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2024/05/07 03:31 |
ホワイトデーのバレンタイン
4月になってしまいましたがホワイトデーネタです。
一本の予定でしたが、急遽分割して二本で一作品にすることにしました。
理由は、この話以降の文章の流れでそうなってしたほうがいい話になってしまったのでそうすることにしました(^_^;)
そんなわけで最初は前編です。



 3月14日はホワイトデーであるが上条当麻にとっては無関係な日である。
 同時に、いつも通りの不幸な日であるとも言えた。
「不幸だ。補習のせいでタイムセールを逃した」
 補習終了後にはすっかりと日がくれてしまい、夕方にあったタイムセールはすでに終わった。
「またインデックスに噛まれるな。不幸だ」
 夕飯はタイムセールで手に入るはずだった鶏肉を使う予定だったが、手に入らない以上、少ない材料でインデックスの腹を死ぬ気で満足させるしかない。
 例え頭に歯型が残ろうが、噛まれて血を流そうが、貧乏学生上条にはそうするしかなかった。
「残金を考えると……最後の週まで持つかどうか…はぁ~不幸だ」
 財布に入っている金額と預けている金額を合わせても、今月はギリギリかゼロになるかのどちらかだ。
 これも全て、入院費と食費が主な原因なのは言うまでもない。
 もし今月、一回でも入院をしてしまえば、最後の週はおそらく水のみの生活になる。インデックスのことを除いても、さすがにそれだけは避けたいのが本音だ。
 水だけの生活の苦しさは、貧乏学生の胸の中にトラウマとして残っているのだから。
「とりあえず今日はこのまま帰ろうか、な?」
 と、ネガティブな未来を想像していた上条の耳に、聞いたことのある声が入ってきた。
 同時に、内蔵されていた不幸センサーが大きな反応を示した。
「……………俺は知らない俺は知らない俺は」
「堂々と気づかないふりしてんじゃないわよ!」
 怒りの叫びが聞こえた瞬間、上条はすぐさま背後を向き右手を後ろに付きだした。
 すると、上条の背中を目がけて飛んできた青い稲妻が右手によって弾かれ消えた。
「で、言うことは?」
「ごめんなさいすいません大変申し訳ありませんでした御坂様!」
 何か言われる前に、何かされる前に、上条は蒼い稲妻を飛ばしてきた張本人、御坂美琴に土下座をして謝った。
 もちろん、頭と両手は地面にくっつけ背中は綺麗に曲がった、とても綺麗な体勢でである。
「謝るんなら最初から無視するんじゃないわよ。そうすればあんなこと…」
「ですが、無視しないといけないのがお決まりになっていて」
 と反論すると、美琴の前髪から青い稲妻が上条へ向けて放たれ、上条は反射的に正座したまま右手で稲妻を防いだ。
「で?」
「大変申し訳ありません! 次からは一分一秒でも早く御坂様に気づけるように死ぬ気で努力します」
「そう。じゃあもし次無視したら超電磁砲でいくから」
 美琴はポケットからコインを取り出し、ニッコリと笑いながら上条の前に魅せつけた。
「わかった! わかりました! だからしまってください!」
 微笑みながらコインを見せてくる美琴に、上条は恐怖の大王を見たような気がした。
 そして、今度は気を付けないと死ぬかもと本気で命の危険を感じたのだった。
「ったく。アンタもいい加減に学習しなさいよね。せっかく声かけてあげてるってのに」
「命がけで声かけてもられても困るんですけど…」
「だったら命がけにならないように努力しなさい」
 上条は立ち上がり、膝についた砂をパンパンとはらった。
「それで、なんか用でもあるのか?」
「へっ!? よ、用!?!?」
 というと、何故か美琴は驚いた表情を浮かべた後に視線を逸らした。
 だが、鈍感な上条には何故視線を逸らしたのかがわからず、変なことを言ったのかと、先ほど一体自分の言葉を思い出してみる。
「……なにかおかしな事言ったか?」
「…………はぁ~」
 何も分かっていない上条の表情を見た美琴は呆れた表情を浮かべながら、小さな声で馬鹿みたいと呟いた。
 それからまた溜息をつくと、アンタと上条に呼びかけて、
「今日は何の日か知ってる?」
「知らない」
「少しは考えろ!!」
 質問に即答をされ、怒りのあまり上条にまた電撃を放った。
 上条はそれを打ち消した後、すぐさまごめんなさいと何度も何度も美琴に土下座した。
「もう一度聞くわよ。今日は何の日か知ってる?」
「……………………」
「………はぁ~。もういいわ。全部わかったから」
 今日が何の日か、上条には本当に心当たりがなかった。
 強いて言うなら、今日は何故か女子からずっと見られていたような気はしたが、それがなにか結局何もわからぬまま学校は終わり、今に至る。
 要するに、上条には今日がホワイトデーであることを、気づくようなイベントがあっても気づける思考は持ち合わせていなかったのだ。
 これに美琴は、安心すればいいのか不安になればいいのか、なんで気づかないのか、覚えていないかなど様々なことを思っていたが、それを表に出さなかったので、上条はそれにも気づくことはなかった。
「じゃあ一ヶ月前のことも覚えてないわね」
「一ヶ月前…………………ああ、入院してたとき、お前が来たことか?」
「!?!? なんでそんな覚えてもいないようなことを覚えているのよ!」
「忘れたくても……忘れられないほど、あの時は色々とされたからな…」
 一ヶ月前といえば、また魔術のゴタゴタに巻き込まれていき、入院をしていたときのことである。
 たまたま病院に来ていた美琴に、たまたま入院している姿を見られ、不運にも何故か電撃のビンタをもらい、何故か巨乳好きがと言われ、もう一発電撃のビンタをもらったことである。
 あの日は、あの後もインデックスに頭を噛まれたり、何故か御坂妹に酷いことを言われたり、何故か土御門に腹パンをもらった不幸な日だったので嫌な意味でよく覚えていた。
「巨乳が好きだと勘違いされて電撃ビンタをされたのは、嫌な思い出です」
「あ、あれは………あ、アンタが巨乳の人の胸ばかり見てるからよ!」
「はぁ!? 見てねえよ! というか、あの時は神裂と五和と話してただけだろう!」
「ええいうるさい! 巨乳好き!!!」
「もうわけがわかんねえよ…」
 いつも以上に突っかかってくる美琴に、上条は心のそこから不幸だと思った。
 急いで買い物へ行かないと命に関わるかもしれなかったので、雑談をするのは嫌ではないが今は雑談をしていたい気持ちではなかった。
「結局、何? 特に何も無いから帰るぞ」
 雑談で少し時間を食ってしまい焦りが出てしまったせいか、口調が少しだけ荒くなってしまった。
 美琴はそれに当てられたのか、驚いた表情を浮かべた後、不安そうな表情を浮かべながら、
「そ、そのさ………少しだけ付き合ってくれない?」
 か弱い女の子の声でお願いをしてきた。


 やってきたのはとあるデパートの食料品のコーナー。
 ここに来たのはもちろん、美琴との頼みを聞いてのことであった。
「「………」」
 しかし、頼んだ美琴と頼みを聞いた上条の表情は嬉しさや楽しさとはどこかかけ離れていた。
(頼みを聞いてここまで付いてきたのはいいけど、あれから何も言ってないな。やっぱり何かあったのか?)
 先ほどから美琴は雰囲気が若干儚げなく、表情も少し暗い。
 また上条は気づいていなかったが、視線は上条には向けないように意識して避けてもいて、少し様子も変であった。
(ただ付いてくるだけなわけないよな。じゃなきゃ、こんな所に来ないし)
 デパートの食料品コーナーに付いていくだけなんてありえはしない。
 予想できるとすれば、なにか品を選ぶか、買うかのどちらかだ。
 しかし、それが何かは今の上条にはまだ気づくことが出来なかった。
「アンタ、今日が何の日か知ってる?」
 不意にずっとだんまりしていた美琴から、質問をされた。
 一瞬だけ、ずっとだんまりしていた美琴ではなく他のお客の声かと思ったが、すぐに先程の似たようなことを言われたことを思い出し、美琴に質問をされたのだと理解した。
「今日が何の日…………あ」
 そして、今日が何の日かを考えながら、あたりを見回してようやく答えを見つけた。
「ホワイトデー」
「ようやくわかったのね。さっきからいろいろなお店に書いてあったのに気づかないなんて…」
 ホワイトデーは知っていたが、それが今日だったことは忘れていた。
 というよりも、ホワイトデーの思い出が一切なかったので、今日という日が何かを思い出す情報があまりにも少なかった。
 また、先月のバレンタイン時には入院中だったので特にそれらしいことはなかったので、余計に思い出すことが出来なかった。
「だったらなんで俺が連れてこられたんだ? ホワイトデーは男が女にプレゼントする日だろ」
「それぐらいわかってるわよ。とにかく今はついて来なさい」
 美琴の思惑を理解出来ない上条は、今は言われたとおり従うのが一番だと思い、疑問を全部飲み込んでついて行った。
 そして、一店の高級な店に連れてこられた。
「た、高い…高すぎる」
 品には上条でも手をつけられるものが多々あった。
 だが、美琴が見ていたのは一つ3千円以上もするチョコレート達。中には、一箱で一万以上もするものさえあった。
 それを見た上条は、顔を真っ青にして不幸な買い物をさせられるのではないかと今一番想像したくない予想した。
 しかし、顔を真っ青にした上条を見た美琴は一つため息を付いた後、違うわよと上条の予想を否定した。
「これは私が買うのよ。別にアンタに買ってもらおうなんて考えてないわよ」
「そ、そうですよね…ん? 御坂が買う…のか?」
「そうよ。おかしい?」
 買うことは別におかしくもなんともない。買いたいのなら買えばいいのだし、上条が口出しする理由もない。
 しかし、今日はホワイトデーだ。普通なら立場が逆なのでは、と真剣にチョコを見ている美琴に疑問を持った。
(これなら俺、いらなくないか?)
 自分の買いたいものを買いに来ただけなら上条が来る必要もない。だというのに、連れてこられた。
(買わされるわけでもなければ、選ぶわけでもない………なんなんだ?)
 と、腕を組んで考えている間に美琴は決めたチョコをレジに持っていく。
 それを見た上条は、慌ててその後を追って一緒に並んだ。
「なんでアンタが一緒に来てるのよ」
「な、なんとなくだ。それに、周りを見るとなんだか心細い」
 今の自分には場違いな高級感あふれる商品たちの中にポツリといるのは、場違いだからと思ったからだ。
 それと、見るからにカップルだと思える男女や彼女持ちの男、あとは美琴とは少し雰囲気が違うお嬢様の雰囲気を持つ女の子など、周りの人達に雰囲気負けしていたからでもあった。
 だから、この場では美琴と一緒に入れば少しは雰囲気に入れると本能で思ったからだった。
「まあわからないでもないわね。それに買ったら店をすぐに出るつもりだったから都合はいいわね」
「そう言っていただけるとありがたいなんて上条さんは思ってますよ」
「変なところで変なことを気にするのね、アンタ」
「今日がホワイトデーだから余計なんだろうな……不幸だ」
 ホワイトデーと気づいてから、どうにもおかしな意識をしてしまう。
 それはきっと周りの雰囲気に当てられただろうだからだからだろう………けど……。
「いらっしゃいませ。プレゼントでしょうか?」
「え? あ、はい」
「少々お待ち下さいね」
 そういうと店員は商品を慣れた手つきでササッとプレゼント用の紙で、商品を包んでいく。
 それからリボンの色を選んでと言われ、美琴は上条の顔を一瞬だけちらっと見てからオレンジ色を選んだ。
「なるほど……君、彼女の彼氏よね?」
「えッ!?」
 いきなり店員さんに話を振られ、上条は驚きあまりなんと言い返せばわからず顔を背けて逃げた。
 それを見た店員さんは、ふっふっふっと面白そうに笑って、
「初なのね。でも若いうちはそれでいいのよ。応援するわね」
 上条はこんなことを言われてどうなっているか気になってチラッと美琴を見た。
 すると、互いの視線がぶつかってしまい、急に恥ずかしくなって目をそらしてしまった。
「ふっふっふ。はい、彼女さん。頑張ってね」
「………はい」
 美琴は顔を真っ赤にしながら店員さんから商品をもらった。
 それから、すぐ店から逃げるように急ぎ足で店を出る。その後を追うように上条も急ぎ足で店を出た。
 その二人の姿は店員さんの言ったとおり、初なカップルそのものだった。


 店を出て二人が逃げ込んだのは階段だった。
 ここは人が少ないので、周りを気に必要も特にない。まさに落ち着けない二人には絶好の逃げ場所だった。
(お、落ち着け! べべべべつにおかしなことじゃないだろう。あれはただの勘違い。勘違いだ!)
 上条は胸に手を置いて、胸をドキドキさせている自分に何度も何度も言い聞かせた。
 そして、落ち着いたのを見計らってチラッと美琴のほうを向くと、
「「ッ!?!?!?」」
 まるでタイミングを合わせたかのように、視線がぶつかり合ってしまい、またドキドキが戻ってしまった。
(これで三回目だよな! 二度あることは三度あると言うが、このことなのかよ。不幸だ)
 上条は心の底で不幸だと大きなため息を付くと、不思議なことに気持ちが少し落ち着いた気がした。
 それから落ち着いて考えてみて、振り向く前に一声をかければすれ違わずに済んでいたことに今更気づき、三度の視線のぶつかり合いが無駄だったことにはぁーと重たいため息を付いた。
「御坂」
「はい!?」
「……………」
 驚いた美琴の声から、飛び上がってしまうほどびっくりしていた美琴の表情が目に浮かんだ。
 オーバーなように思えたが、思い返してみれば自分もそうだったなと思いながら上条は心の奥で苦笑いをした。
「そんなに驚かなくてもいいだろう」
「うううるさい!!! そそれでなによ!!」
 どうやら会話だけならば、問題なさそうであった。上条はやっと先に進めるとほっとひと息をついて、
「それで、さっき買ったチョコはどうするんだ? うおっ!?」
 尋ねた瞬間、背筋がゾッとした。それから反射的に背後を向いて右手を付きだした。
 すると、青い輝きが右手へと襲いかかり右手に接触した瞬間、消え去った。
 だが青い輝き、電撃はそれだけでは終わらなかった。
「うおっ!! ま、待て! 死ぬ!! 上条さん、死んでしまう!!!」
 電撃は勢いを止めずに、上条に襲いかかってくる。が、よくみると美琴から電気が漏れているように見えた。
 つまり、漏電。この電撃は上条を狙ったわけではなく、近くにいた上条に偶然向かっていってしまっただけなのだった。
「ふにゃー」
「ふにゃーじゃねえよおおおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」
 上条は漏電を止めるために、美琴に向けて右手を伸ばし肩に手をおいた。
 同時に、漏電の影響で電気が落ちてしまいあたりが真っ暗になった。
「はぁー不幸だ」
 怖い目にはあったが痛い目にはあっていないのは不幸中の幸いだった。もっとも、周りへの影響は不幸ではあったが。
「ああああああああああんた!!! いいいいきなり変なこと言うな!」
「別に変なことじゃないだろう。気になったから聞いただけじゃねえか」
「そそそそうだとしてもよ!!!」
 別におかしくもないだろうと心のなかでツッコミを入れて、もう元通りになっていた美琴の肩から右手を離した。
(………)
 その時、少しだけ名残り惜しく感じた気がしたが、気のせいだと思いこみ話を続けた。
「はぁ~。で? 教えてくれないのか?」
「………………」
「御坂?」
「…………………………」
「へ?」
 美琴の手にあったチョコレートの箱。それが今、上条に向かって突き出されていた。
 つまりこれは…。
「……………」
「えっと……………これは?」
「ッ!?!? いいかげんにしろ! この鈍感!」
 いつまではもらわず、それどころかここまでしても気付かなかった上条に耐え切れなくなった美琴は、箱を野球のボールのように全力で上条に投げつけた。
 それを上条は、鍛えあげられてしまった反射神経で上手く取り、投げられた箱を見た。
「……………えっと、マジ?」
 この期に及んでまだ疑いを持っていたが、美琴の目にはうっすらと涙を浮かべていたことに気づき、本当だと理解した。
 そして、上条は驚きとその奥にある喜びで頭が真っ白になり、何をすればいいのかわからなくなった。
「……………」
「………何かいいなさいよ」
「…………何を言えば、いいんだ?」
「それぐらい自分で考えなさいよ」
「…………………………わりい。なんて言えばいいか思いつかねえや」
 今のこの気持ちを言葉で表すのは簡単だった。
 しかし、上条はそれではなくもっと別の何かを言いたかった。が、良い言葉は見つからず何と言えばいいのかわからなかった。
「いや…だった?」
「それはない!」
 嫌だったらこんなに悩むはずはない。
 上条はその気持ちだけはすぐに否定をした。
「嫌なわけねえよ。もらって嬉しかったし、それに…」
「それに?」
「それに……それに…」
 上条が先ほど言いたかったのはここだった。この先を続けたかったが続けられず、やはり何と言えばいいのか思いつかなかった。
 そうしている間にも電気は戻り、美琴の姿もはっきり見れるようになった。
 そして、上条は…。
「……………………」
「まあいいわ。それを聞けただけでもう十分よ。電気も戻ったしここを―――」
「御坂」
 これを本能というのだろうか。それとも………。
 上条は自分でもなんでこうしようと思ったのかはよくわからない。でも、これだけは止められなかった。
「え? ななななななな!?!?!?」
 上条は初めて小さい女の子の身体を抱きしめた。
 今までのこんなことをしたことはなかった。それに普段の自分を思い返すと、何よりもらしくないし、わかってもいないのにしたのが腑に落ちない。
 しかし今回は、らしくなくても理由がなくてもいいと上条は思った。
「悪い。あとで電撃でもなんでも喰らう。だから今だけはこのままでいてくれ」
「いいいいいてくれって………」
「頼む」
 きっとこれはホワイトデーでさっきの店員さんのせいだな。
 上条はそう決め、ゆっくり眼を閉じて美琴の暖かな人のぬくもりを感じた。


続く
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2011/04/10 14:42 | 禁書

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