ちゃーりーさん(40000のキリリク)の『しばらく会えなかった二人が久々に再会して甘える美琴』ようやく完成です。
22巻がちょうど発売していたのでそれを使ってみました。なのでネタバレ注意です。
今回は『再会』の部分まで。『甘える』はこの作品のアフターとして書こうと思ってますw
それとゲコ太ストラップを使えばよかったと今更後悔ですorz
22巻がちょうど発売していたのでそれを使ってみました。なのでネタバレ注意です。
今回は『再会』の部分まで。『甘える』はこの作品のアフターとして書こうと思ってますw
それとゲコ太ストラップを使えばよかったと今更後悔ですorz
戦争が終わって二ヶ月以上が過ぎた。しかし彼女、御坂美琴にとっては二ヶ月間は倍以上の期間だと感じ、長い長い時間であった。
様々なことがあり予定よりも開催が遅れてしまったが一端覧祭も無事に終わり、クリスマスが過ぎ、大晦日・元旦を実家で過ごし、学園都市に戻ってきて、いつもと変わらぬ学校生活を送っていた。
だが、その二ヶ月の間、大きく変わってしまったことが一つだけあった。
「…………………馬鹿」
はぁーと重たいため息をつきながら、美琴は自分のベットに転がった。
そしてため息の原因となったケータイを枕の近くに置くと、もう一度ため息をついて天井を見た。
「いつになったら連絡が来るのよ。あの馬鹿」
美琴が言ったあの馬鹿とはもちろん、上条当麻のことであった。
彼と最後に会ったのは何ヶ月も前。学園都市で彼の記憶のことを知ってしまい、自分の中にあった想いを自覚した後に会った。
あの時はいつも以上にテンパってしまい、結局すぐに別れてしまったが、今思い返すとあの時にもっといれば何かが変わったかもしれないとどうしても思ってしまう。
しかし後悔はそれだけではない。
他にも海外から連絡を貰った時や上条を追っていった時も。後悔は尽きることなく沸いてくる。
「でも、馬鹿は私もだわ」
結局、上条が悪いと思っても全てを上条のせいには出来ない。
もっと自分に力があり必要とされる存在であったなら、今この状況をどうにか出来たかもしれない。
もし力があったらこんな思いもせず、いつも通りに過ごせたかもしれない。
いつもと変わらぬ日々。上条を見つけ、声をかけて、馬鹿みたいに騒ぐ日々。それで時々付き合ってもらって遊ぶ日々。
でもそれは、今は叶わないかもしれない願いなのかもしれない。
だって彼は………。
「はぁ~」
美琴は自分のベットに寝転がりながらケータイを閉じてため息をついた。
ここ二ヶ月間、何かあるとすぎにため息をついてしまう癖がついてしまった。
それも上条がいなくなってからすぐにであった。
「またため息ですの、お姉様」
それを聞いたルームメイトの白井黒子も呆れてため息をつくと、今までしていた風紀委員の作業を一旦中断して席を立った。
「するなとは言いませんが、癖になりつつあるのは感心しませんわね」
「わかってるわよ。それより、仕事は?」
「集中力が切れてしまいましたの。それに、少し休憩するにはいいと思いまして」
白井はそう言って美琴の向かい側のベットに腰をかけた。
「そういえば風紀委員の仕事って最近どうなの?」
「基本的に何も変わっていません。でもしいて言うなら、夏ごろのサイクルに戻ったと言うべきでしょうか」
「そっか。相変わらず大変なのね」
「まったくですわ。秋はとても忙しかったので、冬になれば楽できると思ってましたが、蓋を開けてみれば楽できるわけありませんの。でも、当然と言えば当然ですので残念だとは思いませんでしたわ」
風紀委員の仕事は白井の言うとおり、楽が出来るものではない。
いつ事件があるかわからない学園都市では、これほど楽できない仕事は風紀委員以外に存在しないだろうといわれるぐらいものであったのだから、楽などできるわけない。
だから白井は楽できることを期待していたのではなく出来ればいいなと思う程度。現場担当だったので、余計にそうであった。
「初春のようなバックアップなら楽できたかもしれませんけど。まあこの思いは初春に八つ当たりして返しますわ」
「ほどほどにね。やりすぎるといじめになるから気をつけない」
「それなら問題ありませんわ。わたくしは初春に何をやっても許される立場ですから」
「世間ではそれを職権乱用というのだけど…黒子と初春さんなら問題ないか」
と言って美琴はニッコリと笑った。
それに白井は、お姉様…と驚きの表情を浮かべた。
「何よ? 私が笑うのがおかしいの?」
「いえ……ただ、そんな風に笑ったのはいつ以来だっただろうと思いまして」
「ああ…………………………そうね」
美琴はそれには否定できず、頷いて俯いた。
思い返してみれば、こんな風に笑えるようになったのは本当に最近だった。
二ヶ月間の最初の方は泣いてばかりで顔色がいつも優れていなかった。学校に行ってもそれを心配する生徒や教師も数多くいた。
美琴はとにかく大丈夫と作り笑いを浮かべて誤魔化していたが、戻ってきて一週間も経たずに学校内で倒れてしまい、しばらくリアルゲコ太にお世話になるハメになってしまった。
その間も病院内にいた妹たちやクラスメイトたち。白井と初春、佐天。それに枝先もお見舞いに来てくれる日々をしばらく過ごした。
そして退院したのは一端覧祭前日。
当日の一端覧祭は、母親の美鈴、友達の初春と佐天。そして白井と周り楽しい日々を過ごせた。一つだけ、カケラが足らなかったが。
「顔色が少しずつ良くなったのは一端覧祭が終わってから。そしていつも通りに近づいてきたのは年明け。まだ完全回復までは…」
「そう、ね」
「……………いえ、訂正します。今のお姉様に完全回復はありえませんわね」
「………………………」
美琴は頷くことも否定することもなく黙った。
それは完全回復に必要な彼のことを白井は知っていて、自分では完全回復させられないことを白井が知っていたからであった。
だから美琴は白井を気遣い、心の底で自分に馬鹿と言った。
「相変わらずお姉様は優しいですのね。黒子としては確かに嬉しいことですけど、同時に悔しいことでもありますの」
「うん………」
「でもそんな甘い部分は黒子は大好きですわ。だからこそわたくしはお姉様を諦め切れませんの」
「うん………」
「……気分転換に散歩でもしてきますわ。お姉様もご一緒しますか?」
「……………たまには、いいか、な」
美琴は言葉少なげに答えるとケータイをポケットに入れて起き上がり、マフラーと手袋に手を伸ばした。
胸の内にあった複雑な思いとイメージを振り払いながら…。
季節は冬。しかも放課後。
太陽がほぼ沈みきり、夜の闇が姿を現し始めた学園都市の光景は美しくはあったが、同時に危険な香りも漂わせてた。
「今日も冷えますわね。これなら今日の予報も頷けますわ」
「確か雪が降るんだっけ? 学園都市に雪が降るのは決して珍しいことじゃないけど、今年になってまだ雪が降ってないから珍しい気がするわね」
「おかしな話ですわ。12月は毎日のように降っていたのに、1月になってからはまだ雪が降っていないのですから」
「そうね。本当に不思議ね」
まるで嵐の前触れのよう。もしかしたら雪が降るときにアイツが帰ってきたりして…。
そこまで考えて美琴は、またそんな都合のいいことをと自分の考えに呆れ、ため息をついた。
「またため息ですの」
「わかってるわよ。でも、なんか出ちゃうのよ」
「それが癖というものですわ。お姉様もしない意識していかないと本当に癖になってしまいますわよ?」
「だからわかってるっつうの! 何度も言わせないでよ」
隣を歩くしつこい後輩にまたため息をつきたくなったが、今度は意識していたのでする前にやめられた。
「まあいいですわ。それよりもどこまで行きましょうか?」
「アンタ、散歩に行くと言っときながらどこに行くか決めてなかったの?」
「いえいえ。わたくしはお姉様の意見を尊重しようと」
「それはつまり私に決めさせて黒子はそれにしたがって付いて来るだけ、ということよね?」
「ご名答ですの!」
「誇る部分じゃないでしょうが!!!」
美琴は前髪部分から雷撃の槍を白井に向けて放つが、白井の能力で雷撃の槍は地面に直撃し黒い焦げ後を残した。
そして白井は美琴の背後に回ると、美琴のスカートの中に手をいれ、短パンを能力で脱がせた。
「ッ!!?? 黒子オォォォ!!!」
「お姉様にはこれは必要ありませんの。なので黒子はこれをおか……いえ、お姉様の成長のために大切に保管をしておきますわ」
「大切に保管しなくてもいいわ!!1 というか、おかずって言おうとしたわよね!!??」
「はて? なんてのことでしょうか?」
「いいから返しなさい! それがないとすーすーして嫌なのよ!!」
美琴にとって短パンは制服の一部同然だ。それがなくては違和感も感じてしまう。
さらに短パンがないと走ったり蹴ったりしにくい。もしいつも通りの行動をして気を抜くと、スカートの下を見られてしまう。それは女の子としてとても恥ずかしい。
「返しなさい!! じゃないとここで超電磁砲を」
「そんなことをしたら周りにも被害が出てしまいますわよ? それにわたくしの能力をお忘れですの? お・ね・え・さ・ま」
「くっ!? ここが寮の中だったら…」
さすがに外では人の目があるので大胆な行動は出来ない。
長めのコートを着てきさえいれば、それが影になって少しは動けたが、今はただの制服姿。今更であるが美琴はコートを着てくればよかったことを後悔した。
「それ、どうするつもりなのよ?」
「もちろん、黒子はこれを持ったまま散歩しようと」
「なら帰るわ。人の短パンを持っている子とは散歩したくないわ」
「あぁんお姉様。釣れないですの」
「だったら返しなさい。じゃないと本当に帰るわよ?」
仕方ないですわねと本当に残念そうな表情を浮かべながら、白井は美琴に短パンを返した。
そして美琴は周りに誰もいないかをを確認してすぐに返された短パンを履いて、黒子に微笑んだ。
「さ~て黒子。どうなるかわかっているわよね?」
「え…? お、お姉様。それはあまりにも突然に」
「安心していいわよ。すぐに真っ黒になるだけだから♪」
「待ってくださいですの!!! 話せば」
「んじゃ、久々に思いっきり行くわよ♪」
その後、白井の断末魔とその周辺が停電になったのは言うまでもないことである。
「はぁ~久々にきっついのを頂いた気がしますの」
「あら? もっとして欲しいの?」
「喜んで…と言いたいですが、また周辺を停電させられたらたまらないので遠慮しておきますわ」
とりあえずあの場から逃げた二人は、とにかく遠くまで走って逃げた。
常盤台の生徒で風紀委員であるのに、停電をさせてしまったなどばれたら、寮監に何をされるかわかったものではなかったからである。
また、やばいことをしたら逃げるのが世の中の鉄則でもあったので、それに従ったまでである。
「それにしても随分遠くまで逃げてきましたわね。これならすぐに帰ったほうがいいかもしれませんの」
「そうね。結構走っちゃったし、ゆっくりと散歩したとはいえないけど気分転換にはなったし、このまま帰っても―――」
いい、と言おうとした。が、それから先の言葉は出なかった。
「お姉様? どうかしましたの?」
「……ははは。無意識って怖いわね」
美琴は小さく、でも泣きそうに笑った。
美琴は素直じゃないくせにおかしなところで素直になってしまい弱々しい自分を笑った。
結局、無意識にここを目指していた自分に、笑えた。
「この自販機。まったく、一番の馬鹿は私だわ」
「お姉様…?」
「ホント、馬鹿よね。散歩だって言うのは本当は口実だって知ってたくせに素直じゃないんだから。本当に馬鹿。馬鹿よ、私は」
美琴は、笑っていた。でも白井にはそれは表面上だけで、本当は泣いているように見えた。
そして美琴も自分の笑みが嘘であることに気づいていた。
だからと言って、なんて表情を浮かべればいいかも思い浮かばず、彼女は一人で泣きながら笑うしかなかった。
「アイツがいなくなってからずっと避けてた。友達と通るときは仕方ないから意識しないように考えていた。一人でいるときもここだけは行かないように頑張ってた。でも………やっぱりダメだよ。ここは、忘れられない」
小さくも大きな思いと悲しみを声に乗せて歌う。
切ない物語を読むよりもよっぽど切ない。感情そのものが声になり耳に入ってくる。
「上条当麻。馬鹿よね、何度も言うけど馬鹿。でも……やっぱり………ううん馬鹿だ。結局、馬鹿なのよ」
もし神様がいるのなら殺してやりたい。
ふと白井は、そんなことを思った。
「もう言葉じゃ表せないほどの馬鹿。何もかも全部が馬鹿。だけど……だけど……」
白井は切なすぎる歌に耐え切れず耳を塞ぎたいと思ったが、踏みとどまった。
それだけは決してしてはいけなかった。裏切れることだけは、絶対に出来ないと気づいたからだ。
だから白井は持っていた金属矢で自分の左手を刺し、切なさに耐えながら観客を続けた。
「それよりも馬鹿は私。力がない、頼りにされない、止められなかった。明るい未来の可能性なんていくらであった。私にはその可能性があった。でも、馬鹿だったから私には何も出来なかった」
「ッ!!??」
「たった一人の男を守ることも出来なかった情けない女。それが私。結局耐え切れずに行ったけど何も出来ずに帰ってきた女。それが私。そしてこの学園都市で待つ女を気取って行動しない馬鹿な女。それが、私。御坂美琴よ」
そして美琴は馬鹿と呟くと、なじみの自販機と向かいあい頭を下げた。
「…………………帰りましょう。黒子」
「そうですわね」
(神様。私に幸せは…………)
美琴の質問に神様が答えるわけがなかった。
寮の近くに帰ってきたときには夜になっていた。
停電した場所を避けてきたので少し遠回りしすぎたためだが、これも散歩の一環だと思えば気にする理由はなかった。
「左手、大丈夫?」
「これぐらい、どうってことありませんわ。それにこれはお姉様が気にするようなことではありませんの。ですから心配しなくても問題ありませんの」
「左手に穴を開けてるのに心配せずにいられないわよ。帰ったらリアルゲコ太の薬を塗って包帯もつけて上げるから今はちゃんとハンカチで押さえておきなさい」
美琴と白井のハンカチで巻かれた白井の左手の出血はだいぶ良くなってきた。しかし左手に穴を開けたとなるとしっかりと手当てをし医者に行く必要がある。
帰ったらこのことを寮監に相談した方がいいかと思いながら美琴は白井の左手の傷が大事にならないことを祈るばかりだ。
「ありがとうございます。お姉様」
「いいってことよ。それじゃあまずは手当てをしないと」
そうして離している間に常盤台の寮の正面玄関を視界に捕らえた。
「ん? あそこにいるのは」
正面玄関の前に黒いコートとフードを被った見るからに怪しい人物。
常盤台の寮の前にいるには相応しくない不審者のような格好にも見える人物は、体格からして男だろう。
「追い払いましょう」
白井の考えに美琴は頷くと、先ほどまで見せていた悲しい表情を全て打ち消した常盤台の超能力者としての表情で、常盤台の正面玄関の前に向かっていく。
そして、声が聞こえるあたりまで近づいた時に―――――――気づいた。
「ぁ………嘘。そんな……嘘」
「お、おねえ…さま?」
「何よ……それ。嘘……なんで……だって、そんな………嘘よ」
気づいてしまった。それに動揺を隠せなかった。
「なんで………なんで、こうなってるのよ。……こんな、こんな展開……」
黒いコートを着た男は二人のことに気づき、こちらを向いた。
その顔に、美琴だけではなく白井も顔色を真っ青にした。
「う、そ……。そんな、まさか……あなたは」
コートの男はフードをゆっくりと、その顔を月明かりの元に晒した。
そして男はうれしそうに笑うと、よっと言って挨拶した。
「久しぶり。元気にしてたか」
ツンツンした短めの黒髪。子供っぽさが残る笑み。
そしてよく知った顔。
「とうまッ!!!」
上条当麻がやっと帰ってきた。
彼は愛しい歌を唄ったへ
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