紅莉栖の誕生日ネタで書いたもの、第二弾です。
その日一日で書いた執念の作品ですw 最後の方はR-15ぐらい(?)
その日一日で書いた執念の作品ですw 最後の方はR-15ぐらい(?)
誕生日会は、私には無縁のものであった。
アメリカにいた頃、お偉いさんのパーティーに参加したりはしたが、それはあくまで私が招待客での場合だ。
その時、私は作り笑顔でお誕生日おめでとうございます、とお祝いの言葉を述べるだけであった。正直、楽しくもなんともない。ただ関係を作るだけのパーティーだった。
でも、今回のパーティーは違った。
小さな部屋でみんな集まってどんちゃん騒ぎをするのはいつも通りなのに、心の底からみんな私のことを祝ってくれたし、プレゼントまで渡してくれた。
こんなに楽しくて嬉しいパーティーは、生まれて初めてだった。
ラボメンたちと会えたこと。そして、岡部に救ってもらい、仲間に入れてもらったことを改めて感謝した。
「楽しかったか? クリスティーナ」
「楽しかったわ。こんなに楽しいパーティーは生まれて初めてだったわ」
「そうか…なら企画したかいがあったな」
今、私達のいる屋上からは星がたくさん見える。暑苦しい昼間と違って、夜はとても涼しく風が心地いい。
パーティーで燃え上がった熱気を静かにゆっくりと覚ますには、ここほどいい場所はないだろう。
「なんだかあっという間だったな…」
「そうだな。楽しい時間ほど、あっという間にすぎていくのは、いつになっても変わらないものだな」
「ふ~ん。ずいぶん詩人的なことを言うのね」
「まあ、な」
楽しい時間ほど早く流れるのは、いつになっても変わらない。
その考えには私も同感だ。というより、反論するものはおそらくいない考えであろう。
「だからお前といる時間は、長いようでとても短いのだろうな」
「……………そうね」
時間は有限である。無限などない。
長いようで短いと思うのは私も一緒だ。ホント、なんで時間はこうも残酷で、あっという間なのだろうか…。
「また、すぐに離れてしまうんだな…」
「そうね…」
また長い時間、離れ離れになることを思い出すと胸が苦しくなる。
でもこれは仕方のないこと。私たちがどうこう出来るほど、社会は私たちに甘くない。もちろん、私も岡部もそのことはよく自覚している。
だからこそ、私たちがこうして会える時間。みんなといられる時間はとても短く貴重だ。同時に、この時間があるからこそ私は強くなれるし頑張れるのだと思う。
逆にこれがなくなったら、おそらく私はずっと一人で苦しく日々を過ごすことになるのだろう。それほどまでに、私にはラボメンたちと過ごす日々は大きくなっていた。
そして…
「岡部は……」
「ん?」
「……ごめん。なんでもない」
岡部がいなくなったら、私は確実に壊れる。
岡部は知らないだろうが、私はすでに別の世界線の記憶を取り戻している。
岡部が何をして、自分が何をしたか知っている。同時にあの時抱いていた感情も私は知っている。
そして、別の世界線で抱いていた感情とこの世界線での感情が混ざり合ってしまった今は、計り知れないほど岡部は大きな存在になっていた。
岡部がいなければならない。岡部なしでは生きていけない。岡部がいるから私は頑張れるし耐えられる。
私は岡部が好きだ。愛している。自分の人生を全てあげてもいい。
でも………
(………言えるわけ……ないわよ)
恥ずかしいからではない。むしろ、今抱えているのはそんな単純なものだったら、どれほど悩まず苦しまずにいられるのだろうか。
私が岡部に好きだと言えない理由。それは拒絶の恐怖だった。
この世界線では約一週間後になるが、その時に私たちは出会い、岡部は私を救った。
あの時から私は岡部に惚れていた。記憶のあるなし関係なく、私は岡部に惚れていた。
最初は恩人だったからだろう。でもラボメンに入れてもらい、みんなと仲良くなり、岡部と過ごして、本当の意味で惹かれていった。
困ったときに助けてくれた。相談にも乗ってくれた。
でも惹かれた一番の理由は、時折見せる他のラボメンには向けない優しい目。私だけを見て私だけのことを考えてくれるあの目が、私の心を掴んだ。
そしてある日、別の世界線の記憶を断片だけだが思い出した。
その中にあった自分の想いと記憶。辛く悲しく苦しく、でも必死で頑張っていた岡部をただ見ているだけの記憶でもあった。
確か思い出したその日は、頭の整理だけではなく感情の整理にも手間取ってしまい、結局は休みにしてもらった。
でもそのおかげで、整理がつき、考えることが出来た。
そして、私が岡部のことを好きだと改めて自覚させられ、その想いはさらに大きくなることとなった。
しかし、想いが大きくなったことで不安も生まれた。それが、拒絶の不安だ。
岡部は私のことをどう見ているのか、正直に言うと未だにわからない。
他のラボメン以上に、私と接してくるが、岡部が私のことを好意を持つ対象としてみているか、確証は得られる言動は未だに見られない。
時折、口が滑ったかのように爆弾発言をするが、大体他のラボメンにツッコまれいじられるので、それが本音なのかどうかは読み取れない。
もしかしたら私が鈍いからかもしれないが、それでも変化のない岡部の言動に、私は不安でいっぱいだった。
それが限界に達したある日、まゆりにそのことを相談したことがある。
しかし答えは予想通り、大丈夫との返答であった。
もちろん、それだけではダメだと、具体的に言って欲しいといった。でもまゆりは大丈夫だと言った。同時に『オカリンを信じてあげて』とも言われた。
その時ほどまゆりに嫉妬したことはなかった。私がアメリカにいるのに対し、まゆりは岡部と同じ日本。しかも会おうと思えばいつも出会える。
だから嫉妬してしまった。岡部と不便なく過ごせるまゆりに…。
しかも、あの時の私は切羽詰まっていた。相談したあの時期から岡部とは連絡が取れにくくなり、私の研究も行き詰っていた。その八つ当たりに、私はまゆりに嫉妬してしまったのだろう。
今思うと最低なことをしたと思う。私の黒歴史になるのは確実の出来事であった。
「岡部は夏休みどうするの?」
色々考えたこともあって若干重苦しい雰囲気だったので、明るい雰囲気に変えようと休みのことを尋ねた。
すると、岡部は少し考えた後、
「ラボメンたちと過ごすさ」
と、予想通りの返答をしてきて、私は呆れて文句すら言えなかった。
だが、岡部らしい返答であったし、私を含めた他のラボメンもきっと岡部と同じ返答をするのだろうと考えると、これ以上ない最高の返答な気がした。
「そういう助手も俺と同じなのだろう?」
「助手って言うな。ま、否定はしないでおくわ」
「ふっ、素直じゃないやつめ。まあいい。どう答えようとも俺の助手である限り、お前にはラボメンとして働いてもらわねばならんのだからな」
「結局、働かされるわけでしょ? ま、別にいいしもう慣れたけどさ」
私を助手として見ている時の岡部は、ムカつく態度で偉そうだ。おそらく、助手として見るときは岡部の中でもう決まってしまった接し方なのだろう。
でも、一方ではきっと私だからなんだろう。別の世界線でもいつも同じ態度であったように、きっと岡部は私のことを助手としてみることで忘れないでいてくれるのだろう。
確信はないし願望が含まれた考えだが、何故か私はそれが合っているような気がする。でも真実は岡部にしかわからない。
「いい心構えだな助手よ。ようやく助手としての自覚が芽生えてきたと見える」
「だから助手じゃないと何といえばわかるのだ! 大体、いつもあんたはなにもしないで見てるだけじゃない!」
「な…何を言っているのだ! 俺はいつも開発の中心に立ち、様々な指示を与えているではないか!」
「その指示すら無視されているくせに何を言う。それに岡部よりも橋田のほうが仕事して仕切ってる件について」
「ダ、ダルは俺の右腕だからな。だからいいのだ!」
「はいはい。お飾りリーダー乙。でも今度は何を作るわけ? まさか、タイムマシンでも―――」
「それだけは絶対に作らない!!!」
言い終わる前に、岡部は言い切った。
そして私は、一番してはいけない失言をしてしまっていたことに気づいた。
「……すまない。でもタイムマシンは作らない」
「………」
岡部はとても苦しそうに言い切った。そうまでして言い切った理由は、私は知っている。
しかし、岡部は知らない。私が記憶を取り戻したことを知らない。
でも、それももう、終わりだった。
「それは、もう過ちを繰り返さないため?」
「え?」
「タイムマシン、いや正確にはタイムリープマシンか、それを作ることでまたまゆりが死ぬと思っているから?」
「な………ん……で……?」
「もう、思い出してる」
まるで何かに操られるかのように、私はスラスラと真実を語る。
それに岡部はまだ状況を理解していないのか、驚いた表情のまま、私のことをジッと見続けていた。
「SERN、IBN5100、タイムリープマシン、Dメール。そして、α世界線。おそらく全部、思い出してる」
「そう………なの、か?」
私が頷くと、岡部はようやく事態を飲み込めたらしく、俯いて拳をギュッと握った。
「………すまない」
「なんであんたが謝るのよ。思い出したのは自然にだったし、あんたは関係ないわよ」
「それでも、すまない……俺は、あの時のお前を救えなかった」
「岡部……」
岡部は一人で罪を背負い、一生背負っていく。私でさえそれをどうにかすることはできない。
でも、背負えなくても支えることができる。岡部一人でできないのなら、私が支えてあげる。それぐらいは私にもできる。
「わかってる……わかってるよ、岡部」
私は岡部を優しく抱きしめ、背中をパンパンと叩いた。
「岡部の罪は消えない。私が背負うことはできない。でも、そんな岡部を私は支えることができるんだよ?」
「紅、莉栖」
「だから支えてあげる。ずっと、死ぬまで、岡部のことを支えてあげる。だから……」
―――――頼ってもいいんだよ?
偽善かもしれない。岡部にとっては、どうだっていいことかもしれない。異性として好きではないかもしれない私を、頼ってくれないかもしれない。
それでもいい。岡部が少しでも安らげれば、支えてあげられるのならどう思われてもいい。
「俺は………頼っても、いい…のか?」
「うん…」
「俺が招いた俺の罪なのに、他人のお前を頼ってもいいのか?」
「もう、他人じゃないよ。岡部」
「……………ラボメン、だから、か?」
「それもある。でも」
でも―――
「岡部が、好きだから」
「……………」
「だから力になる。一生…死ぬまで、ずっと」
「く、くりす…」
言えなかった言葉は自然に言うことが出来た。しかも拒絶の恐怖は完全に忘れ去られたかのように一切なかった。
逆にあったの、死ぬまで岡部を支えていく、一生分の決意であった。
この決意はもう考えなおす気はない。たとえ岡部に何を言われようと、私はこれからずっとこの決意を胸に生きて行くのだと思う。
岡部が罪を一人で背負い続けるように、私も岡部を支え続けていく。もう決めた。
「それで…いいのか?」
「いいも何も私が決めたこと。言っとくけど、考えなおす気はないわ。もう決めたから」
「……………」
「あんたにどう思われてもいい。でもあんたの意見なんて知ったこっちゃない。私はもう決めた。後は岡部次第よ」
言いたいことを言い切った私は抱擁を解き、後ろに下がった。
あとはもう岡部次第。私はそれを待つだけだ。
「……………」
岡部の表情からは葛藤が見えた。
ギュッと拳を握りしめたりしたと思ったら、下唇を強く噛んだり、私をチラチラと見たり、辛そうに苦しそうにしていた。
できることなら見ていたくない光景だが、これは岡部自身の問題だ。私が何かを言って岡部の決断を揺るがすようなことはしてはいけなかった。
「……………」
岡部は悩み続けた。悩んで悩んで悩んで、悩み続けた。
そして、岡部は自分の出した答えを言った。
「俺も、お前が好きだ」
「え……?」
「だから、よければ俺を支えてくれ。ずっと。俺のそばで…ずっと」
岡部は、私を選んでくれた。
「あ~あ。せっかくの誕生日だったのにな…」
先ほど、時計を見たら日付は26日に変わっていた。
誕生日が終わってしまったことは残念なことだがこれも時間の流れ、世界の決まりだ。
「ま、得るものは得られたし楽しかったからいいかな」
「その得られたものってもしかして俺のことか?」
「当たり前じゃない。岡部は得られたものよ」
横に寝ている岡部は、文句を言っているがその顔は全然不満そうではない。むしろ、満足そうであった。
その気持ちは、私もわからなくはない。だって私も岡部と同じ気持ちなのだから。
「とりあえず言えることは、毎回これだと俺の体力が持ちそうにないってことだな」
「ま、毎回!? あ、あんた何言ってるのよ!?!?」
「毎回するとは言っていないだろう。それとも、クリスティーナは毎回したいとでもいうのか?」
鳳凰院凶真の状態になった岡部に言われると、どうしてもカチン来る。
でもすることは嫌ではなかったし大切にされていたので、したいといえばしたい。ただそれは毎回、これだったの話で岡部のやり方次第では拒否するだろう……たぶん。
「ま、まあ………岡部、次第…よ」
「へ……? お、俺…次第?」
「……………」
「ま、まあ……努力、しよう」
「う、うん…」
なんだか本当に毎回する方向に変わっていってしまったが、岡部次第だしよしとしよう。
それに、私は時が来たらアメリカに帰らないといけないので、その間にできるかぎりはしたいと思う想いがある。
やはり好きな人としたいと思う想いは私は強い。もちろん、愛してくれる意味でのしたいである。
「それよりもこっちに来い。クリスティーナ」
「雰囲気嫁。ここは名前で呼ぶところだろう。バカ岡部」
と言いながらも、岡部に寄っていく私も私である。
この際、名前とかどうでもいい。行動でさえ示してくれればいい。
「そういえば裸で抱きあうって経験は初めてだな」
「私だって初めてよ。むしろ、していたほうが問題よ」
「まあ……そうだな。しても小さい頃だけだろう」
「当たり前よ。馬鹿」
むしろ、今の状況以外で裸で抱きあう関係があったら説明をしてもらいたいものだ。
「………まだ痛むか?」
「……………まぁ」
岡部の胸に顔を埋めながら、私は頷いた。
話の通り、最初は痛いものだった。というよりも、話以上に痛くてびっくりした。
岡部もそのことは知っていたのですごく優しくしてくれた。私のことに気をつかってくれた。
思い返せば、あの時ほど自分が大切にされて、愛されていると感じる瞬間はなかったと思う。それに、初めてをあげられたのは私なりに最高の愛情表現だったと思う…たぶん
ちなみに、岡部は………普通、だと思う。フィニッシュまでは短くはない、と思う。
「すまなかった。出来る限り、優しくしたんだが」
「別にいいわよ。それに、知識で知ってたから覚悟はできてたわ」
「そ、そうか…」
「あと、岡部がすごく……優しかった、し」
「そ、そう……か……」
「うん……」
抱き合いながらなので、顔が赤いとよくわかりよくわかってしまう。
しかし今の雰囲気ではそれが一番合っているような気がする。それに幸せをこうして噛み締めていられるのだから。
「それよりも、岡部のさっきから熱いんだけど」
「へ? そ、それはお前がいいからと―――」
「そっちじゃない! そっちじゃ、ないわよ。HENTAI」
「そっちじゃ………!?!?!? ここここれはだな! 仕方ないというか、体が自然にというか………く、紅莉栖の体に反応した…というか」
「ッ!?!?!? HENTAI岡部」
まあ、察せられなくもない。
それに抱き合っていたのだから、すぐにわかってしまうし、今の私の姿を見れば仕方ない……と思う。
「う、うるさい! というか、俺も男なんだから仕方ないだろう」
「ま、まあ……わからなくもない…けど」
「だ、だから………その………せ、責任を…とれ」
責任…それはつまり……。
「べ、べつにいい……わよ」
「は? ………あ、いやいや。そそそそうか!」
「……………」
自分で言っておきながら慌てる。ヘタレな岡部らしくて、呆れてため息も出なかった。
「で、では責任をだな…と、とってもらうぞ…く、クリスティーナ」
「なんであんたが慌ててるのよ。普通は逆でしょ」
「ええい! 助手の分際で!!!」
というと、岡部は私の口を封じるために自分の唇を押し付けてきた。
「ん……ちゅっ……んんっ……ほは、へ……っ」
そして、キスをされながら私は押し倒されていた。
これはもうする体勢だ。
「紅莉栖……ちゅっ」
私の名前を優しく言った岡部は、また私の唇を奪う。
どうやら、寝るのはまだ先のようだ。
<fin>
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