忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/18 14:54 |
memories 第2話
今回も手直し部分が多かったですが、目立った修正はしないようにしてます。
あの頃と現在。文章読んでるとすっごい昔に書いた作品に思えてなりません。
それにしても日本語をしっかり出来ていない文章が多すぎて、泣けました。これは勉強、したほうがいいか…(;・ω・)



第2話 最初の頼み

 三月三十日。
 上条当麻は慣れない自室のベットに寝転がりながら、あっという間に過ぎた昨日を思い出していた。
 日は沈み代わりに月が出て夜になったかと思うと、時間は瞬く間にすぎていき、気づいたころには日付が三十日に変わっていた。それが指すのは、記憶の失ってからの初めての一日、初日が終わりを迎えたことを意味していた。
 初日が終わったところで上条が感じたものの中には、特に目立ったようなことはなく、その状態を感想として述べるならば"無感動・無関心"だった。
 記憶がないといっても、見たことや感じたこと、経験したことなど、全てが過去の記憶の何かを示すわけではない。
 これからあることは記憶上では初めてのことばかりだろうが、経験するに当たって記憶があるかないかは実際にはその時になってしまうとあまり関係しない。
 一部の例外として出会いは別だが、毎回起こることを初めてだと実感することの繰り返しであったら進むものも進まないと、上条は思った。
 しかし、それが指すのは出会いだけで、その中身である"出来事"とは別問題だ。
 ふと上条は床の布団に寝ている少女、御坂美琴に視線を向けた。
 美琴は布団の上でスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。心地よさそうに眠る寝顔は上条への警戒心がほとんどなく、その気になれば美琴を襲うことも出来るだろうと不謹慎な自信を上条に持たせてしまうほどであった。
「……ったく、少しぐらい警戒しろって」
 記憶を失ったといっても上条は年頃の男だ。美琴を襲わないと自身を抑えきれる確証はなかった。だというのに美琴は、年頃の男の部屋に泊まり、その男と二人きりになる年頃の女の状況を理解出来ていると言うのに、泊まっている。
「お前は………ッ!」
 上条は寝転がっていた身体を起こすと美琴の寝顔に手を伸ばそうとした…が伸ばす前にやめた。何やってるんだ俺は、と伸ばそうとした手を見て上条はもう一度寝転がり直して部屋の天井を見つめた。
 部屋の闇に慣れてきた目には、白い天井が明かりをつけていたとき以上に鮮明になって見える。自分の部屋だと言うのに、綺麗過ぎる天井のカラーリングは眠たい目には効力らしいものはない。
 それでも、今一番の悩みである自身の記憶のことを紛らわすことだけに関してはいい効果を出していた。
「まったく。あいつ、本当にわかってねえよな」
 上条は文句を言うような口ぶりで言った。そして、昨日の最後の最後に起きたあの出来事を、もう一度振り返った。


「私と付き合わない? 恋人として…さ」
「……………………………………………………は?」
 一応言葉は出たが、理解するのには一分以上は必要とした。そして、何を言われたかに気づくと改めて
「………マジですか?」
 とまるで夢のような出来事がこの場で起こってしまったので、それが本当に現実で、本当に言われたことか、すぐには理解できていなかった。
 しかし、上条の反応は至極当然であったのは美琴にも十分わかっていた。まだ会って数時間しか経っていない他人がいきなり恋人になってくださいと言う展開は、上条からしてみればマンガのような展開でしかないと思っていたからだ。
 それは『知識』だったので生き残っていたが、いざその現状に立たされると『知識』なんてものは意外と役には立たないものだ。その例として、今の上条である。
「御坂さん。今の私は起きてますよね? 生きてますよね? 聞き間違えてないですよ? 恋人と言いましたか? 私、上条当麻もそれが何かを理解しているつもりですが突然の出来事についていけないというか―――」
「だあぁーーー!! うるさいうるさいうるさーい!! 何度も何度も繰り返さないでーーー!!!」
 冷静に分析をしていそうであったが、実際は言った美琴自身もこの通り混乱している。だが上条は、状況の混乱と本当のことかの疑問に挟まれている状況に立たされていたので、美琴が混乱していることに気づける余裕もなくお互いに何がなんだかわからない混乱状況なのが、この場での現状であった。
「ですが、何が何やら、今世紀最大の爆弾を今ここで落とされた並みに衝撃的でございまして、何がなにやらと大切なことなので何度も繰り返してみたりしてもですね、わからないというよりもわからないんですよ、はい」
「だから黙って静かにしてそれ以上変なこと言わないで!!!」
 美琴は真っ赤になりながら、冷静になろうと努めた。のだが、冷静になろうとすると無意識に雷撃の槍が上条に対して放たれてしまう。
 さらに努めようとするとは逆方向に、さらに混乱してしまう方向へ走っていっているのだが、今の美琴本人はそれに気づけるはずもなかった。
「こらっ! やめろ! 死ぬ!! それ、死ぬって!!!」
 反射的に右手で防いでいたが、時間がたつごとに威力と放たれるスピードが上がっていく状況に、上条は自身の危機的状況のおかげで少しずつ冷静さを取り戻していた。
 逆に美琴は、時間がたつごとに冷静さとはかけはなれていた方向へと走り続けているのだが、やはり本人はそのことに気づいていなかった。
(言っちゃった!! 言っちゃったけど!! いや、嘘よ嘘!! でも、嘘じゃないわよね? うん、違うわ言ったのよ、あいつに。こ、恋人……って。でもそれってあんなこともこんなこともあいつにしてもら……いや違う違う!。忘れたの!? コイツは鈍感なのよ! 気づけることも気づくことが出来ないのよ! いやでも、今回は……はっきり言っちゃったし、まだ会って数時間しか……だけど、その……こいつだし……だから、その……わたしは………彼女に………)
「お、電撃が終わ…………あれ? 御坂、さん?」
 不意に雷撃の槍の嵐はぴたっと止み、美琴は静かになったのだが、少々様子が変だ。
 気になって上条は、右手を美琴に伸ばそうとした時であった。
「…………………………ふ」
「ふ…?」
「……ふにゃ~」
 情けない声とともに、方向性のない強大な青い稲妻たちが美琴の周囲から一気に広がった。
「ぎゃああぁぁぁーーーーー!!!! 不幸だーーーー!!!!!」
 この後、上条はこの言葉が出た時、全力で美琴に触れなけれて電撃を打ち消さなければならないといけないことを知ることとなった。
 それと、さりげなく記憶の失う前に言っていた自分の口癖を、言ったことに気づいていなかった。


 しばらくして、今の自分の状況を理解した二人はベットの上で正座をしながら向かい合っていた。その光景はまるでお見合いでもするかように見える。
 だが実際はそれよりも程度の小さい問題なのだが、このような状況に立たされたことが今までなかった二人は、何と言えばいいか迷っていた。
「………えっと、まずは話題を、振り返りましょう」
「…は、はい。そ、そうですね」
 ガチガチになりながら目上の他人と話すように敬語を使う二人。先ほどまでの友人と話す態度が知らぬ間に崩壊していることに、二人は気づく余裕もなく一杯一杯のまま話は続く。
「今、さっき俺は御坂に恋人になって欲しいと言われた。以上」
「あ……うん」
 美琴は真っ赤になった顔を隠したくていつも以上に俯いた。一応冷静ではあるが、恥ずかしいと思う気持ちはどうにもぬぐえ切れていないようだ。
 そして鈍感なのは相変わらずの上条は、美琴の変化によく気づいておらず、単純な一言でこの質問の回答として済ませる。
「俺は別に構わないけど……いいのか?」
「………だったら………うん」
 色々とあったが意外とあっさりとした終わりを迎えることとなった。
「でも俺でいいのか? 記憶は失う前は友人だって言ってたけど、今は記憶がないから出会って間もない知り合いだぜ?」
「……………あ。ならさ、こうしてみない?」
 と美琴は上条の横に座りなおし、肩を寄せて言った。
「『友達からのスタート』じゃなくて『恋人からのスタート』」
「なんだそれ? 言葉を変えただけじゃないか」
「ホント、ロマンがないわね。そういったところはアンタらしいわ」
 呆れ半分嬉しさ半分で美琴は言った。同時に、自分の期待を裏切ることを言うのはアンタらしいことかなと思った。
 一方の上条は少しだけ考えていた。実は上条の答えはイエスとノーの間であったが少しイエスよりであった。だが答えの立ち位置が微妙なラインだったので素直にイエスとは言えなかったのだ。
 その理由は自分と美琴との年齢の差と強度の差、そして何故他の男ではなく面倒なことを背負っている自分なのかの理由がわからなかったからだ。
「一つだけ、訊いていいか?」
 美琴は頷くと、肩を放して上条と少しだけ距離を置いた。この姿勢だと言いにくいことかもしれないと思った、美琴のさりげない優しさだ。
 そして上条は、三つの疑問の中から特に気になった一つだけを決めて、訊ねた。
「よりにもよってなんで俺なんだ? いきなりすぎてよくわからねえし、告白されたのはすげえ嬉しいけどさ、その理由が俺にはまったくわからねえんだ。それに……」
「それに…?」
「俺は御坂の友人関係をまったく知らないけどさ、他にも男友達がいたらそっちの方がいいって思う。なのに、記憶を失った俺にしたのはなんでだ?」
「…………………確かに。アンタの疑問はもっともね」
 そうね、と美琴は天井を仰ぎながら昔を思い出していた。あの頃、『上条当麻』時代を復活させるように…。
 そして美琴は一つの決別として今まで言いたかった言葉を、上条に言った。
「私は上条当麻が好きだった。ううん、今でも好きなのよ。アイツのことが」
 上条は………何も言えなかった。それは今は亡き『上条当麻』を指していることはわかっていたので、自然に罪悪感を感じてしまったからだ。例え記憶を失っても、ここにいるのは上条当麻である、とさっきの美琴との会話でわかっていたから…。
 美琴は上条の些細な変化を察したが、その部分には触れず話を続ける。
「さっき命を救ったって話したでしょ? あの時にね、もう恋愛感情はあったんだと思う。積極的なアプローチもしたし、振り向いてもらえるように努力もした。だけどアンタは鈍いからさ、まったく気づいてくれなかったのよね~」
「は………あはは」
 今も過去も関係なく自分のことを言われていた気がしたので、とりあえず笑って逃げた。鈍かった点については他にも色々と言いたかったが、話が進まないので美琴はいいわと、仕方なくその部分を見逃すことにした。
「だったら自分から言ってやるって思ったんだけど………結局言えなかったのよ。たくさんのチャンスはあったんだけど全部、棒に振るっちゃって、気づいてみれば………。好きだって気づけたのに結局、『上条当麻』は死んだ。そう……思ってたわ」
「『思ってた』?」
「でもアンタは何にも変わらない。だから私は今のアンタも、前の『アンタ』も好きなのよ。そして、両方とも同じ感情を持っているのよ。『好きだ』って思える気持ちを、ね」
「………………」
「恥ずかしいけど、この際はっきり言うわ。記憶がなくても私はアンタが好き。この感情に嘘はないわ」
 話し終えた美琴は今まで感じたことのない清々しさを感じていた。たくさん悩み、たくさん苦悩し、たくさん諦めかけたことを、今ここで全て吐き出せたことは今まで感じ得なかった達成感を、美琴に与えていたのだ。
 しかし一方の上条は今度は別のことで悩んでいた。質問の答えは明確で上条も納得は出来ていた。だが美琴への恋愛感情は一方的であることに新たな悩みとして頭を悩ませたのだ。だが、こればかりは美琴本人に聞いた方がいいと思った上条は自分が思っていることを素直に言った。
「お前は………いいのか? 俺はお前が好きかもわからないんだぜ?」
「………なんだ、そんなこと」
 美琴は何を今更と笑って、さっきの言葉をもう一度繰り返した。
「だから私は『恋人からのスタート』って言ったのよ。それに、私は片思いでもいいって思って『好き』って言ったのよ? だから、アンタは余計な心配をしなくてもいいのよ」
 美琴の提案は上条を完全に納得させるものではなかった。むしろ、それは報われない結果になるかもしれない先の見えない闇の決意だ。これから会うかつての友人たちに、上条は好意を抱く可能性だってあるというのに、美琴は『それでも』と言っている。
 しかし、それが上条の自身の中にあった苦悩を大きくする。そして、この時美琴は上条が苦悩していたことに気づけず、上条は何故苦悩するのかこのときはまだわからなかった。
「………後悔、するなよ」
 罪悪感は胸の中に広がり、どす黒い感情は勢いは増すばかりだった。


 閑話休題。
 上条は隣で寝ている美琴のことをもう一度思い返してみた。
 美琴は記録と違って、忙しい印象を受けた。いきなり怒ったかと思ったら、静かになって、またすぐに怒る。電撃を浴びせてくるし、上条を想うようなことをいっさい言わない。
 でも裏を返してみれば、上条のことを一途に思う乙女だった。様々な表情をして、感情的な姿は本当に超能力者で一途に想う乙女か疑問を持つが。
 しかし、それらは全て上条自身に繋がることだった。美琴の姿は今見ている自分だけのものなのか、他人でも同じ姿なのか今の上条にはいっさいわからなかった。が、それが何故だかとても悔しかった。
「…………くそ」
 何故、女の子一人の告白に苦しまなければならないんだと、上条はため息をついて思った。もしあの時、首を横に振っていればこんな気持ちにならずに済んだだろうに、どうして自分はまだ他人である美琴のことをここまで想わなければならないのだろうか、出口のない迷路を走りまわされているような気分だった。
 記憶がない自分には美琴との時間は何を思わせるか?
 記憶がない自分を美琴はどのように思っているのか?
 記憶がない自分は美琴を好きになれるのか?
「ったく、わからないことだらけじゃねえかよ」
 上条は悪態をついて、布団を被って寝ることに努めた。
「………アンタ、起きてるの?」
 不意に聞こえた美琴の声。上条は被った布団から顔を出し、小さな声で起きてると答えた。
「そっか……ねえ、一日を振り返ってどうだった?」
「別に特に思ったことはねえよ。あえて言うなら、常盤台のお嬢様が上条さんに告白してきたぐらいでせうかね」
「な、なによ……文句あるの?」
 別にと上条は答えたが、心の底では別のことを考えていた。
(俺はお前が好きなのか……?)
 それは『上条当麻』への問いだった。もうここにはいない自分は、一体何を思っていたのだろうか、と。
 そしてこのときが上条が初めて記憶がないことを憎んだ瞬間であった。
「でも俺はお前のこと、よくわかんねえ。まだ会って一日も経ってないから、好きか嫌いかもわかんねえよ。だから今は、何も言えない」
「…………」
「わりぃ、小言だ。気にするな」
 上条は何を言ってるんだと、自分の言葉に疑問を持った。対して美琴は、布団から起き上がり上条のベットに腰をかけた。
「………御坂?」
「そんなことぐらい、わかってるわよ。むしろ、アンタが受け入れてくれただけでも十分すぎるのよ」
「そうか? そのあたりことは、まだよくわかんねえや」
「それよりも、アンタが私のことで本気に考えてくれることが…嬉しい」
 そこまで言われて上条は、自分は記憶のないことよりも美琴とどうやっていけばいいのかに苦悩をしていたことに気づいた。
 そしてさきほど口走ったことは、美琴に訊いていることなのだとも気づいた。
「御坂。俺、恋人とどう接すればいいか知らないんだ」
「……うん」
「だからさ、そのあたりを教えてくれないか? そうしてくれたら、答えが出るかもしれねえ」
「……それは私への初めてのお願いと受け取っていいの?」
 初めてのお願い……上条はそう言われ、あることに納得できた。
「ああ。記憶の中では、俺が初めてする、一番最初の頼みだ」
「いいわ。アンタの『初めて』の頼みだしね」
 そう言って美琴は嬉しそうに笑うと、自分の布団に戻っていった。ベットに残された上条は胸が少しだけ楽になり、もう眠れるなと思いながら目を閉じた。
 そうして時間は静かに流れていった。

<第3話-1へ>



この話のちょっとした余談。
・第2話のポイント
1.5話に近いですが、話の筋上で2話になってます。
一言で言うなら、1話で収まらなかった部分の補足。最後の場面の続きですね。
恋人とはどういう意味だったのか?
それを聞いて上条はどう考えたのか?
の二つがメインですね。
説明と心理描写を気をつけるのは、1話とほとんど同じです。

読み返して思いましたが、短いのでこれは1話に組み込んでもよかった気がしますね。ま、別にいいかwww
PR

2010/06/11 23:46 | memories

<<Slow love 1 | HOME | memories 第1話-2>>
忍者ブログ[PR]