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2024/05/04 10:17 |
紺色の宇宙
計画なしで書く書き方が一番好みですが、読み返してみると、意外と矛盾していると言うオチが多々あります。
年齢指定をいれようと思ったけど、長さで別の記事にしようと断念。また今度、書きます。

時間軸、一回目のアクアエリー(ムーンベースに向かっている時)



 アクアエリー艦内で、マリアは紋章遺伝子の研究についての得られる限りの情報を得ようと、データーベースに入っている限りの情報を抜き出そうと、検索の作業をしていた。
 しかし、さきほどフェイトと話した時の情報から、あまり進展はなかった。
「ふぅ……当然といえば、当然よね」
 あらかた調べ上げてしまった情報から、必要なものが入っていた。あとは、ムーンベースに行けばなんとかなる、しかし念のためにはと調べるのは彼女らしさと、紋章遺伝子の研究への執念によるものだった。マリアはそれを自覚しながら、キーボードを打ち続ける。 カタカタカタ、と打ち続けて何時間になるかはわからないが、休む前にもう少し、と検索の作業を進めていく。
 すると、唐突にトントン、と金属音が鳴り響く。音の先は金属製ドアであったことに気づくと、マリアは席を立ち、ドアへと向かった。
「はい……って、フェイト」
 やってきたのは、フェイトだったようだ。さきほども、来たのに何故と疑問を浮かべるマリアであったが、それよりもフェイトの様子が少しおかしいことに気づいた。
 伏せた顔、さっきとは違う雰囲気。マリアは自然に一歩下がってしまった。
「ど、どうしたの?私に用があったのだから、来たのでしょう?」
「………」
「フ、フェイト……?」
 明らかにおかしい。マリアは不審に思い、警戒した。 さすがに銃を向けたりはしないが、もしものことがあれば、足技でなんとかすればいい。悟られぬように、片足を引いて、すぐにでも蹴れるような体勢を作った瞬間、
「え……?……なっ?!」
 肩を掴まれたかと思うと、そのまま強引にベットまで押し倒されてしまった。隙を見られたのが、原因だとマリアは恥じたいが、それとは別に警戒が少し足らなかったのが一番の原因であった。
「(嘘。これじゃあ、私……)」
「……マリア」
 フェイトはそこで口を開く。しかし、声は低く沈んでいた。 マリアは、何と訊きながら、どうすればいいか考えた。しかし、体勢が不利なのはやはり痛手であったため、これをどうすれば逆転できるか考えるのは難しかった。
「フェイト……その、話したいことがあるのなら、こんな体勢じゃなくて……」
「マリア……僕は…僕は」
「フェイト……お願い…冗談は」
「………」
 カチャリと軽い音が鳴り、マリアのプロテクターは外れる。軽くなったのはいいが、これが何を指すか、マリアは予測できてしまった。
「そんな………本気なの?」
「………」
「でも………なんで?」
「………それを話したら、マリアは承諾してくるの?」
「……………」
 どんな理由であったとしても、拘束を解くわずかな隙があれば、逃げることが可能だ。嘘でもここは頷いておけば逃げることは出来たはずだ。
だがマリアは、無言を通した。無言が何を意味するのかは、当然マリアにはわかっていた。そして、この決断を後悔だとは思わなかった。
「……フェイト」
 力を抜き、マリアはフェイトを受け入れようとした。
「…………」
 しかし、フェイトはそれ以上進まず、マリアから離れた。
「フェイト……あなた」
「ごめん。少しおかしかったみたいだ」
 そういうと、フェイトはマリアの横に座って、手で顔を覆った。
 マリアはいきなりの変化に、驚きを隠せずにいた。期待をしていたわけではないが、ここまで来てやめることが、腑に落ちなかった。
 しかし、マリアはそれを問わず、フェイトのそばを離れずに、彼の行動を待った。
「……逃げないのか?僕がまた、君におかしくする保証はないんだよ」
「逃げないわ。それに、今の君は、私に乱暴をするような人じゃないもの。今の君を見れば、わかるわ」
「……マリア」
 フェイトは顔を上げる。どこか疲れたような表情で、活気がない。マリアはフェイトのつらそうな表情を見て、心を痛ませた。自分が原因ではないこととは思うが、それでも、心を痛ませずにはいられなかった。
「ごめん。それじゃあ、僕はーーー」
「待ちなさい!!」
 ベットから立とうとしたフェイトを声を上げて、立ち止まらせた。逃げるように立ち去るフェイトを、マリアは放っておくことが出来なかったのだ。
「何があったのか言いなさいよ。こんなことをして、『はい、さよなら』なんて納得いかないわよ。
 それに、私は君の相談を聞くことも出来ないほど、信頼されていないのかしら?」
「そんなわけない!!!」
 マリアが声を上げてフェイトを止めたのと同じように、フェイトも声を上げ否定した。そうして、一呼吸おいて、フェイトはさきほどの位置に戻った。
「多分、くだらない理由だと思うよ」
「聞く前からくだらないなんて言われても、わからないわよ?ゆっくりでいいから、話して」
 ありがとう、とフェイトは言って、マリアに笑顔を見せた。いつもとは違って、ぎこちない笑みだったが、安心するのには十分な笑顔だった。



「―――――あなたも、考えてたのね」
「ああ。色々なことが多すぎて、整理がつかなくなっていたからさ。少し、おかしかったんだよ」
「それもそうね。だけど、整理がつかないと、ムーンベースに行った時、つらいかもしれないわよ?」
「わかってる。わかっては…いるんだけど」
 弱音を吐くフェイトに、マリアは現実的な答えを言った。励ます方がよかったのかもしれないと少し後悔はしたが、らしくないと思ったので、そのまま言葉を繋げた。
「ムーンベースに行ったら、何が起こるかわからないわ。博士が残した情報は、もしかしたらさらにどん底に突き落とすのかもしれないのよ?君は、それに耐えられるの?」
「…………」
「耐えなければ、意味がないじゃない。お父さんが残したものを、解決しないまま重荷で感じていたら、フェイト、君は君ではなくなる」
「マリアは……どうなの?」
「私はもう決心がついてる。この先、どんなことがあっても私は受け入れて、乗り越えていくわ」
「マリアは強いな……僕が思ってるよりも全然、強い」
 弱った姿を見るのは、今回が初めてではない。だが、家族の問題は彼にとって大きすぎた。
 マリアはそれがどれだけのものか、理解できなかった。しかし、当然といえば当然のことだ。幼い頃に親を亡くすのと、ついさっき亡くすのとでは天秤が釣りあわない。マリアとフェイトは、亡くした事実は変わらないが時間と境遇が違いすぎている。それを量ることなど、出来はしなかった。
 それでも、マリアは彼に対して現実的な見解を見せた。彼には辛いことだと知りながらも…。
「強くなんかないわよ。あなたの方が、全然強いわ」
「冗談はよしてくれ。僕は……強くなんかないよ」
「……フェイト」
 父親のことは、やはりショックが大きかったのだろう。大丈夫そうだと見た目は思えても、心はまだ治せていない。
 らしくないことではあるが、と思うが今の彼には少しいいかもしれない。そう思うと、フェイトを優しく抱きしめてあげた。
「…ッ?!ま、マリア!!??」
「…………」
 自分らしくないことは尺も承知だ。このような役はソフィアが向いていると思うが、いない人間のことを考えても仕方ない。それに、少しだけ素直になれたことが嬉しかった。
「ごめんなさい。あなたを困らせたくせに、こんなことをするなんて、私らしくないわよね」
「い、いや……そういう…わけじゃ」
「嫌なら、離れるわ」
 残念ではあるが、とマリアは思いながら、離れようとした。だが、今度は逆にフェイトのほうから、抱きしめられてしまった。
「ごめん。情けないけど、もう少しこのままでいさせてくれないか?」
「ええ……いいわよ」
 返事と共にマリアも抱き返し、抱きしめあう形になった。そして、マリアは今までにない暖かさと幸福感が胸に広がっていくことを感じて、自分の気持ちを確信した。
「(やっぱり……私はあなたが…)フェイト」
「なんだい?」
「………好き」
「えっと………好き?僕が…?」
 マリアはこくんと頷いた。
「あの………少し、動揺してるみたいだからさ。ちょっと時間をもらえないか?」
「いいわよ。ただし、答えはちゃんと、ね」
 頷いて、フェイトは眼を閉じて、状況を整理した。そしてすぐに、フェイトの中で明確な答えが出た。
「そういえば、フェイト。部屋に入ってくる来てすぐに、私を押し倒したわよね」
「え……?!あ……あ、あれは……って、いきなり話を変えないでくれないか?!」
「いいじゃない。雰囲気がぶち壊しだと思うけど、気になるじゃない?それに、私の告白と関係あるなら、聞いておくべきだわ」
 どこからその根拠が出る、とツッコミながらも話がいきなり危うい方向に進んでしまったことに、フェイトは慌てた。
「まさか……あなた!!私のことを…」
「違う違う!!!誤解だ、絶対の誤解だ。誤解でしかないんだ、そんなわけないんだ!!」
「誤解って何よ!!なら、理由ぐらい言いなさいよ!」
 マリアの詰め寄り方は時々、鬼のように怖いのだが、今がそのときであった。フェイトは少し恐れを抱きながら、なんとか言い逃れをしようとした。
「いやいやいや。それだけはダメだ。よくない!絶対に!!」
「フェイト!!あなた、私のここまで言わせたのに、何も言わないって言うの?!しかも、あなたの返事、もらってないわよ!!」
 そこまで言われてしまうと、返答に困ってしまう。決まってはいるんだが、押し倒した理由とセットとなったらマリアは絶対に怒る未来を、フェイトは想像できてしまったからだ。
 だが、このままではマリアに返事を言う前に、銃で殺されてしまう危険性があったため、ため息をつき、これからもらうであろう痛い仕打ちを覚悟しながら、答えた。
「マリアが……押しに…弱いって……クリフが」
「クリフが?あなた……まさかクリフに何か吹き込まれたの?」
「いや……そうとも言えるし…そうとも言えなくはないんだけど…その…」
 説明をするとこういうことだ。
 心境が複雑だったフェイトは、仲間たちと話して気を紛らわそうと話しまわっていたときのことだ。心の整理がついていなかったフェイトは、話をしながらも時折、父親の死がフラッシュバックしていた。そして、不幸にもちょうど、クリフと話していた時に、フラッシュバックしてしまい、心の整理がついていなかったことに勘づかれてしまった。
 だが、クリフは元からそんな気がしていたとわかっていたらしく、ため息をつくだけで済んだのだが…そこからが悪かった。
「それで、困ったことがあるなら、同じ境遇のソフィアよりも先に体験したマリアに相談してみろ…て言われたんだ」
「そう…」
 クリフの判断は正しい。ソフィアもフェイトほどではないが、悲しみを感じていた。その時に、フェイトが甘えてしまってはソフィアは耐え切れなくなってしまう、と判断したのだろう。冷静な判断である。しかし…。
「それと、私を押し倒したのとは、どう関係するのかしら?」
「うぐっ!……そ、それから…クリフに言われたんだ。
 マリアは押しに弱いから攻めてみれば意外と面白いぞ。例えば、押し倒して……って、もう言わなくてもいいよね!!」
「……ええ。クリフの性格は、あなたよりもわかってるわ」
 くだらないことを吹き込ませて、自分は楽しもうって腹だったのね、と呆れた。しかし、フェイトはそれに従うような人物ではない。だから、話の筋が通らず腑に落ちない。
「あのときの僕は動転してたんだ。旅立ってから、弱音を見せることはあったけど、甘えたことがなかったから。それに……」
 フェイトはちらりとマリアを見て、顔を伏せていった。
「マリアのこと……その…気には……なっていた、し」
「え……?!」
「だから……マリアを見たとき…それもいいかなって思ってしまって……それで、ああなってしまったんだ。ごめん」
「………君も私と同じね、フェイト」
 マリアは、フェイトの手を握って顔を向き合わせ、フェイトの瞳を見た。
「フェイト……」
「幻滅してもいい。でも、僕もマリアと同じだよ」
 マリアの握る手に、フェイトは握り返して答える。そして、伏せていた顔をあげて、マリアと向かい合った。
「ねえ、フェイトはどうしたいの?」
「僕がさっきみたいに押し倒したら……マリアはどうする?」
「どうもしないわ。ただ、あなたを受け入れるわ」
 マリアはフェイトを導くように、ベットに転がった。その上にフェイトは乗っかるように移動すると、お互いに笑いあった。
「ただ、マリア…」
「何かしら、フェイト」
「さっきみたいに、雰囲気をぶち壊すのはなしだよ」
「わ、わかってるわよ、馬鹿ッ!私も、気が動転してたのよ」
 マリアは頬を赤くしながら、フェイトの胸に顔を埋める。対して、自分と同じ青い髪を撫でながら、フェイトは幸せと癒しを感じた。
「好きよ、フェイト」
「ああ。僕も、好きだ」
 そして、顔を上げたマリアはフェイトと口付けを交わし、愛情を確かめあった。



 ムーンベース、そこには追い討ちをかけるような事実が待っているかもしれない。
 しかし、フェイトにはもう不安がなかった。自分を支えてくれる相手、支える相手、一番の理解者。
 マリアの存在がフェイトをまた少し、強くさせた。
 そして、一同はムーンベースで新たな真実を知ることとなる。
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2009/10/27 23:29 | SO3

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