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2024/04/30 04:42 |
トンネルの中の闇
化物語、初投稿でござる。
時間軸は、偽物語(上)と(下)の間なので、ネタバレ注意。

ひたぎの毒舌、私には再現無理でした。毒が感じられず、すみません。
そして、キャラが微妙に違うような違和感を感じられずにはいられないorz



 夏休みは8月に突入した。
 戦場ヶ原家では、今日も勉強会が開かれていた。と言っても、僕たちがする勉強会は、一方的に僕が教えてもらうようなものであって、戦場ヶ原には復習でしかなかった。
 それでも戦場ヶ原が教えてくれるのは、僕が彼氏だからなのだろう。でも、本人にそれを訊いたことはない。
「戦場ヶ原、なんで僕に勉強を教えてくれるんだ?」
「今更何を言ってるのあららくん。そんなことを言わなければわからないの、ごみ」
「全ての発言にツッコミたいところだが、戦場ヶ原、僕の名前は阿良々木だ。それ以前に、自分の彼氏の名前を間違えるな」
「彼氏?誰それ、そんな人いたかしら?」
「よく自分の彼氏に言えるよな!!そんなことを言うお前がある意味、恐ろしいよ!!!」
「あら、私はいつも恐ろしいわよ」
「自分で素直に、しかも即答で認めるな!!」
 予想はしていたが、やはり教えてくれないみたいだ。それよりも、酷いことばかり言われた。
 さすが戦場ヶ原、僕ばかり虐めて楽しみやがって。
「ちなみに、私の彼氏の特権は、私が虐めてあげることよ」
「そんな特権、いらねえ」
「でも、私は阿良々木くん以外の人を虐めたいとは思ってないのよ。それくらい、わかるでしょう?」
「わかりたくないね。どうせ、僕の反応が面白いからだろう?」
「確かに九割はそうだけど、阿良々木くん、本当にわからない」
 すでに九割に達している時点で、それが理由になっていると思うのだが。
 僕は首を横に振って、わからないと示すと、戦場ヶ原はため息をついた。
「それでも私の奴隷?そんなこともわからないなんて、どういう勉強をしてきたのかしら」
「ああ!!悪かったな、馬鹿で!!!僕は馬鹿だからお前に勉強を教えてもらってるんだよ」
「そうだったわね」
 だけど、戦場ヶ原の言った馬鹿って頭の方なのか、僕自身なのか……いや、考えるまでもなく僕だな。
 すると、カリカリとペンを走らせていた戦場ヶ原の手が止まり、いきなり僕に乗りかかってきた。そして、唇が当りそうな微妙な距離にまで顔を近づけてきた。さすがの僕も、戦場ヶ原の不意打ちには対応できなかったので、動くことが出来なかった。
 そして、唇ギリギリの位置で戦場ヶ原は止まり、僕の髪を撫でながら、囁いた。
「阿良々木くん。阿良々木くんではなくてはいけないのは、私があなたを好きだからよ」
「…………」
「殺したいほどにね」
「最後のでぶち壊しだよ!!!」
 僕はまで死にたくない。死ににくいが、死にたくない。
 相変わらず、恐ろしい愛情だ。いつしかその愛情が、僕の命を奪う日が来るかもしれないと思うと、まったく笑えない。と言うよりも、戦場ヶ原だからありえそうで怖い。
 前にも、殺すなら僕だって言われたことがあるし、本当にやりそうだな、戦場ヶ原ひたぎ。
「彼女に恥ずかしいことを言わせたのよ。喜んでもいいと思うのだけれど」
「どこが恥ずかしいんだ。あと、好きなのは嬉しいが、殺されるのは勘弁だ。と言うよりも、殺されたら好きも嫌いもなくなるだろう」
「それもそうね。その時は、私も一緒に死んであげる」
「殺人予告をするな!!!」
 表情を変えずに、会話している戦場ヶ原は、どれが本当か嘘かわからない。全部、本当かもしれないし、一部に嘘が入っているかもしれない。でもまあ、好きだというのは本当だというぐらいわかる。それだけは素直に喜んでおこう。
「それよりも、阿良々木くん。阿良々木くんは、私のことが好きなのかしら?」
「いきなりなんだよ」
「いきなり上等よ」
 何が上等なんだかわからない。
 それよりも、戦場ヶ原はいつまでこの体勢を続けるのだろうか。嫌ではないのだが、これでは動こうにも動けない。それが目的での体勢なのだが、動けるようにしてもらわないと、もしものときが怖い。
「私にここまで言わせたのに、阿良々木くんは何も言わないのかしら」
「……僕に何を言えと?」
「学習能力のないゴミはどこまでいってもゴミのままね。でも、ゴミだからゴミなのだけれど」
「僕はゴミじゃない!!というよりも、人間だ!!」
 少し吸血鬼が入ってはいるが。
 しかし、何を言えばいいんだ?僕が戦場ヶ原に質問をしてはいたが、戦場ヶ原が僕に質問なんかしてないぞ。
「阿良々木くん、私は阿良々木くんが好きよ。殺して殺して、何度も殺したいほどに」
「さっきよりもパワーアップしてる??!!」
「それほどまで、阿良々木くんが好きよ」
「それは喜んでいいのか困る返答だぞ。もう一度言うが、好きなのは嬉しいが、殺されるのは勘弁だ」
「……………つまらないわ」
 と、興味を失ったように僕から離れていく戦場ヶ原。倒された体は、自由を戻し、戦場ヶ原は勉強をしていた場所まで戻っていった。
「あの…戦場ヶ原…?」
「何かしら、阿良々木くん」
 表情が変えていないが、声には敵意みたいなものがあった。どうやら、僕は何かをやらかしてしまったみたいだ。
 しかし、さっきから思うのだが、僕は何をすればいいんだ?
「………………その、すまない」
 自然に、僕は謝った。だが、戦場ヶ原からは何も返答を得られず、シャーペンを走らせるカリカリという音だけが聞こえた。



「……………」
 居心地悪い。というよりも、戦場ヶ原が怖い。
「………………」
「……………はぁ~」
 ため息しか出ない。この状況を作り出したのは僕みたいだけど、自分で作っておきながら耐え切れない。
 本来の僕なら、この空気には耐えられず逃げ出すところだが、それは流石に出来ない。なんといってもここは戦場ヶ原の家。しかも、目の前には空気を生み出している戦場ヶ原本人がいるのだ。逃げられるわけない。
 だけど、それは言い訳にしかならない。本当の理由は、僕が全面的に悪いからだ。そして、なんだかんだ言っても、僕は戦場ヶ原が好きだからである。
「なあ、戦場ヶ原」
「…………」
「ガハラさん」
「……………」
「……………」
 カリカリとシャーペンが走る音だけが聞こえる。相変わらず、戦場ヶ原は無表情に勉強を進めている。対して僕は、目の前の戦場ヶ原と勉強をする勇気も集中力もなかった。
「……はぁ~」
 一体、なんなんだか、僕にはわからない。
 何故、戦場ヶ原の機嫌を損ねてしまったか?
 戦場ヶ原は僕に何をやって欲しいのか?
 僕には点でわからなかった。
「…………阿良々木くん、そろそろお帰りの時間よ」
 と、戦場ヶ原は言うが、勉強をやめる仕草はなかった。どうやら、勝手に帰れと言っているようだ。
 しかし、これで帰るなんて僕には出来ない。一応、こんなのでも戦場ヶ原の彼氏ですし、このまま帰ったら僕は本当にゴミだ。
「悪いけど、もう少しここにいる。やるべきことが終わってから帰るから、それまで、な」
「そう………」
 相変わらず、動揺もしない。
 少しぐらい、何か言ってくれればいいのに…と思うけど、機嫌を損ねた僕が言える立場じゃない。それよりも、僕が何をすべきかを考えないと。
 まずは、状況整理だな。
 戦場ヶ原は僕が好きだ。(整理でも嬉しいことだ)僕も戦場ヶ原のことが好きだ。(こっちは恥ずかしい)
 それで、戦場ヶ原の愛は僕を殺したいほどだ。それで僕の愛は………。
 それでもって戦場ヶ原は、僕が戦場ヶ原のことが好きなのかって訊いてきたんだよな。
「戦場ヶ原」
「…………」
「好きだ」
「…………そう」
 撃沈。
「戦場ヶ原」
「…………」
「殺したいほど好きだ」
「…………そう」
 撃沈。
「戦場ヶ原」
「…………」
「僕は戦場ヶ原が好きだ」
「…………そう」
 撃沈。
「じゃあどうしろって言うんだ!!!」
 皆様、実のことを言いますと、三回目のやり取りなのです。そして、全部の返答が以下の通りなのです。質問に答えたのだけど、はずれらしい。ならば、僕にどうしろと?!
「戦場ヶ原」
「今度は何かしら?」
「泊まっていいか?」
「お好きにどうぞ」
 意外と反応が薄かった。




 僕が戦場ヶ原の家に泊まるのは初めてではない。一応、何度か泊まったことがあるがまだ片手で数えられる程度だ。思春期の男が女の家に泊まるのはけしからん、と言うかもしれないが、まだ僕たちはそんなことをしていない。いや、出来ないのだ。
「………」
 二人分の布団を敷いて、電気は消してからどれだけ経ったのだろう。布団を敷いた辺りから、時間の感覚が麻痺している。これは戦場ヶ原のことばかり考えていたからだ(自分で言うのはおかしい気がするが)
 結局、戦場ヶ原は何も言わず、何もしなかった。それが物足りなくもあり、悲しくもあったのはMだからだ、と言うのは信じたくない。僕が信じたいのは、戦場ヶ原に元気が戻って欲しいという説だ。しかし、そうした本人が言うのは筋違いだ。でも、心からそう思っているのは信じて欲しい。
「戦場ヶ原…」
 声をかけるが当然、返事なんてない。期待はしていないが、少しだけショックだった。
「……もし、僕がお前を襲ったら……戦場ヶ原は僕を嫌いになるのか?」
 我ながら、ばかばかしいセリフだ。もし他人だったら、お前は自称、狼か!!!とツッコミを入れてるところだ。
「………」
「……何を言ってるんだ、僕は。悪い、忘れてくれ」
「………阿良々木くん」
 それは久々に聞いた声。たった数十分のことなのに、感動を覚えてしまう僕って一体。……やっぱり、Mなのか?!
「嫌いにはならないわ。ただ……阿良々木くんが幻滅するかもしれない可能性はあるわ」
「幻滅…?僕が戦場ヶ原にか?」
ええ、と戦場ヶ原が答えると、僕の方に近づいてきた。
「知っての通り、私はまだ阿良々木くんと愛し合うことは怖いわ。あの下衆なやつらを、あなたを通してみてしまいそうで怖いわ。
 私なりにもがんばって入るけど、まだ全然。想像上では問題ないのだけれど、実際だと考えると…体が震えるわ」
「…………」
「私は阿良々木くんのことが好きだけど、同時に嫌いになってしまうことが怖い。否定してしまう自分が怖い。そして、幻滅されてしまうだ阿良々木くんが……怖い」
 戦場ヶ原は、普通の女の子だと思うことはたびたびある。普段は、僕に対して暴言の嵐ばかり降らせて見えていないが、実際は繊細な部分があると思える。
 貝木の件でも、戦場ヶ原ひたぎは繊細な部分があった。あの時は気づけなかったが、今思い返すと、あれは不安で仕方なかったからだったのだろう。少しずつ、少しずつだが……そんな部分に気づけた。
「阿良々木くんには、申し訳ないとしかいえないわ。これに関しては言い訳も、一切なしよ」
「別にいいよ。それに、僕は強引に女の子を犯すような男にはなりたくない」
「そう…ありがとう」
 てっきり暴言が飛んでくると思ったが、それは場違いだ。というよりも、今はシリアス。
 明かりがないため、戦場ヶ原の表情はよく見えない。いつも通りの無表情なのか、不安なのか、いっさいわからない。だけど、声は少し……低い。
「阿良々木くん、私の阿良々木くんが好きよ。でも………愛してるまでは…まだいけないわ」
「そっか……」
「それでも、阿良々木くんを好きになってもいいかしら?」
 好きになっても、か。いつもの戦場ヶ原からは聞けそうもない言葉だ。それほどまでに、不安なのだろう。
 珍しいこともあるものだ。それとも、これは貝木の件が終わったからなのだろうか。どちらにせよ、いつもの戦場ヶ原とは雰囲気が違う。
 それでも、僕は戦場ヶ原ひたぎが好きだ。
「好きになるって許可が必要なのか?それに、いつもの戦場ヶ原なら、勝手に好きになってるだろう?」
「……それもそうね」
 穏やかな声で返事を聞いて、僕は心の底から安堵した。なんだかんだいっておきながら、心配だった。
「阿良々木くん」
「ん……?」
「好きよ」
 それは、夏のある日。戦場ヶ原ひたぎが変わり始めるきっかけの日だった。
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2009/10/25 14:11 | 化物語

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