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2024/05/07 09:58 |
ホワイトアフター
最後の展開は、ただやりたかっただけですw
二次創作のssってそんなものです

*『ホワイトデーのバレンタイン』の続きとなっておりますので、先にそちらを読んでおいてください



 ホワイトデーの翌日。
「不幸だ。補習のせいで今日もタイムセールを逃した」
 今月までに足りない単位取得できなければ、一人だけまた高一をやり直すことになる。
 そんな絶望的な状況に立たされている上条には、補習がない日はほぼない。
 ましてや、元々の成績が悪いせいもあり、一日でも外すと進級できる可能性はほぼ0になる。
 今更であるが、もう少し成績がよければと、上条はとても遅すぎる後悔をした。
「自業自得よ。アンタの日頃の行いがいけないのも原因よ」
「返す言葉もありません」
 隣を歩く美琴のツッコミに、上条はがっくりとしながら答えた。
 今の財産を考えれば、普段の買い物は高級品の買い物と言っても過言ではない。
 ましてや、それを二日連続で繰り返している。とても大きな痛手だった。
「ま、今日は優しい美琴先生が、アンタがどうしてもというから手伝ってあげてるのよ。感謝しなさい」
「別に持ってくれって頼んだ覚えはないんだが…いいか」
 二つある袋を一つ美琴が持っているが、実はあれは上条から強引に奪ったものだった。
 それを自分の手柄にするのはいかがなものかと思ったが、楽になったのは事実なので文句は言えなかった。
「それにしてもいきなり手伝ってくれるとは、どういう風の吹き回しなんでせうか?」
「え? ああそれは…た、たまたまよ! たまたま。別に深い意味なんてないわよ」
「ふーん………まあいいけど」
 少しだけ顔を赤くしつつ、今思いついたかのようなことを言うが、上条はこの件に特に興味を示さなかった。
 だが実は、興味を示さなかったのではなく、昨日とは変わりない美琴の態度のことをその時は気にしていたからだ。
(昨日、あんなことしちまったからなにかあると思ったけど、別に気にしていないみたいだな)
 やってしまった今だから言えることだが、美琴は年下だが、顔もスタイルも十分すぎるし性格も文句はない。まさに非の打ち所がない少女だ。
 そんな彼女を昨日、抱きしめてしまった。知り合いや友人としてではなく、女の子だと意識をして…。
 そのことに気づいたのは昨日の夜だったので、あの時は本人がいなかったこともあり、それほどまで意識はしなかった。
 だが、今は昨日のことにまだ決着を付けていない影響で、美琴のことを女の子と意識してしまっていた。
「……………」
 表面上からではわからないが、実は心の奥では少しだけドキドキと心臓が高鳴っていた。
 それは、美琴を女の子として意識してしまったからである。
 が、実はあともう一つ理由があった。
 それは、女の子と意識してドキドキしてしまうのは、上条の記憶の中ではおそらくこれが初めてだからである。
(ど、どうすればいいんだ……こ、こうなったときは深呼吸すればいいのか…?)
 故に、どうすれば自然に戻れるのか、このままで平気なのか、バレていないか。
 心情を悟られないかと様々な不安に駆られながら、上条は美琴に悟られないように小さく深呼吸をした。
(ふぅ…。少し、落ち着いたな。でもこのままだとまた再発するかもしれねえし、何か話すか)
 上条は話して心を落ち着かせられないかと、なにか話の話題になることを考えた。
 と、ちょうど今のこの状況にふさわしい話題をすぐさま見つけたので、気を紛らわすために話題を振る。
「それよりもそれ、俺の部屋まで持ってきてくれるのか?」
「ッ!?!?!? し、しししし、しかたないわね! どうしてもって言うから持って行ってあげるわ」
(別にそこまで思ったわけじゃないんだが、いいか)
 落ち着くの条件はクリアできたが、答えは少々がっくりしてしまうものであった。
 しかし同時に、少々都合がいいとも思い、別の意味で安心もできた。
(でもまあ、今日からしばらくは安心だしな……)
 上条が安心して部屋まで連れてこれる理由。それは今日はインデックスは、小萌先生のところにいるからだ。
 その理由は、昨日は美琴と付き合ったせいで帰りが遅くなり、しかもタイムセールスを逃したせいであまり多くの材料が買えず、普段より少ない夕食になってしまったためである。
 それに腹を立てたインデックスは、上条の頭を怒りに任せて噛み付いたあと、しばらく小萌先生の部屋でお世話になり、腹いっぱい食べさせてもらおうと、昨日の夜からスフィンクスを連れて、出ていってしまった。
 なので、今は帰ってもインデックスとスフィンクスはいない。
(食費は浮くけどキツイのには変わりないな。あと、小萌先生には明日もう一回土下座してお礼を言わないとな)
 インデックスのブラックホールの如き胃袋は、小萌先生には大きな負担だ。
 それでも、仕方なく引きとってくれる小萌先生には、上条は神様として崇めても足らないぐらい感謝をした。
 もっともそれはそれ、これはこれで、補習が減ることは残念ながらなかったが。
(あ、宿題があったな)
 ふと、自分の鞄の中にあった宿題の存在を思い出した。
 しかも、今回は授業で出されたものとプラスして、補習時に出されたものもある。
 いつも以上に多い宿題を思い出し、真っ青になる上条。
 その時、隣にいる美琴の存在を思い出した。情けないことで迷惑かもしれないが、手段を選んでいる暇は上条にはなかった。
「御坂。出来ればなんですが、宿題を教えてくれませんか?」
「…………………」
 上条のいきなりの頼みに、美琴は不機嫌な表情で上条を睨んだ。
 が、すぐさま大きな溜息をつくと仕方ないわねと頷いた。
「手伝えるだけ手伝ってあげるわ。か、感謝しなさいよね!」
「ああ。サンキュー御坂」
 満面の笑みを浮かべて上条は答えると、美琴は顔を背けて一人で先に行ってしまう。
 そんな態度に上条は、やっぱり嫌々なのかと申し訳なく思っていると、今度は別のことをを思い出した。
「そういえば御坂。お前、俺の部屋、というか寮の場所知ってるのか?」
 それを聞かれた瞬間、美琴の足はピタっと止まった。
「………さっさと先に行きなさい」
 知らないものらしい、予想通りの反応だった。



 上条に案内されやってきたのは、ずっと知りたかった上条の寮だった。
 美琴はこの近くは普段あまり通らなかったが、前にこのあたりで火事があったことは覚えていた。
「このあたりで前、火事があったのよね」
「へぇーそうなのか」
(あの時は確か七月二十日の夕方だったわね。まだ記憶があったときのこいつ……なのかしら?)
 記憶喪失のことは知っているが、それがいつのからなど細かいことはまだ知らない。
 なので、上条が知らないこと=記憶がないと決めきれない。
(火事があったのはこいつの寮だったのかしら。あの時、あまり興味がなかったから覚えてないわ)
 かなり前のことだったので、おそらく白井はもう覚えていないだろう。
 今更だが、あの時の火事にもう少し興味を持っておくべきだったわと密かに後悔した。
(もしこいつの寮だって覚えていたらこいつの記憶喪失のヒントになることがあったのに…)
 美琴は上条の記憶喪失は、まだまだ謎のことを考えながら、エレベーターに乗る。
 それから一緒にエレベーターを降り、こっちだと言ってくる上条の後を追いながら、周りをキョロキョロと見渡す。
 すると、上条の部屋の前、隣の部屋の標識を見た瞬間、美琴は驚いた。
(土御門!?!? そ、そういえば土御門のお兄さんってこいつと一緒の学校だったって言ってたわね。まさか…!?)
 前に聞いたことがあったので覚えていたが、まさかその兄が隣に住んでいたとは思いもしなかった。
 同時に、舞夏が上条の寮と部屋を知っていたことはほぼ確実だ。
 それを考えると、上条に用はなくとも、おそらく時々会って話しているのだろう。そんな舞夏が少しずるいと、美琴は思った。
(でもこれは訊かなかった私も私よね。それにこうして教えてもらったんだし…)
 美琴は不本意にも嫉妬に近い感情を舞夏にしてしまったことに、少し自己嫌悪した。
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
「別に…なんでもないわよ」
 少々暗い顔をしながら美琴は、上条の心配を受け流し、少し沈んだ気持ちのまま、玄関で靴を脱ぎ、揃えて部屋に一歩を踏み入れた。
 何もなかったらきっと無意識に舞い上がるぐらい喜べただろうけど、今は嫉妬なんてしてしまった自分が嫌で喜びなどなかった。
(これはきっと昨日のあれのせいね)
 あれとは、昨日上条からいきなりされた抱擁のことだ。
 あれからずっと美琴は大きな”もしかして”の期待をし続けている。
 実は昨日に渡したのは、バレンタインの時、渡せなかったチョコをバレンタインとリンクしているホワイトデーに渡そうと思ってであった。
 そして、当初の予定は付きあわせて渡すだけだった。それが、まさかあのようなことになろうとは、予想外だった。
 あいつのことだし期待しないほうがいいと思うが、そのたびに抱擁のことを思い出し、期待が無駄だと思っても期待をしてしまっていた。
 実は今日も期待をして上条を待っていた。が、昨日となにも変化のない上条に会った時、やっぱりかと諦めたはずだった。
 しかし、一度意識し始めてしまっては、期待は簡単に切り捨てられなかった。
(期待するだけ無駄かもしれないわよね。でも、期待させられちゃったら……)
「ねえ。アンタ。昨日のあれって…なんだったの?」
「昨日……?」
「ほ、ほら………あれよ。私を…その………だ、抱きしめて」
「…………………」
 最後のほうは小さくなってしまったが、頑張って伝えるべきことは伝えられた。
 上条は、二人が入った玄関を閉めて、美琴に背を向けながらこう言った。
「………御坂には、わかるか?」
「え?」
「………………………………いや、いい」
 そういうと、上条は袋とかばんを持って美琴の横を通り過ぎた。
 その時、横目で見た上条の表情は
(……………なに、よ)
 いつものと変わらぬどこか抜けたような表情だった。



(はぁー。危なかった)
 買ってきたものを冷蔵庫にしまいながら、上条は心の底で安堵した。
 記憶喪失の件でポーカーフェイスには慣れていたので、表情を隠すのは容易だった。
 もっとも、動揺を隠せたかは自信がなかったが、美琴の反応を見る限り、どうやら気づかれてはいないようだ。
(しかし、あの時のことはまだ俺もわからないんだよな…はぁ~)
 それよりも頭を悩ませているのが、昨日の抱擁だ。
 幸か不幸か、実は上条は自分の行動なのに昨日のことはわからないのだ。
 女の子として意識しては、おそらく原因の一つ。だが、それはあくまでメインではない。
 大きな理由。抱擁に至った大きな要因は、上条もまだわかっていない。
 しかし、断片らしきものはモヤモヤして隠れているが、あと少しで掴めそうなあたりまで来ていた。
(御坂、か)
 上条は台所から、机に置いてある上条の課題を睨むように見ていた美琴を覗き見た。
 何故か部屋についてから正座をして、上条の課題を睨むように見ている。
 普通に見ていればおかしな光景かもしれないが、上条はその光景に何故か違和感を持った。
(なんであんなに悲しそうなんだ…)
 雰囲気が、と言えばいいのだろう。目や動きにはそういったものは感じ無いはずなのに、上条はなぜだかそう思った。
 そして、思ってしまった時、ズキッと胸に痛みが走る。
(御坂………?)
 これも、なんで痛いのかがわからない。
 ただ美琴を見て悲しいと感じただけなのに、それだけで胸が刺されたかのように痛かった。
 なんでなのか……上条には、わからない。
「わかんねえよ…」
 だが、うすうすとモヤモヤの正体が何かを感じていた。
 それを気づかないように自分を騙しているだけだったが、それの断片にすら今の上条は気づくことはなかった。



「…………………………」
 腕を組んで考えていた。
 夕食を食べ、片付けを済ませ、課題を済ませた。やるべき事はすべて行い、あとは風呂に入って眠るだけだった。
 しかし、上条はまだそれらをするつもりもないし、美琴がまだ部屋にいた。
 その美琴は、課題をすべて済ませ、あとは帰るだけだというのに帰るつもりはまだない。
 なぜなら、上条が美琴を引き止めていたからだ。その理由は
「で、結局わかったの?」
「わかんねえ。考えてるけど何もわからねえ」
 実はいま理由が何か、探している最中だったからだ。
 少し時間を遡り、説明すると、美琴は課題が終わったあと、門限にはまだ余裕があるが、ここにいる理由もなくなり、いては邪魔になると思い、帰ろうとしていた。
 上条も美琴が帰るのに同意していた。だが、帰したくなかったので引き止めた。
 そして、その理由がわからず、上条はそれを探して今必死になぜかを考え引き止めた理由を探していた。
 巻き込まれた美琴はというと、アンタがそう言うならと帰るのをやめ、理由を探す上条を見守り続けていた。
「訊くけど、ちゃんと私が関係している理由なのよね?」
「さあ? 実は俺もよくわかんねえんだ」
「はぁ???」
 まず、美琴が関連しているかも実はわかっていないのだ。
 ただの気まぐれという可能性もあるし、関連しているかもしれない。
 しかし、言えるのは美琴にはまだここにいて欲しい。答えが見つかるまで帰らないで欲しいと、思っているのはわかっていた。
(わっかんねえ。俺は何をしたいんだ?)
 自分の考えがまったくわからない。まるで他人のことのように。
 上条は理由を探し、悩み続ける。が、長々と考えていたせいか、集中力が切れかかっていた。
「御坂。昨日のことってどう思う?」
 一人で考えるのにも限界が来たと思った上条は、美琴に先程から引っかかっている別の悩みを会話の話題として振ってみた。
 すると、顔を少々赤くしながら小さな声で答える。
「ど、どう…って?」
 その時、ドクンと心臓が一回大きく高鳴った。
「えっと………だ、抱きしめたこと…」
「ぁ…」
 恥ずかしさをこらえどもりながら答えると、美琴は顔を赤くして上条を視線から外した。
「その………どう、だったんだ?」
 上条は恥ずかしさに耐えながら、あの時のことを直接本人に訊いた。
「…………………………………」
 美琴は視線内に上条を入れず、黙り続ける。
「…………………………………」
 しばらくしてようやく、言った。
「うれしかった……わよ」
 美琴は、ようやく答えた。
 それを聞いた瞬間、上条の中で何かが壊れた音が聞こえた。
 そして、壊れた何かから求めていた”それ”が、出てきた。
「………………そっか」
 上条は立ち上がった。
 そして、視線を逸らし続けていた美琴を昨日のように、
「ふぇっ???」
 抱きしめた。
「っ!?!?!?」
 美琴は声にならない悲鳴を上げたが、上条は気にせずぎゅっと抱きしめ続けた。
 答えは、とても簡単なことだった。
(俺、こいつのことを意識しすぎて惚れちまったんだ)
 始まりはいつだったか分からないが、きっかけは昨日のホワイトデーの一件なのは間違いなかった。
 なぜなら、あれがなければ気づくのはもっと先だったか、気づかないままだったのは容易に想像できたからだ。
 しかし、気づいてみると実にシンプルで、難問だった答えにふさわしい答えだった。
 同時に、今の自分にはこのような感情は初めてで、どうすればいいかわからない感情でもあった。
「……………みさか?」
「ななななななによ!!!」
「その………だな……」
 気づいてまず最初に思ったことは、この気持ちを伝えたい、であった。
 だが、いざ言おうとすると急に恥ずかしくなり、普段どおりに言葉が出なくなる。
「あー………その、だな」
 告白するときはこんな気持ちなんだろうなと思いながら、上条は必死に言葉を出そうと努力をする。
 しかし。
「か、帰ったほうがいいんじゃないか?」
「……………はぁ?」
「あ……!えっと…」
「…………」
 出てきた言葉は、あまりにも無責任で、雰囲気にふさわしくない言葉だった。
 それに美琴は、ブルブルと怒りを体全身で表現すると、上条の右手を払いのけた後、右手を大きく振りかざし、
「アンタがそれを言うなァァァァァ!!!」
 電撃のビンタで上条を吹き飛ばした。
「帰る!!!」
 と言って美琴は怒ったまま、吹き飛ばした上条を放って早々に出て行った。
 それを倒れたまま見送った上条は、ビリビリとしびれた頬を抑えながらつぶやいた。
「最高に不幸だ」
 結果としてあと一歩という場面で不幸な終わり方をしてしまった。
 いや、不幸というよりも自業自得。言えなかったのは不幸ではなく、自分が悪かった。
 上条は無音になった部屋で体を起こし、はぁーと今日一番重たいため息を付く。
 その時、ビリッと叩かれた頬が痛んだ。
「……フラれた気分だ」
 されたことはないが、とても沈んだ気持ちはおそらくフラれた気分に近いものだろうと予測し、またため息を付いた。
 まだフラれてはいないが、おそらくこれで上条のイメージはダウンしたに違いない。
 上条は不幸すぎるとつぶやき、ベットの上に転がった。結局、それも自業自得なのだが、不幸にしないと辛かった。
 上条はまたまたため息を付いた。美琴への思う感情に気づいた代償が、イメージのマイナスであるのは、これ以上に痛いものはないと言っていいほどの代償だった。
 これから先、美琴から異性として意識され、好きになってもらえるのだろうか…。
 先の全く見えない圧倒的不利な新たな戦いに、上条はすでに不安でいっぱいであった。



「ったく!なんなのよまったく!!」
 部屋を出た後も美琴の怒りは収まってはいなかった。むしろ、出ていった時よりも怒りは増していた。
 期待を裏切られたことと、言われたとおりにすぐに帰るのを見送っていたのに、帰れと言われたことの二つにだ。
 抱きしめられて、しかもあのようにどもられては期待をするなという方が無理である。
「あーもうイライラする!!!」
 思い出すたびによりイライラする。
 買い物に付き合い、ご飯を食べさせ、課題を手伝った。いくつか自分がやりたいからやったものもあるが、だからといってあの仕打ちはひどい。
 美琴は、溜まりに溜まった怒りを発散したくなったので、いつもの公園へと向かい、八つ当たりのように自販機を蹴り飛ばした。
「もう!なんなのよ!なんなのよ!!二日連続で抱きしめて、全部空振りってなんなのよ!期待するだけ無駄だってわかってたけどするなっていう方が無理だっつうの!!!」
 バン!バン!バン!
 今までにないほどの怒りを発散するように、美琴は何度も何度も自販機を蹴り飛ばした。
 それでも警報がならないのは、この自販機が壊れているからで、美琴はそれを知っているからこれを何度も蹴り飛ばしている。
「それにアイツは人のことを抱きしめといて、あんな事を言うのか!絶対に言わないことでしょう!普通ならあの場面ならこく―――」
 まで言って、ある考えが浮かんだ。
(こ、こくはく………する、つもり…だったの?)
 それはないと、いつもなら否定をする。
 しかし、よく思い出してみると、いつものように否定する要素が、今回はなかった。
(何か言おうとしたとき、アイツどもってたわ。それに、耳がすっごい赤かったし………)
 いつもとは明らかに違った上条。普段とは、ほとんど別人と言ってもいいほど、あの時は違っていた。
 そして、どもった理由。これは、美琴だからこそ想像ができた。
(ま、まさか……は、恥ずかしくて………それで、ああ言った……)
 上条の心情を想像して、美琴は顔を真っ赤にしてうつむいた。
 可能性はないわけではない。というよりも、今までの上条の態度を考えるとある方に近いはずだ。
(まままままままままさか、ね。そそそそそそそんなことが)
 恋する乙女は、プラス思考で考え出すと止まらない。
 まだ決まったわけではないし、上条だしまた裏切られる可能性だってあることを知りながらも、美琴はこの時だけは上条が自分に恋愛感情をいだいていると決めつけ、自分の世界に入り込んだ。
 いつかくるかもしれない未来を夢見て…。


<fin>
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2011/05/29 15:55 | 禁書

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