残す予定である。もちろん、これから行われる美琴の演奏にもそれが含まれている。
「ハァハァハァ、お姉様の高校制服の姿。ハァハァ、黒子は感激のあまりイってしまいそうです。ハァハァハァハァ」
 これ以上の解説は問題があるので略させていただきます。


 準備が整った美琴はあとは舞台の袖幕の裏で出番のアナウンスを待つだけであった。
「……………ッ」
 隣にいた上条は緊張をしている美琴の手を優しく握る。美琴も握られた手をぎゅっと握り返すと不思議なことに少しだけ緊張が緩んだような気がした。
「出番まで握っててやる。それまで出来る限りの緊張を解いとけ」
 この手が離れるのは美琴が舞台へ歩き出す時。それまで上条は出来る限りずっと握っているつもりだ。
 いくら美琴の恋人であり公演の関係者であっても、バイオリンの演奏が始まれば上条も観客だ。観客は演奏者を見守ることしか出来ない。手助けをしたくとも演奏が始まれば手伝えるのは邪魔をしないことだけだ。上条にはそれらが理解できていたからこそ、上条は始まる前まで美琴の手伝いをしたかった。そしてこれが演奏が始まる前の最後の手伝いになることも上条はわかっていた。
 出来るなら変わってやりたいと思いもしたが、それは美琴への裏切りであるのも理解している。それ以外にも様々なことを理解していた上条は今はただ想い人の手を優しく包み込むことしか出来なかった。
「……ねえ頼みがあるんだけど」
「ん? ああ、出来ることならなんでもいいぞ」
「うん。ちょっと待っててもらっていい?」
 美琴は上条の手をゆっくりと離すと、少し離れた場所においてあった制服の入った巾着袋の中に入っている制服のポケットからあるものを取り出した。制服をしまって置いてあった場所に巾着袋を戻すと取り出したものと自分のバイオリンケースを持ってきて上条のもとに戻ってきた。
 戻ってきた美琴に手を出してと言われたので上条は右手を出した。すると美琴はその上に取り出してきた小さなものを置くと上条から一歩離れた。
「これって、俺があげたペンダント?」
「そっ。遅刻したホワイトデーにもらった大事なペンダントよ」
 このペンダントは出来上がった翌日の3月24日に上条はホワイトデーのお返しとして美琴にプレゼントしたものだ。
 あの日以来、美琴はたびたび持ち歩いて幸せそうに中の写真を見ている姿は上条も何度か見ている。だが首につけている姿はまだ一度も見ていなかった。
「これを俺に渡して…どうするんでせうか?」
「つけて」
「はい?」
「私につけてって言ってるのよ。買ったのはアンタなんだからつけ方ぐらい、わかるでしょ?」
「まあわかりますけど………」
 ペンダントの結びは金属ではなくそれなりに丈夫な糸で繋がれておりつけ方はとても簡単だ。結び目を解いて、また結ぶだけ。つけ方など幼い子供でも十分にわかる。
 しかし、何故自分がつけるのだろうか…上条にはそれよくわからなかった。
「ほら急いで。時間がないの、わかってるでしょ?」
「わかったわかった。ほれ、じっとしてろよ」
 急かされたので考えることは後にして、上条はペンダントの結び目を解いた。そして解いて出来た二本の糸を美琴の首の裏に回して、ほどよい長さに調節して結んだ。
 少しばかり長めだったかとつけ終えた時に思ったが美琴はペンダントをドレスの中に隠した。
「一応、きつめに結んどいたぞ。途中で解けたりはしないと思うけど、気をつけろよ」
「……うん。ありがとう」
「??? どういたしまして???」
 しおらしくなった美琴の態度に上条はよくわからず首をかしげた。
 ぺンダントをつけただけなのになんでこうも大人しくなったのか、上条の勉強にもそれを解くものはなく何を思っているのかよくわからなかった。それが少しばかり気になって訊こうと思ったとき。
『それでは本日の特別公演を始めたいと思います。御坂美琴さん、お願いします』
 その言葉が開演の合図だった。
 美琴は持っていたバイオリンケースを床に置くと、中から自分のバイオリンと弓を取ってケースを閉じるとそれを上条に渡した。上条はそれを受け取ると、美琴と声をかけた。
「えっと………その、行って来い!」
 何かいい言葉をかけようかと考えたが、結局出たのはいつもの通りの自分の言葉。言った後にもう少しいい言葉を用意しておけばよかったと後悔したが、美琴は声をかけてくれたことが嬉しかったのか、小さな声でありがとうと言った。
 そして優しく微笑むと美琴は上条の下に近づいていくと、上条とキスをした。
「当麻や聴いてくれるみんなを想って演奏する。だから、最後まで見守ってて」
「ああ、俺たちが見守っててやる。だから美琴は美琴の演奏をして俺たちを感動させてくれ」
 そして上条は美琴の背中を優しく押すと、美琴は観客たちが待つ演奏の場へと歩いていった。


 この場にいる全ての人たちが自分を見ている。新入生や在校生、教職員に保護者たち。『外』から来た記者たちも皆自分だけを見ている。
 視界には演奏を楽しみにしている視線や衣装を見て見とれている瞳が映る。今の彼らには自分はどのように映っているのかは美琴には何一つわからなかった。
 しかしわからないことに恐怖はない。何故ならこの中には自分の友人たちも含まれていることを知っていたから。そして裏側では自分の最愛の人が見てくれていることを知っていたから。
(初春さんや佐天さん、黒子もいるみたいね。それとあの馬鹿親も)
 美琴が彼女たちを見たわけではない。だが来ている。見ていなくともそれは断言できた。
「………さて」
 体育館に流れているアナウンスがそろそろ終わる頃を見計らって、美琴は気持ちを切り替えた。
 持っていたバイオリンは中学時代から使ってきたもの。新しいものも買えるには買えたが数々の思い出と長い時間使ってきたため愛着があった。
 だが使い慣れているから上手く演奏できるとは限らない。大切なのはバイオリン自体でも技術でもない。気持ちなのだと、美琴は知っていた。
 楽器とは下手に弾こうと思えば下手に弾ける素直なもの。だが上手に弾こうと思っても上手に弾けない不器用なものでもあった。
 さらに楽器の音は人の気持ちに反応して音を出す。気持ちが沈んでいれば暗い音を響かせ、明るい気持ちであれば明るい音を響かせる。それが音になった時、聴いている人全てに演奏者の気持ちがダイレクトに伝わってしまう。
 だからどんなに上手な人が演奏しようとも気持ちがなければそれはただの音だ。ただの音には人に感動を与えることなどできはしない。それは誰にだってわかることであるが、意外と気づいていない人が多い。
 かつての美琴もそれを知らなかった。しかし度重なる練習を重ね、誰かに聴いてもらいたいと思う素直な気持ちを知ったとき、美琴は楽器はただ上手に弾くものではなく自分の心を描くものだと知った。
 アナウンスが終わり、自分の演奏する曲名が言われる。
 曲の数は三つ。どれも有名なオーケストラの曲でありバイオリンを学ぶ人ならば一回は弾くであろう曲だ。
 最初は上手く弾けずにボロボロであったバイオリンも、時間を重ねるごとに様々な曲に触れて、今はこんな大きな舞台の上で演奏をすることになっている。美琴は音楽家ではないが、今この場で演奏できることは誇りに思っている。
 そして、この演奏を成功させてみんなに感動を与えたいとも…。
 静寂は目の前の演奏者の音を待っている。気持ちはすでに自分の思い描いた世界へと旅立っていた。
 小さく大きく…静かにうるさく…丁寧に雑に…綺麗に汚く…真っ白い紙に様々なことを描いていく。自分の描く世界を知ってもらうために、美琴は流れるように構えると自分の描いた音を楽器の音に乗せて描き始めた。


 上条当麻は美琴のバイオリンを聴かされたことは何度かあった。
 クラシックに興味がない上条には何を演奏して、誰の曲かを言われてもまったくわからない。
 しかし目の前で演奏している彼女の姿はそれらを全て忘れさせるほどに様々な世界を描いていた。
「――――――――――♪」
「……………」
「以上です。ありがとうございました!!!」
 演奏しきると美琴は笑顔でお辞儀をした。
 聴いていた上条は美琴が頭を下げたのと同時に大きな拍手を送った。それでも足りなかったが、戻ってくるまで観客役であった彼には今は拍手をすることしか出来なかった。
「やっぱりすげえよ。ホントにすげえ」
「えへへ、ありがとう当麻」
 とても嬉しそうに笑いながら美琴は端っこに置いてあったテーブルにバイオリンと弓を置くと、上条の座っていたソファーの横にスペースに座ると上条の腕を掴んでえへへと笑った。
「やっぱり当麻の横が一番落ち着く。終わったらすぐにここに来るって決めてたんだ」
「俺は終わったらすぐにここに来て欲しいって思ってたぜ。でも終わったらきっとお前がここに来るってわかってたから何も言わなかったけどな」
「むっ、わかってても言ってよね! 好きな人に来て欲しいって言われるのもね、私は幸せなんだよ!」
「そうなのか? だったら勉強するついでに今のことも覚えておきます」
「うんうん。わかってるわね、ダーリン♪」
 上条の腕に頬擦りをしながら美琴は幸せに笑った。
 時間はすっかり夜となり、入学式での特別公演を終えた美琴であったが、上条の要望により上条のためだけの上条美琴の演奏会がささやかに開かれていた。
 演奏する曲は今日演奏したのと同じ曲であった。しかし同じ曲であってもそのクオリティは下がるよりもむしろ上がっているような気がした。
「なあ美琴。お前さ、入学式の公演の時に手を抜いた?」
「はっ?? そんなわけないじゃない。自分でも驚くぐらいの絶好調だったわよ」
「そうだよな。あの時は感動のあまり上条さんも泣いちまったもんな」
 美琴の特別公演は大成功であった。間違えがなくパーフェクトの演奏であり、人々の魅了した新入生として明日の新聞には載るはずだ。そのあまりの演奏ぶりに、上条はついつい涙を流してしまい美琴やテレビカメラの前で恥を晒した不幸なオチがあったほど美琴の演奏は素晴らしかった。
 余談であるが、あまりにもパーフェクトな演奏に白井黒子は救急車で搬送されて現在も意識不明になっていたりもするが、二人はおろか友人の初春や佐天も知らなかったりもした。それが後日判明した時に、白井の変態レベルがさらに上がってしまうのだがそれはもう少し先の話である。
「でも今の演奏を聴いてて思ったんだが、あの時よりもクオリティ上がってないか?」
「クオリティ? 私は譜面通りに演奏したし公演以上の演奏は出来なかったから、むしろ下がっていると思うんだけど……」
「気のせいか? 美琴の気持ちがダイレクトに伝わってきた気がしたんだが……」
「……ああ、そういうことね」
 気持ちと言われて美琴は何故上条がそう感じたのか、わかったような気がした。それがまだわからない上条はわかったのかと興味深そうな目で教えて欲しいと訴えてくる。
 でもただ教えるだけじゃ面白くないので、美琴は久々に卑怯な手を使った。
「交換条件。それに応じてくれたら、教えてあげる」
「…………………何のかは教えて、くれないよな」
「ふっふっふ。さ~て、どうします?」
 実はとても単純で上条にもわかる答えだ。
 しかしまだ鈍感な部分は多いため気づくまで時間がかかるかわからない可能性もある。美琴としてはそれはあまりにも悲しすぎるので、ここでは上条に頷いて欲しかった。
 のだが予想に反して上条はここで首を横に振った。
「悪いけど、交換条件はなしだ。その代わりに……ならいいけどな、何か訊くか?」
「訊く。嫌だったら教えない」
「長期で休みになったら、どこかへ旅行をしたいんだがどうかでせうか?」
「行く! お泊りでしょ? 絶対に行く!!」
 喉から手が出るほど素晴らしい提案だったので美琴は興奮しながらその案に賛成した。
 実はこれは美琴も少しだけ考えたことがあることだった。しかし上条の度重なる『外』への用事で言っても難しい気がしたので言わなかった。だというのに上条がそれを言ってくれた。美琴には嬉しさのあまり気絶してしまいそうなほどに素晴らしい提案であった。
「了解。俺も色々とあるけどゴールデンウィークか夏休みにでも行けるようにするな」
「うんうんうん!!! 楽しみにしてるわよ、当麻!」
 喜びのあまり美琴は上条に抱きついて、何度も何度もキスを交わす。一度や二度ではなく、十回二十回と普通のカップルならば一、二か月分ぐらいのキスをして上条に自分の喜びを伝えた。それを受け取っていた上条は決して嫌だとは言わず、むしろ快く受け止めていた。
「んんっ…好き…大好き…ちゅっん…好き好き好き……当麻、大好き……んんっちゅ…ん……んんっ…好き」
(やべえ、美琴が壊れた。でも可愛いからいいか)
 上条は心の底でそんなことを思った。
 そしてしばらくして、落ち着いたのか美琴は上条から離れてまた上条の腕に抱きついた。
「えへへ…当麻と旅行とお泊りだ。えへへへへ」
 しかしどうやら元には戻っていないらしい、でも上条は可愛いからいいかと結論づけてそれ以上考えることをやめた。
「それで? なんで上条さんは美琴の公演がああも違うと感じたのでせうか?」
「それはね…あ・い。私の当麻に対する愛よ愛。当麻にはそれが伝わった?」 
 美琴は満面の笑みで答える。それを見せ付けられた上条はあまりにも美琴が可愛かったので無意識に美琴の肩を抱くと頬にキスをした。
「お前、可愛すぎ。上条さんを美琴依存症で殺すつもりですか?」
「だったら私は当麻依存症で殺すつもりなのって訊きかえすけど?」
「うるせえ。それに俺もお前も依存症なんてずっと前になってるだろう」
「そうね。でもこんな依存症だったら私は死んだあとも持っていたいな」
「死んじまったら依存も何もないだろう。というか死後に結婚するとか言ったの、本気かよ?」
「本気よ。天国でも地獄でも当麻を追いかけてもう一回結婚するわ。それであの世でも私たちは夫婦になるの。どう? 幸せだと思わない?」
「………………………」
 死後に幸せなどあるのだろうかと思ったのが最初に思ったことだ。だが美琴は楽しそうに話すので上条はどんなものになるか想像してみた。
 死後の世界なんてわからない。何もない真っ暗な場所で一人取り残されるのか、マンガみたいに天国や地獄があるのだろうか、上条にはこれだといえる想像が遣いない。
 でも美琴はどこだろうとついてくると言った。天国でも地獄でも、と。
 そして一緒にいられればそれだけできっと幸せなのではないか?
「悪くはないかもな。夢がありすぎだけどな」
「夢があるからいいじゃない。それに当麻だって私と一緒にいられて嬉しいでしょ?」
「そうだな。お前となら天国だろうが地獄の底だろうが一緒にいられる気がする」
 幻想を殺す力を持つ上条は美琴の幻想を殺さず、それを受け入れた。
 本来の上条なら無意識に美琴の描くものを殺してしまうのだが、幸せになりたいと思う一人の高校三年生は美琴の夢物語に幸を感じた。なので上条もその夢物語に賛成したいと思い幻想を殺さなかった。
 上条は美琴の頭を撫でて、もう一度頬にキスをした。すると美琴も上条にキスを仕返してきてニッコリと微笑んだ。
「今日は唇に二十四回、右頬に四十六回、左頬に四十回、おでこに三十五回キスしてもらっちゃった♪」
「お前、まさか毎回毎回数えてるのか?」
「癖になっちゃったのよ。最初のうちは私は初心だったからキスをされただけで気絶してしまうぐらい幸せだった。だから幸せな回数ってことで数えてたんだけど、当麻とこの家に住む時期前後にそれが習慣みたいになっちゃって、今では毎回毎回数えてるのよ」
「ふーん。数えるね……」
 キスをしてもらった回数など上条は数えたことがなかった。今では一日に二百回は軽く越して三百回前後のキスをしている二人のうちの何割を上条が占めているのか考えたことなどなかった。
 上条はキスをしたいからキスをするのだし、美琴もキスをしたいからキスをしてくる。それを毎回毎回数えることなんて、上条は考えたこともなかった。
 しかし目の前にいる妻こと美琴はそれを数えていると言った。考えたこともない上条からすればそれは驚きであったが、実はもう一つだけ感じていることがあった。
「なあ美琴。キスしないか?」
「??? さっきからずっとしてるじゃない? それに断りなんていれてどうしたの?」
「美琴が俺のキスの数を数えているのが可愛くてな。ご褒美に上条さんの熱いキスをあげたいと思いまして」
「クスクス、なによそのセリフ。素直にキスをしたいって言えばいいじゃない?」
「……今日もお前可愛すぎだよ。上条さんはもう色々と限界に達しそうですよ。だから今の発言は撤回。ささ、キスしますよ」
 幸せそうに微笑む美琴の頬を撫でて上条は美琴と口付けを交わした。
 そして、唇を離すと上条は美琴の目を見ながら幸せそうに笑った。
「これからもよろしくね、ダーリン」
「ああ………えっと……ハニー…でいいのか?」
「よく出来ました。大好きよ、当麻」
「馬鹿にされた言い方だな。でも俺も大好きだよ、美琴」
 上条当麻と御坂美琴が口付けを交わした時、新たな物語が始まった。

<夏休みへ>
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2010/03/26 23:37 | fortissimo

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