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2024/05/19 13:56 |
クールアンドラブ
今回は趣向を変えて、シリアス風味です。
入院ネタでやれば…と思ったらやってる人がいたし、前に入院ネタを書いてしまったからやめました。自分で首を絞めてしまったなorz

4月27日、物語を再構築して本当に完成。
ヘタレ上条・終始シリアス・個別ルートでのバッドエンドを思わせる終わり方。
この三要素を絡ませて、まとめるなら「これは酷いwww」ですね。
しかもヘタレとバッドの二つ要素のおかげで、グダグダ感マックス。それは読んでみればわかると思います。
でもね、書いたことには後悔はないよ。なんと言われようと、ね。



 戦争が終結し、無事に平穏な日々が戻ったある日のこと。
「はぁー………」
 今日も担任の小萌先生の補習で居残りであった上条は、重いため息をつきながら下駄箱で靴を履き替えていた。
「……………はぁー」
 上条は憂鬱であった。本来なら、補習が終われば開放感を感じる場面であるが、ここ数日は帰るごとに憂鬱な気持ちになり、補習が終わった開放感を味わうことも出来ず気持ちが沈む一方だった。
 そして、その理由は正門の前にいる一人の人物にが原因であった。
 それを見てしまった上条はため息を隠せず、晴れない曇り空のように憂鬱な気持ちで昇降口を出て、正門へと歩いていく。
 そして、そこにいた憂鬱の原因なる人物、御坂美琴は不機嫌な面持ちで上条を睨みながら、身体の周囲に小さな電撃の光を放っていた。
「遅い! いつもいつも、アンタは遅すぎるわ!」
「はいはいそうですか。それは上条さんがわるうございました」
 不機嫌な美琴に対して上条は適当な返事で一蹴すると、美琴の機嫌はさらに悪くなり電撃の光が刃物のように鋭く光った。
 だが上条は電撃の光など眼中に止めず、美琴の横を通り過ぎて帰ろうとする。それにさらにもう一段、不機嫌さを増した美琴は待ちなさいと力強く叫んだ。
「待てって言ってるでしょう、このクソボケが! せっかく待っていてあげたのに、その態度は酷いでしょうが!」
「別に俺は待っていてくれなんて言ってねえだろう。それに、待ってたのはお前が勝手にしてたことだろう?」
「そうだけど…少しぐらい善意を返してもいいんじゃないの?!」
 冷たい上条の態度に、美琴の態度は少しずつ小さくなっていく。しかし上条はそれに気づいている素振りは表に出さず、美琴を無視して歩いていく。
 美琴のその背中を追いながら、待ちなさいってと上条に呼びかけるが上条は何も答えなかった。
「だから待ちなさいって! 勝手に先に帰ろうとしないでよ」
「俺はは早く帰りたいんだ。だからさっさと帰っているだけだ」
「わかってるわよ、わかってるわ。でももう少しゆっくりでも」
「嫌だね。というよりも、なんで御坂は俺について来るんだ? 常盤台のお嬢様が帰る方向と俺の帰る方向は違うだろ」
「それは……」
 常盤台の女子寮と上条の男子寮の方向がまったく違う。だから上条の言っていることは正論であり、美琴は言い返すことが出来なかった。
「それにもうそろそろ日が沈んで暗くなるだろうし常盤台の方に帰れよ。それとも俺についてくるような何かがあるのか?」
「……………ううん。ないわ」
 立て続けに言われた言葉に、美琴は俯いて首を横に振った。
 それにそっかと淡白な返事を返すと上条はそのままの帰り道をひたすら歩いていく。その背後からはもう美琴が追って来る気配は感じられない。
「……………わけわかんねえよ」
 誰に言うでもなく、上条はそんな文句を言って舌を打った。
 もやもやとした憂鬱な雲は、いまだ晴れることを知らないかのように心を覆いながら。


 ここ数日間、上条当麻の態度はとても冷たい。
 いつもならうるさく騒いで、追いかけっこをしたりするはずなのに、冷たくなってからは美琴と関わりたくないのか、あしらうような態度ばかりとっている。
 さきほどの態度も冷たかった。ただ美琴は上条と一緒にに帰ろうと思っただけなのに、上条はそれを聞こうともせず無視して一人で帰ってしまった。
 それら上条の冷たい態度は、上条のことが好きな美琴からすれば、不安であり悩みであった。
「どうしたのよ、あいつ」
 何故冷たい態度をとられてしまうのか、美琴はそのわけに一切の心当たりはない。
 冷たくなる前日までは、いつものように雷撃の槍で無視する上条を振り向かせ、上条と色々騒いで、最後は素直になれず追いかけっこが始まり、そこで別れた。
 その日までは、確かに上条は上条であり美琴への態度もいつものままであった。だと言うのに、翌日になって冷たい態度に変わりいつものことが出来なくなってしまった。
「私、何かしたのかしら?」
 冷たくなるようなことをした覚えは一切ない。だから何をしていいかわからず、どうすればいいか悩んでいた
 考え続けても仕方なかったので、気分転換に美琴は自販機にお金を入れてジュースを買った。いつもなら荒っぽい手段でジュースを手に入れるのだが、今買ったジュースの自販機は普通の自販機だ。
 思いっきり蹴ればジュースが出てきますなんてことは、この一般的な自販機には通用しないのは常識的なことであった。
 取り出し口からジュース取り出した美琴は少しやけになりながらぐいっとジュースを飲んで、ぷはぁーと酒を飲む親父のような息を吐いた。ちなみに、あたりには人はいなかったので、常盤台のお嬢様らしからぬ姿を見られることはなかった。
 だが今は常盤台のお嬢様らしさなど、美琴は求めていない。というよりも、無駄な意識だったので意識さえしていなかった。
「……不幸ね」
 ふと、自分が好きな相手の口癖を呟いてみた。だが気持ちはさらに沈んでしまい、効果としては逆効果であった。
 それを紛らわすように、美琴はジュースを一気に飲み干した。そして、ロボが勝手にやってくれるからいいかとマナー違反のポイ捨てをして、適当な方向へと歩き始めた。
「私、あいつになんか悪いことしたの?」
 そういっても答えてくる人はどこにもいない。わかっているが教えて欲しかったと、知らない誰かに頼りたかったようなことを思った。
 しかしその願いを打ち砕くようにあたりには静寂だけが残った。
 期待をしていたわけではない。だが現実の結果を目の当たりにした美琴は、少しだけ泣きたくなった。


 上条当麻が御坂美琴のことを異性と見始めたのは、戦争が終結してすぐのことであった。
 戦争が終わり、上条の日々が戻ってきたのと同時に、上条は何故か美琴のことを気にし始めた。
 最初はいつも付きまとってくる年下の少女、超能力者にして常盤台のエースである御坂美琴を、もう少し知ってみたいと思った興味から始まった。
 いつも学校の帰り道、毎日のように上条を待ち見つけたらすぐさま声をかけてくる。前はあまり気にしていなかったが、それにおかしな違和感を持った。
 上条には補習があって、いつも同じ時間とは限らない。それに学校での友人関係もある。だから放課後は通学路とは違う道を行って帰ることもある。
 だというのに、美琴は必ず上条の通学路の途中で待ち続け、声をかけてくる。まるで待っていましたと言うように。 その違和感は、何故だか心地よくもやもやとした不安定な違和感であった。
 しかし、きっかけはそこからだった。違和感を持ってからは、必ず帰り道は通学路を通り必ず美琴と会うようになった。時々声をかけてきてもスルーしたりはするが、必ずあちらから声をかけてきてそれから二人で騒いだりした。
 その時間は一日の中で一・二を争うほど楽しく、一日の楽しみになりつつあった。やることは時々命がけであるが、何故だかその命がけも美琴と一緒だと凄く楽しかった。
 そして、それから何日かたってふと上条はこんなことを思ったのだ。
(もしかしたらあいつって、俺のことが好きだなんて………)
 ちょっとした思い付きだった。別に真面目にそう思ったわけでもなく、そうだったらどうなんだろうな~と軽い気持ちでの考えだった。
 でもそんな思い付きが、毎日のように美琴が上条を待つ理由に繋がったような気がした。
(え…まさか……でも、戦争の時だって…いやその前だって……えっ、まさか、な)
 御坂美琴は上条当麻のことが好きなのかもしれない。そう考えてしまってからは、何故だか気持ちがすっきりしない。
 別に美琴のことが嫌いであるとか、想いに答えられないとか、そんなことではない。むしろ嬉しいし答えてもいいと思う。
 だがもやもやとした何かが、心の奥を覆っていて、その覆っている奥に何があるのかがわからない。きっとそれがすっきりしない原因だと、上条は気づいていた。
 しかし、気づいたところで覆っている何かを退かすにはどうすればいいのかが、わかるわけもなかった。いや、さらにわからなくなったというのが、現在の上条の現状であろう。
 そして、そのもやもやが原因となり美琴への態度が少し冷たい方向へと変化してしまった。
(御坂美琴………か)
 先ほど冷たい態度をとってしまったことを悔やみながら、上条は美琴とよく会う自販機の近くのベンチに座り、天を仰いでいた。
 秋から冬の空へと変化しようとしていた空は、星の輝きも月の明かりもない一面が真っ暗な夜の闇であった。それは憂鬱な上条の気分をさらに憂鬱にさせたが、上条は空を見るのをやめようとは思わなかった。
「……………」
 憂鬱な気持ちは一向に晴れることを知らず、さらに憂鬱にさせていく。しかしそれがわかっていても空を見るのをやめない。
 その理由は………。
「俺、お前のことが好きなのかもしれない」
 不意に上条はそんなことを言った。ベンチの周りには一切気配も感じられず、ベンチに座る上条だけがこの場に一人残されているように座っているだけだった。
 しかし上条は周りに誰もいないことを承知の上で、言葉を続けた。
「でも、まだ俺にはお前が好きなのかわからない。だからしばらくの間、時間をくれないか? ………頼む、御坂」
 そこまで言うと、上条は自分の視線を前に戻しベンチを立ち上がり、ポケットのあった携帯電話を開いた。それから上条は携帯の決定ボタンを押して
「声の録音なんて、上条さんらしくないですけど、許してくれよな」
 自嘲しながら録音した音声を保存して、電話帳を開いた。そして『御坂美琴』の名前を選択して、美琴あてにメールを送った。


 常盤台の女子寮の自室には、白井黒子の姿はなかった。
 白井からは今日の予定は何も聞いていなかったが、きっと風紀委員の緊急の召集でも入ったのだろう。白井がいないことをそのように予想しながら、美琴は自分のベットの上に倒れた。
「………ばか」
 帰り道の途中で、嫌われたとつい考えてしまっただけで涙を抑えきれず泣き出してしまった。その跡が美琴の目にはまだ残っている。
 それだけではない。その時に感じたとてつもない胸の圧迫感とずきずきと痛む胸の痛みも同時に襲った。それは今もまだ残っており、胸にぎゅっと手を置いてその痛みにまだ耐えている。
 この痛みは何かは予想が付いている。だが同時にどうすれば治るのかはわかっていなかった。
「ばかばかばか………ばか」
 美琴は自分のベットに顔を押し付けながら、何度も何度も同じ言葉を繰り返す。
 ばか…それは上条に対しての文句の言葉であるが、同時に好きになってしまった自分への文句でもあった。
 こんな気持ちになるならあいつのことなんか…と少しだけ後悔しながら、美琴はまた泣き出したくなった。
 そう、こんな辛くて苦しい気持ちにさせられるなら、別の人に恋をしたかった、と。
「ばか………ばか」
 でもそれは今更の後悔だ。別の人に恋をしたかったなんて、今の美琴には出来るわけもない。
 だって別の男の人に興味を持てるわけもなければ、上条を嫌いになれるはずもない。それほどまでに美琴は上条のことが好きで好きでたまらなかった。
 だから後悔は一瞬考えるだけで、やろうとはまったく思えるわけもない。なぜならそれは、自分の恋を諦めるのと同じであったのだから。
「………ばか」
(まだ胸の痛みは消えないけどこのままでいても仕方ないか。それに黒子が帰ってきたら厄介だし…)
 そう思って美琴は顔を上げると、涙で濡れた顔を腕で拭った。それから、自分のベットから降りて顔を洗おうと洗面所に向かう。
 そして洗面所の蛇口を捻り、出てきた水を両手ですくい顔にかけた。それを二・三回ほど繰り返し終わったあと、近くにあったスポーツタオルで顔を拭いて涙の跡が消えたことを鏡で確認する。
 鏡に映ったのはいつも通りの自分の顔で涙の跡は見る限り見られない。それがわかると、はぁーと気の抜けた息を吐いて安堵した。
(でも気持ちは晴れないままね。まあ単純じゃないのはわかってたけど)
 そんなことを思いながら、美琴はベットの上にあぐらを書いてリラックスした。そして、自分の携帯を開いてメールが一件届いていることに気づいた。
 美琴は慣れた手つきで携帯のボタンを操り、そのメールが誰からなのかメールボックスを開いて確認すると
「え…!? あいつから!!??」
 受信されたボックスには、『馬鹿』と言う名前で登録されていた上条の名前が表示されており、新着のメールは上条からのものであることを証明させた。
 美琴はそれがわかるとすぐさまメールの内容を確認するために、中身を開いた。
『気持ちがすっきりしなくてついお前に当たっちまった。すまない、御坂』
 メールに書かれた文章はそれだけ。冷たくしたのは気持ちがすっきりしなかった、それじゃあ八つ当たりじゃないと上条に内容の寂しさに怒りを覚えた。
 しかし内容がどうあれ、謝罪のメールをしてくれた素直に嬉しい。同時に上条に嫌われていないことも教えてくれた。
「良かった……よかった…っ」
 美琴は嬉しさのあまりまた涙を流してしまった。そのせいで、せっかく洗った顔もまた洗いなおさなければいけない羽目になったが、今はそれすら考えられないほど嬉しかった。
 しかしメールはそれだけじゃない。涙を流しながら、美琴はまだメールの内容が終わっていないことに気づいた。
 そしてそれは文章ではなく、添付された音声のデータ。しかも録音された音声であった。
 それを聞くために、美琴は自分の机に入れてある携帯用のイヤホンを取り出す。それを携帯に付け、イヤホンを両耳につけると、上条から送られたデータを選択し、ドキドキしながら決定を押した。
『……………俺、お前のことが好きなのかもしれない………でも、まだ俺にはお前が好きなのかわからない。だからしばらくの間、時間をくれないか? ………頼む、御坂』
「……………ありえない」
 録音データを聞き終えて一番最初に思ったことは呆れることであった。
 好きかもしれない。その言葉だけなら、嬉しさのあまりこの場で一時間踊り続けてもおかしくないほど浮かれていたであろう。しかし、好きなのかわからないからしばらく時間が欲しいと言われ続けられ、気持ちがなえた。
「ありえない。ありえないから! 言ってることが矛盾しているわよ、馬鹿!」
 好きかもしれない、好きなのかわからない。
 美琴はすでにこの言葉で上条の気持ちを見抜いている。だがそれを録音データで送ってきたことは、とても憎たらしいことであった。
「これじゃあ、私の生殺しじゃない! あの大馬鹿! しかもこういうことって本人の前で言うもんでしょうが!」
 まさか人生初めての告白ごとが、録音された音声からなんて誰が予想できたであろう。しかもさきほどまで上条のことで悩んでいた自分が、今は道化に思えてくるほどの屈辱だった。
「ああ、もうあのクソ野郎! 許せない、許せないわ! いくら馬鹿だからってこんな告白…許さないわよ!!!」
 美琴は叫びながら自分の携帯を乱雑に操作して、電話帳を開いた。
 そして電話帳にある『馬鹿』という名前で登録された人物の電話番号を選択すると、美琴は迷わず決定ボタンを押した。


 家にいる暴食シスターに食事を与え、後片付けをしていた上条は美琴から怒り狂った連絡を受け、待ち合わせによく使う自販機がある近くのベンチに向かっていた。
 真冬に近づいている影響で、今日の夜の気温は一桁台。昼間と違い、少し厚着をしていかなければ寒いと感じてしまうほどの寒さである。
 上条は外面も内面も昼間と一切変わらない。その理由は急いで来いと怒り狂った美琴に呼び出されたことと、家にいる底なしの胃袋を持つシスターのせいであるが、今はそれらの話は省略しよう。
 対してベンチで上条を待っている美琴の服装は昼間と変わらず常盤台中学指定の冬服のままであり、外見だけでは寒さ対策を行っていないように見える。
 しかし身体の体内電気を操り体温をあげている美琴は、内面ではしっかりとした寒さ対策を行っていた。が上条はその話をまだ聞いたことがないので、寒くないのかと疑問に思いながら美琴の座るベンチに近づいた。
「……………」
「悪い、遅くなっちまった」
 見るからに不機嫌な美琴に、上条は内心ではビリビリを警戒しながら気軽に挨拶を交わした。
 そういえばこうやって普通に挨拶するのって久々だなと、気が付き驚いた。しかも、久々に普通に挨拶を交わしたというのに、違和感を感じられなかったことにも気づき、それにも驚いた。
 一方の美琴は、上条と違うことを感じたのか、挨拶代わりに上条を睨みつけた。それに上条は、怒ってるなとため息をついて美琴の横に座った。
「それで、何の用だ御坂」
「………あんなことしてまだ気づかないの。馬鹿」
「あんなこと? 気づく? はて、上条さんは一体何を―――」
「とぼけんじゃないわよ馬鹿! アンタが送ってきたメールに決まってるでしょうが!!」
 美琴の叫びのような声がベンチを中心に響いた。
 それに上条は驚きながら、あれかと呼び出されたわけを理解し、あのようなメールを送ってしまったことを後悔した。
「迷惑…だったよな。考えてみれば、好きかもしれないなんてメールを送るなんてどうかしてるよな」
「そうよ………なんでそんなことをメールにして送ったわけよ。しかも丁寧に録音したデータでなんて…」
「………さあな。わかんね」
 つい数時間前のことであったが、あの時はどうしてそんなことをしたのかまったく思い出せなかった。
 まるで機械の流れ作業のように、声を録音してメールを作成、それを美琴に送信した。その時に何を思っていたのか、不思議なことに思い出せず、わかんねと同じ言葉を繰り返した。
「好きかもしれないなんて言ったときのことなんて、もう覚えてねえ。いやあの時は何も考えずにそう言ったのかもしれないな」
「それって、アンタが無意識に言ったことって解釈していいのかしら?」
「………わからねえ。俺は御坂が一人の女の子として好きなのか、今の俺にはまったくわからねえ。一人の大切な友人だってことはわかってるんだけど、まだそれ以上は…」
「じゃあ、アンタがあの時に言ったことは………嘘?」
「悪いけどそれもわからねえ。でももしかしたら、心のどこかにあった本心かもな」
 上条は美琴に何を抱いているのかがわからなかった。
 それはまるで濃霧の中に一人、取り残されるような感覚と似ていて、先が一切見えない不安と見えないことに対しての苛立ちの二つを感じていた。
 さらに考えれば考えるほど、霧はさらに濃くなり前どころか地面すら見えなくなりそうであった。
「………アンタは、私のことが好き…なの?」
「……………………」
 自分の考えが見えない上条は、唇をかみ締めながら黙り込んで、わからないと態度で示すことしか出来なかった。
「…………………そっか」
 何も答えない上条に、美琴は諦めたような表情を浮かべた。それを横目で見ていた上条だったが、その表情は見ているだけでもあまりにも辛いかったので、視線を逸らして逃げた。
 ヘタレだな俺ってと、上条は心の底で自嘲するとごめんとだけ言って、視線を地面に向けた。
「………………………………何をしたいんだろ、私」
 不意に美琴の重たい声が上条の耳に入った。上条は地面に視線を向けたまま、何も答えなかった。
「………別にアンタに言ったわけじゃないわよ。ただ…馬鹿な自分を笑っただけよ」
「………」
「……………好きよ」
「………俺が、か?」
「うん、大好きよ」
「………そっか」
 美琴の告白を上条は………
「………付き合えない」
 血を吐く思いで蹴った。
「それは私が好きじゃないから? それとも私に罪悪感を感じてるから?」
「………多分両方。でもそれだけじゃなくて、別の理由もある…と思う」
「何よ…それ」
 別の理由は上条にだけ理解できていた。何故上条だけが理解できるかと言うとそれは魔術の問題であり、美琴をもう関わらせてはいけない別の世界の問題だったからだった。
 戦争の時は事情が事情であったため仕方なかったが、今はもう違う。今は学園都市と魔術の世界は一定の均衡を保っている。
 だから学園都市側の美琴をこれ以上魔術に関わらせては、パワーバランスの問題になりうる。それはパワーバランスを壊してしまった上条だからこそわかることだ。
 そしてまだ壊していない美琴には、実際に壊さないとわからないことだった。
「………振られたの、私」
「……………わかんねえ」
「………そ、っか」
 上条は………何も考えられなかった。
 美琴のことが好きなのか、隣で涙を堪えている美琴にどうすればいいのか、自分は美琴に何をしたいのか………何も…何も…。
(ごめん………ごめん)
 身体と心が別れてしまったかのようなおかしな不快感を感じながら、上条は目を閉じた。
 好きと言えない。そんな自分が今は殺したいほど憎く、情けなかった。

<終>
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2010/04/27 22:48 | 禁書

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