忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/05 23:20 |
観測者のデシジョン
オカクリの結婚話です。


「あともう少しで結婚式だっていうのに、オカリン緊張しすぎワロタ」
「だ、黙れダル! これが緊張していられるか」
 いきなりだが、今日は俺と紅莉栖の結婚式だ。
 小さな教会で身内やラボメン、お世話になった人限定で結婚式がまさに今日だ。
 信じられないかもしれないが、真実だ。
「オカリン、誰に話してるんだ?」
「だ、誰でもいいだろう! というかなんでお前がここにいるのだ!」
「牧瀬氏…あ、今は岡部氏だっけ? とりあえず、牧瀬氏を待っているんだお」
 真っ白な衣装に身を包んだ俺と、すっかり痩せてしまいイケメンキャラになったスーツ姿のダルは、着替えている紅莉栖を待ってる。
 だが、花嫁衣裳の紅莉栖を想像すると、俺はどうしても緊張せずにはいられなかった。
 なぜなら、今日初めて紅莉栖の花嫁衣裳を俺は見ることができるからである。
「……………」
「牧瀬氏の花嫁衣裳だけで落ち着けないオカリンとか、見てても面白くないお」
「当たり前だわ! というか、落ち着かない俺を見て愉しむな」
「あ、バレた。フヒヒwwwwwサーセンwwwww」
 いい歳になっても相変わらず@ちゃんねるに入り浸っているダルは、会話も相変わらずだ。
 しかし、俺も紅莉栖も未だに@ちゃんねるから抜け出せずにいるので人のことも言えない。
 特に紅莉栖は、大学時代以上にねらーになっているのだから笑えない。
 近いうち、公の場で研究の発表をする場合、間違えて@ちゃん用語を言わないか真面目に心配である。
「まあオカリンの気持ちもわからなくはないお。僕も由季の花嫁衣裳を見たいんだお」
「なら俺を見て楽しそうにニヤけるな。気持ち悪い」
 というか、本当に遅いな。
 そろそろ来てもいい……あ、いや、来てほしいんだが…。
「トゥットゥルー♪ お待たせ―♪」
 その時、水色のドレスを着たまゆりがドアを開けてやってきた。
「まゆり! 紅莉栖は!?」
「えへへ。ちゃんといるよ。ほら」
「あ。ま、まゆり!」
 笑顔のまゆりは、部屋の外にいる紅莉栖を強引に引っ張ってきた。
「「……………」」
 瞬間、俺とダルは目を疑った。
 真っ白い花嫁衣裳を着た紅莉栖は、俺達の予想を超えていた
 美しい・綺麗だなんて言葉では言い表せない。というよりも、これを言葉で言い表せなど無理な相談である。
「オカリンオカリン。クリスちゃんに何か言ってあげなよ」
「え? あ、ああ………そ、そう………だな」
 何か言えと言われても、いい言葉が思いつかなかった。
 ましてや、目の前に花嫁衣裳の紅莉栖がいるのだから、無理難題である。
「お、おかべ……ど、どう?」
 顔を赤くしながら、少々不安そうに俺を見てくる紅莉栖。
 さすがに何か言わないといけない。
 頭ではわかっているのだが、言葉が出なかった。
「……………」
「おかべ…?」
「に、にあって……ると、おもう、ぞ」
「ふぇっ!? ほ、ほんと…?」
「……………」
 なんとか言えたのはそれだけ。
 それ以上は、無理だ。
「まゆしぃまゆしぃ。今日は一段と固有結界の力が強い件」
「結婚式だもんねー」
「「……………」」
 反論は、できなかった。


 まゆりとダルは俺達に気を使ってくれたようで、早々に退出していった。
 始まるまで少々時間があるからこそ、気を使ってくれたのだろう。
「「……………」」
 が、ふたりきりになったのは今の俺達には逆効果だ。
 余計にどうすればいいのか、俺はわからずに固まっていた。それは紅莉栖も同様だった。
「……………」
「……………」
「……………く、くりす……てぃーな」
「な、なに……よ?」
「……な、なんでも…ない」
「……そ……そぅ」
「「……………」」
 気まずいなんてものではない。
 逃げられるのなら逃げたい。そう思ってしまうほど。この場の空気は固まっていた。
「……………お、おかべ」
「な、なん……だ?」
「……な、なんでも…ない」
「……そ……そう、か」
 本当に、どうすればいいのだろうか?
 出来ることなら誰かに助けてほしい。心から俺はそう思った。
「……………そ、そういえばさ!」
「!? な、なんだ!」
「けけけ、け、けっこん……だね」
「あああ、あ、ああ! そ、そう……だな」
「う、うん……………」
「……………」
 つ、続かない!
「お、おまえは! こ、これからおかべ……だな」
「ふぇっ!? ええええええええ、ええ! そそそそそそうね!」
「あああああ、ああ!」
「……………」
 やはり、続かない!
「……………お、おかべ」
「な…なんだ?」
「……………その………よ、よろ、しく」
「あ、ああ………よ、よろ、しく」
「………うん」
 なんというか…無駄に初々しすぎて結婚式らしくない会話である。



「汝、岡部倫太郎は牧瀬紅莉栖を妻とし、健やかなる時も病める時も、その身をともにすることを誓いますか」
「は、はい………ち、ちかいます」
 きっぱり言いたかったが、無理だった。
 人生で最高に幸せな瞬間なのに、情けなくて残念でならなかった。
「汝、牧瀬紅莉栖は岡部倫太郎を夫とし、健やかなる時も病める時も、その身をともにすることを誓いますか」
「は、はい………ち、ちかい、ます」
 と思ったらどうやら紅莉栖も同じようだ。
 それにとても安心している自分がいるが、さすがにこの場ではまずいので小さく深呼吸をして気を引き締め直した。
「では。近いの証を…」
 神父の言葉が終わり、客の視線が一気にこちらに向けられたのが、背中に感じた寒気で感じ取った。
 ごくっと息を呑んだ。
 先程は失敗したが、ここでは失敗できない。というよりも、ここで失敗したらおそらく一生後悔する。
 だから俺は一瞬だけ眼を閉じて、再度深呼吸をした。
「紅莉栖」
 小さな声ではっきりと、俺は紅莉栖の名前を呼んだ後、薄いヴェールをめくり取った。
「……………」
 目の前にあるのは、紅莉栖の顔だ。
 一回は彼女を見捨て、一回は殺してしまった最愛の人だ。
 シュタインズゲートに辿りつけたからこそ、俺はここにいて彼女もここにいて、俺達は夫婦になる。
 それを思うと、不思議な気持ちになる。が、不快ではない。
 むしろ、心地が良いと言える。
「これが『シュタインズ」
 いや、違う。
「『岡部倫太郎』の選択なんだな」
 そして―――
「んんっ!」
 新たな選択が生まれた―――。

<fin>
PR

2011/09/18 00:12 | STEINS;GATE

<<ペアマグカップ騒動 | HOME | 四ヶ月>>
忍者ブログ[PR]