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2024/05/09 20:22 |
『馬鹿当麻』
思いつきの小ネタです。同時に、改行や文章の区切り方の練習であったり(批評、頼んだ)
上条さん視点だけど、第三者視点が入ってます。いまいち、第三者視点の遣い方がわからない私でありますorz
う~ん、いつになってもわからないものは、本当にわからないものです。



 すっかり定着してしまった入院生活は、上条からしてみれば珍しいことではない。
 むしろ二週間、入院することがないほうが珍しい。それほどまでに上条は入院にご縁があった。
 そして今回も、ほぼ自分用になってしまったベットので上で寝転んでいた。
「はぁ~また課題が増える。不幸だ」
 退院して学校に行くいつもの日常に戻ってしまえば、待っているのは補習と課題の地獄。それと不幸に見舞われる日々であった。
 それを思うと、重たいため息しかでないのが歯がゆかったが、こればかりは自業自得だ。
 もしあの時、怪我をしないように気をつけていれば入院をせずに包帯を巻く程度ですんだかも、とふと思ったが今更の話だった。それに、怪我をしないように気をつけてもそれは難しいことぐらい、何度も経験して知っている。なので、気をつけるだけ無駄だなと上条は怪我をせずに帰ってくることに諦めをつけた。
「俺も右腕以外の能力があればな……」
 万能ではない右手を見て、上条はまたため息をつく。そして能力のことは仕方ないかと、改めて自分が無能力者であることを実感した。
 そう思いながら、寝ようと思ったときであった。不意にとんとんと控えめにドアを叩くを音が聞こえた。どうぞーと面倒そうな声で返事をすると、おじゃましまーすとその相手はゆっくりとドアを開いて入ってきた。
「げっ! ビリビリ中学生」
「相変わらず結構な挨拶ね。でも入院中の身だし今回だけは電撃は勘弁してあげるわ」
「上条さんからしてみれば、今回だけと言わずこれからもと願いたいところですがね」
「無理ね。アンタが私に負けない限りは……あ、でも負けても多分、無理でしょうね」
「はぁ~ビリビリ中学生は成長してもビリビリすると、仰りたいのでせうか?」
「う、うっさいわね! ビリビリするのはアンタが全部悪いんでしょ! そ、そうよ……アンタが全部………アンタが」
 美琴はドアの前で真っ赤になり始めた。だが赤くなった顔が良く見えなかった上条はどうしたんだ? と首を傾げた。
「それで? 常盤台のお嬢さまが俺に何のようだ?」
「え? えっと………そう! 妹に会いに来たついでよ! ちょうど暇だったから入院しているアンタを笑いに来てやったのよ!」
「………」
「冗談よ、冗談。だからそう嫌な顔しないで」
 嫌な顔をしている上条をなだめながら、美琴は見舞い客用のパイプ椅子に座った。
 本当の理由は今言ったことではないのだが、素直ではない美琴は本音を言えるわけもない。しかし、上条は美琴が言った理由を疑う様子は一切見せずに納得してしまった。
「それで、今度はどんな女を助けたの?」
「女前提ですか、御坂さん」
「き、決まってるじゃない! アンタが男を助けるなって話は今まで聞いたことないし、アンタの周りには女しかいないんだから、当然じゃない」
「まるで上条さんが助けるのは女だけって言っているように聞こえなくもないけど…ま、今回助けたのは確かに女だよな」
「アンタってやつはぁぁぁーーー!!!」
 と、美琴は髪の毛を立たせて体の周りに青い光を発し始めた。それはまさに電撃と呼べる光であった。
 それを見た瞬間、上条は慌ててストップ! と声を上げて、美琴の腕を取った。その瞬間、青い光は何事もなかったかのように消え去った。
「お前な………病人相手にビリビリは酷いんじゃないんですか?」
「アンタが女を助けるのが悪いのよ! こう、どうしていつもいつも女なわけなのよ!!」
「はぁー? 助けたのが女だったのは偶然じゃねえかよ。それに助けたのは友達だったし、助けるのは当然だろ」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ、馬鹿! ああ~もう! 少しは他のことも考えられないの!」
「だから、さっきから何言ってるんだよ。それに他のことって、何を考えればいいんだよ何を」
「え…? あ、そ…それは………それぐらい考えなさいよ、大馬鹿!」
 もし上条が美琴の本心を知っていれば、言葉の裏に隠された本当の意味がわかったかもしれない。言葉の裏にある、自分を見て欲しいと思う本音を。
 しかし美琴の本心を知らない上条は、美琴の言っていることが矛盾ばかりで、本当は何を言いたいのかがまったくわからなかった。
 なので、意味わかんねえよと美琴の腕を握った手を離した上条は、呆れてため息をついた。
「女を助けるなとか、他の事を考えろとか……。結局、お前は何を言いたいわけ?」
「え……あ、いや……その、だから…」
「それとも、御坂さんは上条さんが女を助けることに不満でもあるんでせうか?」
「!!! な、何言ってるのよ! そそそそんなわけ、なななないじゃない…」
 一瞬、上条の質問に美琴は驚いて飛び上がりそうになった。だが、動揺を見せながら首を横に振って違うと言うと、ですよねーと上条は言い捨てた。
 御坂には嫌われてるんだし、ありえないだろうと思っている上条にとっては、質問の返答は予想通りのものであった。なので、一切の期待もしなかった。しかし少しだけ残念だと思った。
「ま、御坂が上条さんのことを心配するなんてありそうじゃないし、当然か」
「し、心配ぐらいしてるわよ!」
「へ………?」
 不意に美琴は声を上げて、上条の言葉に反論をした。
 いきなりのことであったので、言われた上条は自分の耳を疑った。しかし美琴から、してるわよともう一度念を押すように言われ、美琴が上条を心配していると言ったことを受け入れた。
「………それは、本当でせうか?」
 確認として訊いてみると、美琴はこくんと小さくゆっくりと頷いた。
「えっと………その、だな……み、御坂さん」
「……………」
「へ、返事ぐらい、してくれてもいいんじゃないか?」
「あ、うん……ごめん」
「……………」
 話づらいと、いつもと違う雰囲気に上条はどうすればいいのか戸惑っていた。
 もし確認の場で冗談よと言ってくれれば雰囲気を元に戻せただろうが、頷いてしまった時点でその可能性は潰れた。それに、今更冗談と言いそうな雰囲気でもなかった。
「えっと……御坂」
 心配していると面と向かって言われるのは、初めてだったのでなんと言えばいいか迷った。さらに上条のことを気にしてなさそうな美琴が、心配していたことにも驚きがあった。
 しかし、心配してくれていたのは素直に嬉しかった。なので上条は単純に
「心配してくれて、ありがとな。初めて言われたから、結構、嬉しい」
 恥ずかしさを堪えながら、嬉しいことを正直に告白した。
 それに美琴は小さく頷いて答えると、不意に席を立ち上がって駆け足で病室を出て行ってしまった。
「……………………あれ?」
 あとに残されてしまった上条は、何とも言えない虚しさを感じた。上条は美琴が出て行ったドアを見ながら大げさにため息をつくと、頭をボリボリと掻いた。
「なんだろう、告白に失敗したかのような虚しさみたいなものは。……なんだか虚しいんですけど」
 その問いのようなことに答えてくれる人は、ここには誰もいなかった。
 一人だけの病室で上条はもう一度ため息をついた時、近くの机においてあった携帯が鳴った。すぐさま机の上の携帯を取って開くと、そこにあったのは『御坂美琴』と言う名前であった。そして、そのままメールの内容を開いて声に出して読み上げた。
「『馬鹿当麻』……………」
 メールの内容ははその一言だけ。
 読み終わった上条はなんだこれ? と意味のわからない内容に首をかしげた。しかしメールを送ってきた美琴からはそれ以降、メールが来ることはなかった。

オワリ
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2010/04/18 23:32 | 禁書

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