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2024/05/05 07:47 |
memories 第3話-1
修正完了。
話はまとめサイトと同じに区切ってあります。
そして意味のわからない表現や間違った言葉を使いすぎててへこんだorz



第3話 日常の記憶

 トントントンと、規則正しいリズムを刻む音で上条は目を覚ました。
 晴天の空の明るい光が窓から部屋を照らしている。上条は光のまぶしさに目を擦りながら、ベットから起き上がった。
「あ、おはよう。どう、眠れた?」
 美琴の声は眠そうではなく、すでに目覚めた者の声であった。対して上条はまだ完全には眠りから覚めてなく、おうと情けなく返事をした。美琴はそれを聞いて、相変わらずねと言って微笑んだ。
「朝飯を作ってるのか?」
「まぁね。もう少しかかるから、顔でも洗ってくれば?」
 上条はそうすると手を上げて答えると、洗面所に向かって歩いていこうとした。のだが…。
「あれ…?ぐごがぁ!!」
 ベットから降りた瞬間、何かで足を滑らせ顔面から床に落ちた。その上からちょっと大丈夫?!と美琴の慌てた声が聞こえた。そして、これが記録に書かれていた"あれ"だと理解して、上条はため息混じりにいつもの口癖を呟いた。
「…不幸だ」
 上条当麻は、どんな状況でも常に不幸であった。
「ホント、相変わらずね。毎朝こんな感じだったのかしら…」
「……毎朝こんな起きていたと想像したら、上条さんは毎朝鬱になってると思うんですが」
「でもまあ、こればかりは私にはどうしようもないわ。それよりも、いつまでそうしているつもり?」
 もっともなご意見です、というと上条は起き上がってひりひりと痛む顔を摩りながら、転んだ原因を手に取った。
「なんでこんなところに、マンガ雑誌があるんでせうか?」
「ああ。それはさっき私が読み終わったやつ。ちょうどこの場所にあったのね」
 一人で納得をする美琴。だが上条からすれば原因を作った美琴をこのまま黙って見過ごすほどこのときは機嫌が良くなかった。
「なんでお前は人のベットの下に雑誌を置いてるんだ!! しかも、ちょうど立つ位置に!!!」
「しょうがないじゃない。私だって、悪気があったわけじゃないのよ?」
「悪気があろうとなかろうと、上条さんの不幸体質はお前もよく知ってるはずだろう!!! お前が少し注意すれば、上条さんは床にキスをしなくても済んだんだぞ!!!」
「なによ! 私のせいだって言うの?!」
 美琴は朝ごはんのしたくをそっちのけで台所から出てくると、上条に怒鳴り返した。こうなるといつもの通りのケンカだ。
「どう考えてもお前のせいだろうが!! 雑誌がここにあることも、雑誌を置いておくことも!!!」
「アンタが勝手に踏んだだけでしょう!! 私は何もしてないわよ!!!」
「嘘付け!! 雑誌を読み終わったら、机においておくもんだろう!!! なんで床において置く、床なんかに!!!」
「なっ?! 偉そうなこと言ってるけど、アンタだって床に教科書や雑誌を巻き散らかしてたわよ!!!」
「それは記憶の前の上条さんであって、今の上条さんでは関係ございませんよー」
「なんですって!!!!」
 上条が美琴を責めている会話が、知らない間に今の上条と前の上条の態度が違っていると言う方向へと変わっていたことに二人は気づいていない。そして、台所で火の元を放置していることにも気づいていなかった。
「今の上条さんは、そんな間抜けなことはしません。生活だってしっかりするし、身の回りの整理だってお茶の子さいさいです」
「よく言うわね。どうせアンタのことだから、実際にその状況に立たされたらなんにも出来ないんでしょうけど」
「その言葉、そっくりそのまま返させて頂きますよ。常盤台のお嬢様」
「……アンタ、お嬢様お嬢様って馬鹿にするのもいい加減にしなさい!」
「本当のことではなくて姫? 実際にその状況に立たされたら何も出来ないって言うのがお姫様・お嬢様の基本だろ?」
「アンタはお嬢様に何を想像してるのよ!!」
「目の前の中学生にだが、何か?」
 当然だろとでも同意するような表情を見せられ、美琴は我慢の限界を越えた。
「……そうよね。記憶を失ってもアンタはアンタのままだってことを、気づいたばかりじゃない」
「………………………………えっと…………あの御坂さん。上条さんはものすごく嫌ーな予感を感じたんですが」
「だったら我慢しなくても、いつも通りに電撃を浴びせて問題ないわよね」
 一応、恋人となったと言うことで電撃を使うことを自粛するつもりだったが、変わらない上条の態度はそんなことをしなくてもいいと言っているように聞こえなくもなく、自分から進んで行おうとした気遣いが馬鹿みたいに思えてきた。
 そして美琴は、上条に電撃を浴びせることはやめなくてもいい。むしろ、良い刺激になると判断しいつも通りでいいやと心の中で決定を下した。
「とりあえず、アンタは元気そうだし何発でもどんな威力でもいけるわよね?」
「やめてください美琴様。ここで電撃なんてものを出されたら、電化遺品のみならず壁まで真っ黒になって大変な部屋になりそうです! そして、わたくし上条当麻が死にます!!」
 上条は反射的に土下座をして美琴に許しを願った。上条の言うことは確かに筋が通っているのは美琴にも理解できる。だがそれで許しているのであれば、日々上条を追いかけたりしていない。
「とりあえず。もう一回だけ、床にキスしてくれないかしら? もちろん、私の電撃で♪」
 もうぶち殺し確定なのですねと、上条は気づくころにはこの部屋は修羅と化していた。そして、今日も不幸な一日が不幸に始まったなと実感して上条当麻の二日目が始まった。


「……御坂、何か言うことは?」
「うぅっ…でもあれはアンタが」
「火の原因は上条さんにはございません。というか、火の扱いぐらい心がけて置けよ」
 二人は今の部屋の真ん中で正座しながら向かいあっていた。上条の言葉に面目ありませんと美琴はしゅんと小さくなった。対する上条は二日目で見るも無残な姿に変わってしまった部屋へと変わってしまったことにため息を隠せなかった。
 あの後、美琴が無我夢中で上条に雷撃の矢の嵐を放つことに夢中になった結果、台所の火の始末を疎かにしてしまい、それが原因で出火。騒ぎにはならずに済んだもの(もっとも騒ぎにならなかったのは上条の部屋だからという住人たちの暗黙の了解があったからだが)の、結果とし部屋の壁と床が真っ黒に焦げてしまい、唯一無事だった部屋のは洗面所と風呂場の二部屋だけであった。
 そして、この現状に上条は美琴を責め立てていた。当然、火の原因に関しては美琴も全面的に認めたため、責任に関しては美琴が追うこととなったが、一番痛い目に会った上条は不幸だと思いながらこれからどうやって生活をすればいいかと頭を悩ませていた。
「それにしても、この部屋どうするんだよ。これじゃあ、ここで生活できないぜ?」
「とりあえず、業者に連絡してみない? それなりのとこ知ってるからなんとかなると思うんだけど…」
「でもこの部屋が直るまでかなり時間がかかるだろ? 下手すれば追い出されるし…はぁー不幸だ」
 上条の心配はこの部屋を追い出されることであった。いくら自分の住まいでも度が過ぎた迷惑は、他の住人にも迷惑を与え運が悪いと追い出されることだってある。
 現実にも、うるさかったり、自分勝手な振る舞いを行ない、出て行って欲しいといわれる住人も少なくないことぐらい上条も知識として知っていたので、いい気になどなれるわけがなかった。
 もっとも上条の事に関しては、寮の住人も管理人も理解しているし学園都市は能力者の集団。大規模な出来事があっても、納得がいってしまう出来事も少なくはないが、記憶を失った上条にはそれがまだよくわかっていなかった。
「大丈夫よ。一日耐えれば、前とは比べもにならないほどの腕利きだから」
「上条さんはその業者さんの腕ではなく、その住まいに関して頭を悩ませているのですが?」
「一日ぐらいホテルでいいじゃない?」
「とても簡単はご意見ありがとうございます! でも上条さんの生活費ではホテルなんて無理です!!」
 一応、どれだけのお金を持っているか昨日のうちに確認してある。はっきり言うと、上条はホテルに一日泊まることも命がけだった。
「大丈夫よ。私も一緒だし、払ってあげるから」
「…………はい?」
 美琴は自分がいつも行う(と言っても稀であるが)ことを何事もなく言うが、それがどのようなことを招くのか未だに美琴は理解していなかった。
 対する上条は、一瞬だけそれもいいかもと思ったがホテルに泊まると言う選択肢の事の大きさにすぐに気づきそれを全力で拒否した。
「ダメダメダメだ!! ホテルなんて絶対にダメ!!!」
「別にいいじゃない。そんなにこの部屋がいいの?」
「そういう意味じゃねぇよ! 大体、お前は俺と一緒にホテルに泊まるって意味、理解してんのかよ!!」
「部屋が別々だから気にすることようなことにはならないと思うわよ。それに私だってそんなことぐらい心得てるわよ、馬鹿」
 美琴は赤くなりながら答えた。一応、男女が一緒の部屋は危ないとわかっているようだ。
「それにホテルに泊まるって言っても、アンタが想像するホテルじゃないわよ」 
 そういう意味ではないんだけどなとそれ以外にも様々な心配があったが、細かいことは後に決めればいいかと宿の件は保留にすることにした。
「……その話はあとでいい。それよりも、朝飯はどうするんだ?」
「うーん。どこかコンビニで買ってくしかないわね。私としては、作った朝ごはんを食べて欲しかったんだけど、それは持越しね」
 残念だわと肩を落しながらも、美琴は携帯電話を取り出すと業者に連絡をする。上条はこの件は任せようと思い、とりあえず着替えようと着替えの洋服をタンスから持ち出すと、別室の洗面所に向かった。
「無事だ……でも喜べねぇ」
 洗面所だけが綺麗であることは少々複雑であったが、とりあえず考えないことにした。全部真っ黒よりはいいかと思い、顔を洗ってパジャマを洗濯物とし洗濯機に入れ、今日初めて着る私服に袖を通した。
(はぁー上条さん、恋人同士の件もあるけど、他にも色々と面倒でなんだか複雑ですな)
 上条は悩みが尽きないことに頭を抱えながら、美琴の元に戻った。


 上条と美琴は邪魔にならないように部屋を出て、とりあえず最寄のコンビニで朝食を買おうと歩いていた。
 時刻は九時前。この日は春休みの真っ最中であったため、学生はいても制服姿の学生の姿はほとんどいない。しかし校則で外出時も制服着用の美琴は、常盤台中学の制服を着て歩いていた。
 上条は厳しいもんだなと思いながらも、昨日一日で見なれてしまった制服をもう一度見てみた。ベージュのブレザーに紺系チェック柄のスカートとどこにでもありそうな制服だが、細かい部分はお嬢様学校らしく高級感があるオーラーのようなものを今もずっと感じる。
 もしこれを弁償するとなるといくらになるだろうと、一瞬考えたが泣きたくなりそうな金額になりそうなので考えないことにした。
 対して比べるように自分の服装を見た。細かい解説をする前に、心が折れそうだった。
「…? 深刻そうな顔してどうしたの?」
「いえ、階級の差を実感していただけです」
 中身はお嬢様らしくないが、見た目はどう見てもお嬢様だと嫌でも気づかされてしまったことに上条は涙を流しそうになった。そして、横にいる自分と美琴とでは圧倒的に何かが違うと感じてしまい、並んで歩く姿は一切つりあっていないのだろうと思った。
 だが美琴はそんなことをいっさいお構いなく、上条の横を普段通りに歩いていた。
「そういえば、アンタの部屋にこれがあったわよ」
 というと、美琴はスカートのポケットから携帯電話を取り出し上条に差し出した。
「あん? 携帯電話?」
「そっ。アンタのケータイよ。部屋の中におきっぱなしだったから、持ってきておいたわよ」
 美琴から渡された携帯を手にとって、開いてみると電源がついていなかった。これでは話にならなかったので電源をつけてみると、デフォルトの待ち受けが液晶に浮かび上がった。
 まず最初に行ったのは、電話帳を見てみることだった。やはり友人関係もあるが、他にも色々な知り合いを知るにはこれがいいと思って、電話帳の一覧を覗いてみた。
「………あれ?」
 出てきた結果は、病院と御坂美琴という名前だけに上条は驚きを隠せなかった。美琴から話を考えると、もっと多いはずだと思ったのにと思ったが、それに気づいた美琴はこう補足した。
「アンタが記憶を失った日に衝撃でケータイがバラバラになったの。それでメモリーがあるかと思ったんだけど、色々あって…。だから契約したのは私だけど、持ち物はアンタのものよ」
 なるほどと上条は知っている限り、携帯を弄ってみた。といってもあまり携帯を使わない上条が見たのは、履歴にデータフォルダぐらいであった。そのどちらもデフォルト通りで、いっさいのデータは入っていなかった。
「これって新品か?」
「そうよ。アンタは携帯電話をその通りにしか使わないから、簡単なものにしてみたんだけど……気に入ってもらえた?」
「まぁ、電話とメールが出来ればそれでいいからあんま気にしないがな。でもお前が選んでくれたやつだし、大事にはする」
 上条は携帯をポケットに突っ込み、美琴に微笑んだ。
「あ……うん。……ありがとう」
 美琴は自分に向けられた笑みにドキッとしてしまい、視線を逸らした。美琴には上条の笑みは、チョコや生クリームよりも甘すぎた爆弾だったのだ。
 そして、恋人同士となったことにより上条の笑みの甘さが倍増し、もはや感情のコントロールも出来なくなる寸前であったことを上条は知らない。
(なんだか世話になりっぱなしだな。ここはちゃんとお礼を言った方がいい場面か?)
 不意に上条は、世話になりっぱなしであることに気づき、それを気にした。それらは全て美琴の好意であったということを知っているのだが、それでも上条からしてみれば人に頼りっぱなしはどうにも気が引けたのだ。
(やっぱりこういうときというのは、真面目にお礼を言った方がいいよな?そうですそうだろうそうなんですね)
「気にするなって、むしろ昨日からずっと付き添ってくれてた御坂に、に大切なことを言い忘れた」
「大切なこと……?」
「ああ。んじゃ改めて言わせてもらう。昨日からずっと何から何まで、ありがとな、"美琴"」
 そして繰り返されるのは、ふにゃーの悲劇だった。やはり上条は、どんな場面でも不幸であった。

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2010/09/14 22:02 | memories

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